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「シーイン」の通期業績、「H&M」「ザラ」抜き首位へ

By Don-Alvin Adegeest

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SHEIN X DANNA PAOLA Credits: SHEIN

中国ファストファッション大手の「シーイン(SHEIN)」が売上高で「H&M」「ザラ(ZARA)」を抜き、業界トップに躍り出ようとしている。米ウォール・ストリート・ジャーナル紙がこのほど発表したデータによると、「シーイン」の2023年通期の売上高は昨年の230億米ドルを上回るとされている。同社は第3四半期累計でも売上高がすでに240億米ドルに到達しており、「H&M」の164億米ドルを越す勢いで拡大している。さらに2022年上期の売上高が183億米ドルであった「ザラ」と比較しても飛躍的に成長しており、この水準が続けば期末にはファストファッション市場トップとなると見られている。

評価額は当初の1000億米ドルから600〜700億米ドルに減額されたものの、「シーイン」が新時代のAmazonになりつつあることは疑う余地がない。同社は商品ラインアップも拡充しており、これまでの12ドルワンピースや5ドルTシャツといった格安アパレルから、最近では家電など幅広い分野の商品を取り扱っている。

今年8月には米の「フォーエバー21(FOREVER 21)」の運営パートナー「スパーク・グループ(SPARC Group)」と戦略的パートナーシップを発表。1億5000万の利用者を持つ「シーイン」のプラットフォームと「フォーエバー21」の実店舗を駆使し相互に商品を販売し合う技業務提携を締結した。「スパーク・グループ」はブランド管理会社オーセンティック・ブランズ・グループ(Authentic Brands Group、以下、ABC)の出資企業であることから、今後は「フォーエバー21」のほかにも「ナインウエスト(NINE WEST)」「ブルックス ブラザーズ(BROOKS BROTHERS)」など「ABC」が保有するブランドの商品を「シーイン」が取り扱う可能性が見込まれている。

また「シーイン」は先月、英のファストファッション・ブランド「ミスガイデッド(MISSGUIDED)」を買収した。

米国では市場シェア50%を占有

経済情報メディア「クオーツ(Quartz)」が2022年11月に発表したデータによると、米国におけるファストファッション市場のうち「シーイン」のシェアは50%を占め、次いで「H&M」と「ザラ」がそれぞれ16%と13%であった。さらに同年5月に発表されたデジタルアプリのダウンロード数ランキングでも、「シーイン」は「TikTok」「Instagram」「Twitter」を抜いて1位になった。

一方で、「シーイン」をめぐっては、縫製工場で働く労働者の低賃金や劣悪な労働条件、搾取や労働者の権利の不備といった懸念も浮上している。加えて、短期間で作り安く売るというファストファッションのビジネスモデルによる環境負荷や、耐久性の低い素材の使用、廃棄衣料品による環境への影響も批判されている。

商品についても、実際のサイズと食い違うサイズ表示や、粗悪な縫合、長持ちしないといった消費者からの苦情が寄せられ、安い価格ゆえに品質が犠牲になっているという指摘もある。さらに昨今では個人のデザイナーやブランドから無断でデザインを模倣されたとして提訴される事態も発生し、知的財産権侵害の疑惑が持ち上がるとともに、デザイン制作における倫理も問われている。

実態は不透明ではあるが、米国で急成長を遂げ、世界でも事業展開を進める「シーイン」がファストファッション業界のトップブランドになることは確実だと思われる。

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