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「コーチ」CEOに聞く〜タペストリーの米発送機能拡充

By Rachel Douglass

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Tapestry North Las Vegas FulFilment Centre. Credits: Tapestry.

今年11月に開設された「タペストリー」の北ラスベガス発送センター。(写真クレジット:Tapestry)

「コーチ(COACH)」をはじめとするブランドを擁するタペストリー(Tapestry)は今年一年、事業拡大に追われた。8月にはライバルのカプリ・ホールディングス(CAPRI HOLDINGS)を買収し、同社の「マイケル・コース(MICHAEL KORS)」「ヴェルサーチェ(VERSACE)」「ジミー チュウ(JIMMY CHOO)」などのプレミアム・ブランドがタペストリーに加わった。しかし拡大しているのはポートフォリオに止まらない。

11月上旬、タペストリーは稼働中のフロリダ州ジャクソンビルのセンターを補完し西海岸地域の顧客へのサービスを強化することを企図し、ネバダ州北ラスベガスに新たな発送センターを開設した。買収によって新たに加わったブランドの発送業務という新たなニーズを受けて将来への備えとして発送機能を拡充した形だ。

「コーチ」のトッド・カーン(Todd Kahn)CEO兼ブランドプレジデントはFashionUnited誌の取材で次のように強調した。「タペストリーが成長していく段階で、サービス拠点を開発する必要があった。当社は1995年よりジャクソンビルの施設を発送センターとして位置付けてきたが、パンデミック以来デジタルビジネスの需要が非常に大きく増加し、顧客のニーズに応えるため全般的に事業能力を拡充することとなった」。

北ラスベガス発送センターの命題は、主に流通分野を中心としたタペストリーのオムニチャネル対応を強化することである。同センターの仕分け能力は小売とEC事業で合わせて年間2,220万ユニット、在庫保有能力は400万ユニットに上るという。

Coach CEO Todd Kahn, third from the right, with Tapestry execs at the ribbon cutting ceremony for the opening of the North Las Vegas FulFilment Centre. Credits: Tapestry.

「顧客中心主義」を核心に据えて

さらにカーンCEOはこう加えている。「このプロジェクトは単にラスベガスに新しい発送センターを建設するということだけではなく、タペストリーの事業の全体的な転換、そして我々の発送業務に対する見方の転換である。米国内に複数の物流拠点が誕生したことで、企画や資源分配の観点から我々の事業は変化を遂げ、一つ屋根の下に複数のブランドを迎え入れることが可能となる」

北ラスベガス発送センターの開所式典でのテープカットにタペストリーの役員たちと参加するカーンCEO(右から3番目)。(写真クレジット:Tapestry)

新発送センターの開設の核心にあるのは、タペストリーが掲げる、「顧客中心主義」へのコミットメントだ。北ラスベガスという地理的に西海岸の高級住宅地に近い場所を新たな発送センターの建設地に選んだことがその証である。そしてそこに映るのは、パンデミックでオンラインショッピングへの需要が増したことで、これらの地域の顧客へのサービス向上を図りたいという同社の狙いだ。カーンCEOによると、新発送センターの立地ではインバウンド、アウトバウンドともに物流にかかる輸送期間が少なくなるため、顧客に対する商品の発送期間もこれまでの5〜7日間から2日〜3日間に短縮することができるという。

タペストリーによる顧客重視の戦略は、同社の北米地域の業績とも合致している。競合他社が消費者の景気に対する不透明感や予算削減の煽りを受けるなか、タペストリーが発表した2024年度第1四半期の北米地域の売上高は厳しく困難な消費環境にも関わらずほぼ前年並みとなった。

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