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合法偽ブランド問題に画期的司法判断、米裁判所が「シュープリーム」模倣品販売者に実刑判決

By Don-Alvin Adegeest

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ビジネス

ブランドよりも前に商標登録を行うことで模倣品を合法的に販売しようとする「合法偽ブランド問題」。しかしその問題に終わりの日が近づいているかもしれない。数十年間にわたり、米・VFコーポレーション傘下でニューヨーク発のストリートウェアブランド「シュープリーム(Supreme)」の模造品を販売してきたシュープリーム・イタリア(Supreme Italia)社とその親会社の英インターナショナルブランドファーム社(International Brand Firm Ltd、以下IBL社)の所有者に対し、英国ロンドンの裁判所が先般実刑判決を下し、合わせて1億4百万米ドルにも上る多額の罰金の支払いを命じたのだ。

近年、ミケーレ・ディ・ピエロ(Michele Di Pierro ) (53)およびその息子マルチェロ(Marcello ) (24)が経営するIBL社は、米「シュプリーム」とは関連なく同ブランドを模倣した商品で多額の利益を得ていた。本家に非常によく似たロゴをイタリア、サンマリノ、インドネシア、シンガポール、スペインなどの国々で商標登録し、さらに欧州や中国では店舗も開設して「合法模倣品」の販売を行っていた。しかし2019年から「シュプリーム」創設者でブランド育成を推進してきたジェームス・ジェビア(James Jebbia) が盗作や知的財産の侵害を訴えてきたと、ファッション法務に関する情報誌『The Fashion Law』が報じている。

「厚かましく、侮辱的で不正な行為」

IBL社はVFコーポレーションと和解を試みたものの、裁判を担当したマーティン・ベドー(Martin Beddoe) 巡回裁判官はミケーレ・ディ・ピエロおよびマルチェロ被告を詐欺罪で有罪判決とし、ミケーレ被告には8年の、マルチェロ被告には3年の実刑を言い渡した。

ベドー巡回裁判官は二人について「“シュープリーム”のすべてのアイデンティティーを乗っ取り、盗用した」とし、模倣品の販売を「厚かましく、侮辱的で不正な行為(brazen”, “offensive” and “dishonest”)」と述べた。

今回の判決は「シュープリーム」の勝利となり、合法模倣品販売を行う業者を牽制するものとなったが、一方で欧州における同社の赤のボックスロゴの商標登録をめぐる問題は引き続き残る。

問題の一つは、ロゴのデザインにある。欧州の商標登録の規制では、「シュープリーム」のロゴには独自性に欠けているとされている。ロゴに使われている赤の四角いボックスや「シュープリーム」のロゴタイプに使用されているFuturaのフォントはブランドの特徴的な要素であるというには難しい。さらに、商品の品質が優れていることを指す英単語の「シュープリーム(Supreme)」という言葉も、特許取得が認められない。なぜならそれを認めてしまうと、言ってみれば、Tシャツのように本来はどんな人・企業も独占することのできない商品に「Supreme」と付けて、「史上最高のTシャツ」と呼んで商標登録するようなことになってしまうからだ。

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