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ファッション界の新市場「ペットウェア」

By Ilona Fonteijn

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ファッション

「フンクミュラー(Hunkemöller)」「H&M」「リバーアイランド(River Island)」「プライマーク(Primark)」「フーマー(Hema)」「ラルフ ローレン(Ralph Lauren)」に共通すること。それはいずれも犬用の服を作っているということだ。近年、我々の忠実な四本足の友達向けのファッションの市場が躍進し続け、多くのブランドが参入しはじめている。Instagramでそのファッションが人気となったインスタ犬のブービー・ビリー(Boobie Billie)が先般人間向けのラグジュアリー・ファッションのブランドを立ち上げたのは記憶に新しい。また「ディースクエアード(Dsquared2)」も「ポルド ドッグ クチュール(Poldo Dog Couture)」と共同でドッグウェアとアクセサリーのラインを発表している。

実際、ペットウェアは非常に収益性が高く、犬や猫専用のファッションに特化したブランドも存在する。カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)のシュペット(Choupette)やシジェイソン・ウー(Jason Wu)のジンクシー(Jinxy)&ピーチズ(Peaches)などのセレブ猫は、動物がいかに人間の生活の中で大きな役割を果たしているかを物語っている。こうした「ペット熱」は一時期のブームなのか?動物への影響は?FashionUnitedはファッション・プロフェッショナルのペットウェア市場へのアプローチ方法について概要をまとめた。

Header 2ワンコファッションは現代の「マスト」アイテム

イタリアのサイトハウンド・チワワのブービー・ビリーは、動物が人間のファッション業界でもインフルエンサーになるということを証明した。Instagramで25万人以上のフォロワーを持つファッション・コンシャスな彼女は、先般ペットではなく人間のためのラグジュアリー・ファッションを発売した。価格はビーガンレザーのミニバッグが270米ドル(約28000円)、シルクのスカーフが80米ドル(約8400円 )で、間違いなくペット向けではない。

今年9月に 開催された直近のニューヨーク・ファッションウィークでは、デザイナーのアンソニー・ルビオ(Anthony Rubio)がウィメンズコレクションと一緒にペット用クチュールコレクションを発表している。飼い主とペットとでお揃いのファッションが楽しめるというコンセプトだ。なお、ランウェイに登場したモデルは保護施設で保護されている犬やインフルエンサーの動物達だったという。(同社プレスリリース)

" alt="alt" /> また「ディースクエアード」も「ポルド ドッグ クチュール」とコラボし犬のコレクションを発売。 「ディースクエアード」共同設立者のダン・カテン(Dan Caten )は「自分達の会社にも犬を飼っている社員がたくさんいて、皆犬が大好きだ。犬用コレクションの発売でますますブランドを拡大させていく」とコメントしている。(WWD)

Header 2ネコにも展開

ペットファッションの人気はネコも負けていない。26歳のスタイリストの吳秋喬(ウー チュウ・チャオ)は中国の伝統服である漢服の猫用サイズを制作しインターネットで販売する。商品は高いものでは1着500元(約7800円)もする。

吳氏は「ペット用漢服づくりは自身が愛猫に合う服探しに苦労した経験から思いついたもの」としている。(AFP) そのアイデアは顧客の真のニーズを捉えたようで、彼女のサイトでは毎月1000着ほどのペット用漢服が売れているという。

Header 2ドレス以外にも色々なペットファッショングッズが登場

ドレス以外のペット用ファッショングッズも人気を集めている 。犬用のレインコートやベスト、首輪、ハーネスといった実用的なアイテムから、セーター、ジッパー付きのパーカー、トレーナー、ポロシャツ、Tシャツなどのスタイリッシュな服、犬用コスチュームやバスローブ、ロンパースまでさまざまな商品が展開されている。中にはカシミアTシャツやメリノウールのセーター、トレンチコート、アクセサリーなどデザイナーズアイテムもある。

特に近年発展しているペット向けデザイナーズアイテム市場では、複数の高級ペットウェアに特化したブランドが登場しはじめている。一例がハリウッド発の「モシカ(Moshiqa)」。ウェブサイトで富裕層やセレブリティ向けに商品を訴求し、レディー・ガガ(Lady Gag)のアジア(Asia)、ジョン・レジェンド(John Legend)のピッパ(Pippa)、パリス・ヒルトン(Paris Hilton)の8匹の愛犬など、多くの著名人の愛犬をファンに持つ。一方、同じくペットウェアブランドの「マックス・ボーン(Max-Bone)」のウェブサイトには同ブランドの犬用アイテムを愛用するアナ・ウィンターAnna Wintour)、ビヨンセ(Beyoncé)、オジー・オズボーン(Ozzy Ozbourne)らが登場している。

Header 2動物愛護団体の反応

米の動物愛護団体「PETA」はペットウェアの実用性を強調する。「天候が寒くなってくると、セーターやコート、靴は寒さから身を守るため毛足が短い犬や小型犬には快適かもしれない。しかしこうしたアイテムも、ペットにとって不快でなく、健康を害することのないものを選ぶべき。サイズはきちんと合っているか、動きを妨げることがないか、着ていて悲しそうな表情をしていないかなどに気を配ることが重要」と「PETA」は警告する。

オランダ国立ペット情報センター(LICG)はeメールで取材に答え、ペットには洋服は必要ないとコメント。ほとんどの動物はそもそも服を着せられること自体を好まず、逆に洋服がストレスになって動物福祉を害するという。また衣類の着用は動物の体の動きが見づらくなるほか、例えばフーディーなど目や耳を(部分的でも)カバーするものは動物同士のコミュニケーションを妨げる恐れもある。一方で、動物でも衣類が必要な場面もあるという。寒い気温で体温を暖かく保てない動物は適切で快適なセーターを着せるのは一案かもしれない。同様に、冬場に道路の融雪などのため撒かれる塩水はペットの足荒れの原因になり、夏の暑いアスファルトもペットの足には暑すぎるため、ペット用の靴のニーズが考えられる。「端的にいうと、動物福祉上の必要性がない限りは団体としてペットウェアを支持しない」というのがLICGのスタンスだ。

確かにその通りかもしれないが、人々のペットを通して自分を甘やかしたり自己表現したりしたいという願望は、ペットファッションやさらにはペットとのおそろいコーディネート服に対する消費者のニーズに如実に現れている。現に、スウェーデンの「H&M」や伊の「モスキーノ(Moschino)」がこの潮流に便乗し、ペットラインを発表した。

さらに「H&M」は6ユーロ(約740円)から買えるリーズナブルなドッグウェアのラインも展開し、レインコートやコート、小型犬用セーターなどのアイテムを取り揃える。加えて犬用のアロハシャツやミツバチやサンタのコスチュームもある。

Header 2データが物語る市場性

個人的な意見はさて置き、ペットウェアはファッションブランドや小売にとって注目すべき市場であることは間違いないとドイツの市場調査データ提供会社スタティスタ(Statista)は指摘する。米国においてはすでにペットを保有する世帯が8460万世帯と、子供のいる世帯の5280万世帯を抜いている。欧州でもほぼ同じ状況で、一匹以上のペットを飼育している世帯数は8000万世帯に上り、2010年から14%、1000万世帯ほど増加している。

オランダのペットフードの業界団体NVGとペット関連事業者団体ディベボ(Dibevo)の調査では、2019年時点でオランダ全世帯の48%が何らかの動物を飼っており、そのうち35.9%以上が犬または猫を飼っていたという結果が出ている。またオランダ統計局の2019年のデータによると、オランダにおける全790万世帯のうち子供を持つ世帯は約24%の190万世帯であった。つまり、オランダでは子供よりもペットと暮らしている世帯が多いことになる。

それでもまだペットファッション市場に懐疑的だという人には、2019年のペット用品の市場価値が西ヨーロッパだけでも約266億ユーロ(約3兆3000億円)に達した(Statista調べ)ということを言っておきたい。米国でもペット用品市場は530億米ドル(約5兆6000万円)で、さらに今年には550億米ドル(約5兆8000万円)に達すると予想されている。これらの数字からどんな助言が考えられるか。早まって飛び込むなかれ、まずは待って事がどう転ぶか静観すべし。こんなところではないか。

メイン写真クレジット: Anthony Rubio, Boobie World website, H&M, Hunkemöller, Hema, Dsquared2 x Poldo Dog Couture, AFP

本記事の原文はFashionUnited.nlに掲載されたものです。

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