全米俳優労組スト:ファッション業界への影響
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先日英国で行われた話題の映画「オッペンハイマー」のプレミア試写会で、出演俳優たちが現在進行中の全米脚本家組合(Writers Guild of America、以下WGA)によるストライキにハリウッドの俳優らが参加するとの発表を受けて退場するという異例の事態が怒った。世界で幅広く報道されたこの出来事は、そもそもストライキの目的は何なのか、そしてその映画業界を超えた影響についての議論へと発展した。
7月13日、映画俳優組合・テレビ・ラジオ芸術家連盟(Screen Actors Guild-American Federation of Television and Radio Artists、以下SAG-AFTRA)は記者会見を開き、5月23日にWGAによって始められたストライキへの参加を表明した。ストライキはWGAの活動を規制する新たな契約に関する米国の大手映画制作会社やストリーミングサービスの団体である映画製作者協会(Alliance of Motion Picture and Television Producers 、以下AMPTP)の交渉が合意に至らなかったことに端を発する。
ストライキが始まってから3カ月。AMPTPはSAG-AFTRAとも交渉がまとまらず、その余波はハリウッドの俳優の間にも広がっている。1960年以来の俳優・脚本家による同時ストは、クリスマスまで続くのではとの見方もある。
SAG-AFTRA とWGAはいずれも、人工知能(AI)によって脅かされる労働環境のなかでより良い報酬や労働条件を求めている。両者はAMPTPに対しどの程度テクノロジーを導入するのか詳しい説明を要求する一方、仕事の減少や映画などが再放送された場合のロイヤルティ料の減少を危惧している。
ファッション業界への影響
ストライキにより俳優たちの活動が大幅に停止されるとは言え、実際はセレブリティたちが水面下で動くというのが現実的なようだ。WWDの情報筋によると、俳優たちは企業の宣伝やファッションのキャンペーンへの出演やパートナーシップを組んでいるブランドの広報活動への参加はストライキの規定上認められている。テレビ番組や映画の出演情報などは発言できないが、それでもこの先さまざまなイベントが控えるファッションブランドにとっては、セレブリティの出席が確保できるという点で朗報だ。
しかしながら、露出という意味では顕著に打撃を受ける部分もある。映画の宣伝ができないとなると、ハリウッドスターがブランドの最新デザインを纏って登場するというレッドカーペットは当然なくなる。すでに9月に実施が決定しているヴェネツィア国際映画祭でも、おそらく見苦しいレッドカーペットが披露されることになるだろう。
元モデル兼SAG-AFTRA組合員で、現在ニューヨークでファッション業界専門弁護士として活動するケイトリン・プッチョ(Kaitlin Puccio)氏は本誌に取材に答え、今回のストライキのファッション業界に与える影響を次のように説明している。「ハリウッドと同様にファッション業界でもAIをめぐる論議があり、業界関係者は事態を注視している。ブランドとモデルの間ではすでにAIによるモデルの画像を利用した複製画像についての交渉が始まっているが、業界では明確なルールがまだ導入されていない」。