「ディオール」誘致の舞台裏:イグアテミCEOが語るブラジル高級市場の攻略法
ブラジルのラグジュアリー市場は、ショッピングセンター運営大手イグアテミの推計によれば、現在約980億レアル規模であり、2030年までには1500億レアルに達する可能性がある。2025年3月に最高経営責任者(CEO)に就任したシロ・ネト氏は、同グループが海外ブランドにとってブラジル市場への玄関口であり続けることを目指している。
ネト氏はFashionUnitedの取材に対し、「ブラジルは複雑な市場であり、私たちが海外ブランドに提供するのは単なるリテールスペースをはるかに超えるものです。私たちはブラジルの消費者に関する数十年にわたる知見を有しており、ブランドのポジショニング、価格設定、物流、消費者行動の理解、そして最も重要な、現地の顧客と有意義で長期的な関係を築くための支援が可能です」と語った。
イグアテミはブラジル国内で「ポロ ラルフ ローレン」、「ビルケンシュトック」、「クリスチャン ルブタン」などを運営する。また、かつての「バレンシアガ」のように、ブランドが独り立ちするまで事業を担うこともある。「私たちが『ブラジルへの玄関口』と称するのは、まさに文字通りの意味です。ブランドが市場を理解し、参入し、最終的に持続可能なビジネスを構築するまでを支援できるのです」とネト氏は語る。
ネト氏によれば、現在ブラジルと海外市場との価格差は0から25パーセントの間だという。また、同氏は顧客との関係性についても言及する。パリで買い物をするブラジル人顧客はブランドのCRM(顧客関係管理)の対象外になることが多い一方、サンパウロではブランド側が顧客のプロフィール、好み、購買履歴を把握しているため、国内での関係性の方が海外よりも深いと主張する。
市場の数字も同氏の主張を裏付けている。イグアテミは2025年、15のショッピングセンターと2つのプレミアムアウトレットからなるポートフォリオ全体で250億レアルの売上を記録した。
「最も満足しているのは、その業績の質と、各ブランドがブラジル市場に寄せ続ける信頼です。特に重要な進展として、海外ブランドの業績が挙げられます。過去3〜4年間、私たちのポートフォリオ内で国内市場を上回るペースで二桁成長を続けており、これはブラジルにおけるラグジュアリー消費の進化について重要なことを示唆しています」とネト氏は語る。同氏は、ブラジルのラグジュアリー市場が現在の約980億レアルから2030年には1500億レアルに達し、ラグジュアリー製品の定常的な消費者も約100万人から150万人に増加すると予測している。
ディオールを歓迎
2027年、「ディオール」がイグアテミ・サンパウロにオープンする。ネト氏によれば、この契約は締結までに数年を要したという。「あのレベルのメゾンとなると、単に空きスペースがあるかという話では決してありません。信頼、ポジショニング、顧客、隣接するブランド、建築、サービス、そしてブラジルでの長期戦略が問われるのです」とネト氏は語る。また、ブラジルを訪れるラグジュアリーブランドの経営幹部が、現地の開発がアジアの最高水準に匹敵することにしばしば驚かされるとも付け加えた。
ブランドがブラジルについて誤解する点は、同国を標準的な新興市場として捉えてしまうことだとネト氏は指摘する。「彼らはブラジル人消費者の洗練度と市場の成熟度の両方を過小評価することがあります。私たちの顧客は頻繁に海外へ渡航し、グローバルな品揃えを熟知しています。そして、ニューヨーク、パリ、ミラノ、ロンドンで体験するのと同じ品質の製品、ストーリーテリング、建築、サービスを期待しているのです」と語った。
イグアテミは最近、リオデジャネイロの「Shopping Rio Sul」およびサンパウロの「Pátio Paulista」を買収した。さらに、報道によれば3億1440万レアルを投じてイグアテミ・ブラジリアを1万5500平方メートル(既存施設の50%以上に相当)拡張しており、すでに複数の海外ブランドとの契約を締結している。
「私たちは資本配分に非常に厳格です。現段階では、新規開発は視野に入れていません。私たちの焦点は、すでに顧客、市場、潜在需要を理解している既存資産の強化にあります」とネト氏は語る。「私たちにとって拡張とは、単に面積を増やすことではありません。資産全体を強化し、顧客体験を向上させ、既存のものを補完するブランドやコンセプトを導入する機会を創出するものでなければならないのです」。
「イグアテミのDNAを変えるつもりはなかった」
ネト氏がCEOに就任した時点で、同社はすでに好業績を上げていた。同氏はイグアテミで数年間勤務した後、C&Aで3年間を過ごし、2023年にコマーシャル担当副社長として復帰。社外での経験が、復帰後に持ち帰ったものを研ぎ澄ませたと語る。「会社をユニークにしているものへの感謝の念を一層深めて戻ってきましたが、同時に新たな視点も得ました。スピード、実行力、そして顧客に寄り添い続けることの重要性をより明確に理解したのです」と同氏は述べた。
CEOとしての最初の動きは、「一つの劇的な決断」というよりも、「イグアテミのDNAを変えることはしない」という明確な方向性を確立することだったとネト氏は語る。「イグアテミはすでに好調でしたから、私の役割は会社を改革することではありませんでした。私たちがすでに非常にうまくやっていることを加速させ、同時にビジネスを次の成長段階に備えさせることだったのです」。
イグアテミは2027年に上場20周年を迎える。それまでにネト氏は、単なるリテール以上のポートフォリオを構築したいと考えている。同グループは2025年に「Teatro Iguatemi」をオープンし、イグアテミ・サンパウロには屋上施設を建設中だ。さらに、カンピーナスでは5万人以上が居住する複合開発地区を開発している。
「私たちの最大の競争優位性は、顧客との関係の深さです。ロイヤルティプログラム『One』だけでも100万人以上のアクティブな顧客がいます。ですから、課題は、画一的になることなく、いかに私たちのスケールを活用するかということです」とネト氏は締めくくった。
OR CONTINUE WITH