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デニム展示会「キングピン」:サステナビリティの新たな形、顕著に

By Marthe Stroom

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ファッション

The exhibition floor of denim fair Kingpins in event location SugarCity on the Halfweg in Amsterdam. Image: FashionUnited

毎年オランダ・アムステルダムで開催されるデニムの展示会「キングピン(Kingpins)」が開催された。初参加の来場者ならば、最寄駅に降り立った瞬間から会場までスムースに辿り着けたことだろう。入り口ではデニムを着た人だかりが、開場前から列を作っていたのだから。

昨年同様デザイナーや服地メーカー等約100社が出展する会場内。今年は特にサステナビリティー対策をアピールする展示が目立った。ここ数年で社会的関心が高まっているテーマであるが、新たな形で展開する事例が出始めている。欧州の法規制やZ世代の期待などサステナビリティーに関する話が来場者、出展者の両サイドから聞こえてくる。「Zero-waste(廃棄ゼロ)」「Low-emission(温室効果ガス排出量低減)」「Deadstock(売れ残り品)」といった言葉はもはや常用語になり、それらに関する認証制度と一緒に語れることも少なくない。

Part of Kingpins' Most Sustainable Product (MSP) collection, designed by Piero Turk, manufactured by Denim House and washed by Tonello. Image: FashionUnited.

出展者、「ブランドはサステナビリティの次段階に進みつつある」

「だれもがサステナビリティを求めている」。FashionUnited誌記者が訪れたすべてのブースでこのメッセージが聞かれた。トルコのデニム製造会社「キリム デニム(Kilim Demim)」で販売・マーケティングを担当するメラハット・ウスタンダグ(Melahat Ustundag)氏によると、最新技術としては特に生分解性の衣料に対するニーズが高まっているという。これを実現するため、同社は旭化成が製造する世界初の分解性スパンデックス「ロイカV550」を採用。「キングスピン」の出展者の中では、ほかにも「アーティスティック ミリナーズ(Artistic Milliners)」や「カナチバ(Canatiba)」「プロスペリティ(Prosperity)」も「ロイカV550」を導入している。。

旭化成ロイカ事業部の四戸宏昌課長代理は、「もともとはサステナビリティ・ソリューションを意図して開発したものではなかった」と語る。2016年、サステナビリティが盛り上がっていたことを受けて、同社は「ロイカV550」の生分解性試験を決定し、サステナブル素材としてマーケティングを展開することとなった。しかし5年ほど前に販促活動を開始した時点では今ほどサステナビリティを訴える企業が少なく、大規模な商業化は進まなかった。「当時ブランドが注目していたのは、“ロイカEF”を初めとする縫製工場などで廃棄されていた不要糸を再利用した繊維だった」。(四戸氏)まもなくして生分解性素材に対する社会的関心が著しく拡大したが、四戸氏によると生分解性繊維は繊維の種類によって浸透度が異なり、綿やテンセルでは一般的になってきている一方、ポリアミドやポリエステルではまだ再生材が中心だという。また、合成繊維はロイカV550との混紡が難しい。

一方、新たなサステナブル素材として、ヘンプも注目されている。「ファッション業界に関わるすべての企業やデザイナーたちは、サステナビリティをより一層推進する方法を求めている。再生コットンは最初に導入するにはいいが、ブランドの中にはヘンプをはじめとする素材でさらにサステナビリティに力を入れている」と説明するのは、「アーティスティック・デニム・ミル(Artistic Denim Mills)のマルタ・カボ(Marta Cabo)デザインディレクター。ヘンプは綿よりも少ない水と化学肥料で育つため、環境に優しい繊維とされている。しかしながらそのコストの高さから、多くのブランドにとってヘンプは現状、導入のハードルが高い。「価格が手頃になれば、みんなが使うようになる。将来的にはもっと多くのブティックでヘンプの服を見かけるようになって欲しい」。(カボ氏)

この問題に対する解決策として、仏のヘンプ製造会社「マーマラ・ヘンプ(Marmara Hemp)」は、世界初の第三者認証を受けたcottonised hemp(ヘンプコットン)の開発に注力している。展示ブースに描かれた文字を見て、ふと疑問が湧き上がる。「Cottonised hemp」とは一体どういうものなのか?実はこれ、来場者からもっともよく聞かれる質問の一つだそうで、「マーマラ・ヘンプ」のエルヴェ・ドノエル(Hervé Denoyelle)販売・マーケティング部門バイスプレジデントは「Cottonised hempとは綿と同じように紡績できるよう加工されたヘンプ」だとしている。さらにCottonised hempは見た目も綿に近い上、手触りも柔らかい。広く普及している綿は取り扱う紡績会社もヘンプより多いため、「(綿と同じ方法で紡績できる)Cottonised hempは、低価格化につながる」とドノエル氏は期待する。

Bag and trousers at the Marmara Hemp stand. Image: FashionUnited

法規制の変化も後押し

服飾生地の調達プラットフォーム「マテリアル・エクスチェンジ(Material Exchange)」は、「デッドストック」と呼ばれる売れ残りや長期間保存されていた在庫品専用のオンラインサイト「デッドストック・デポ(deadstock depot)」を立ち上げた。生地製造会社がサイトに掲載したデットストックを、ブランドを対象に販売するもので、「キングピン」の初日に受注を開始した。ベン・フェルトン(Ben Felton)戦略担当責任者は、展示ブースは賑わいを見せており、来場者の反応も上々だと話した。

「キングピン」では法規制が重要な要素になっているとフェルトン氏は指摘。「法規制の変化により、ブランドはサステナビリティ追求の新たな手法を試さざるを得なくなっている」(フェルトン氏)。同社のブースには、ブランドだけでなくある国の政府関係者も立ち寄り、関心を示しているという。

Denim looks on display in the Kingpins 'Vintage Showroom'. Image: FashionUnited

今回の「キングスピン」は全体的にデニム業界のサステナビリティ実現に向けた取り組み度合いが明確に提示された内容となった。新しいことを“常識”に変えるのは時間がかかるが、会場での会話からすでに明るい兆しが見え始めていることが垣間見れた。

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