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‘24年秋冬パリFW総まとめ Part 2〜ノスタルジックと(おぼつかない)デビュー作

By FashionUnited

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ファッション
Louis Vuitton FW24 Credits: ©Launchmetrics/spotlight
前回に引き続き、FashionUnited記者が2024年秋冬パリファッションウィーク(パリFW)に見るファッション業界の最新動向を深掘りする。

2人の若手クリエイティブディレクター

Louis Vuitton FW24 Credits: ©Launchmetrics/spotlight
「クロエ(CHLOÉ)」移籍後初のパリFW参加となったシェミナ・カマリ(Chemena Kamali)はデビュー作で、同メゾン史上もっとも長くクリエイティブディレクターを務めたカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)への敬意を表しつつ、クレア・ワイト・ケラー(Clare Waight Keller)時代のメゾンを象徴するボヘミアン・シックなクロエ・ガールのイメージに新たなスタイルを吹き込んだ。
Saint Laurent Menswear Credits: ©Launchmetrics/spotlight
カミリが提案したクロエ・ガールは、大人への階段を昇り始めた「クロエ・ウーマン」の趣きがある。一方で、フロントロウやランウェイを飾る元および現役「クロエ」モデルたちや、新作のデザインを通じて、創業者ギャビー・アギョン(Gaby Aghions)が描いた「クロエ」の女性像への回帰を見て取ることができる。手法は異なるものの、ほぼすべてのルックスがアギョンが愛したというブラウスを起点に考えられたコレクションは、ロマンチックかつノスタルジックなブラウスやシアーのドレスに加え、ラッフルやフラウンスをふんだんに使ったトップスにヒップスラングのパンツやタップショーツ、ニーハイブーツを合わせて構成。さらに2008年にハンナ・マクギボン(Hannah MacGibbon)が発表したゴールドの留め具のついた台形サッチェルバッグ「パラティ」も復活し、“イット・バッグ”の再来を予感させた。
Chanel FW24 Credits: ©Launchmetrics/spotlight
絶賛されたカミリのデビュー作の影で、厳しいスタートと切ったデザイナーも。「アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER MCQUEEN)」のショーン・マクギアー(Sean McGirr)は、メゾン史上初めて創業者リー・アレキサンダー・マックイーン(Lee Alexander McQueen)と個人的なつながりなく抜擢されたクリエイティブデザイナーとしてサラ・バートン(Sarah Burton)の後を継ぐという複雑で割に合わない仕事を任せられ、初お披露目した’24年秋冬コレクションでメゾンのアーカイブに立ち返ろうと試みたものの、まだ力不足であった。1995年にリーが発表した「ザ・バーズ(The Birds)」コレクションをもとにデザインした圧縮されたシルエットや、特にメンズウェアで際立ったテーラリングはシャープでバートンに比べて気骨さを表現していたが、変化しつづける現代の時代背景や一時業績が低迷し高級ブランドグループに買収されたというメゾンの歴史を考えると違和感というか、若干手荒な感じがした。
Chloé FW24 Credits: ©Launchmetrics/spotlight
キャリアの少ないマクギアーにとって、リーの後を追うことは至難の技であるが、リー自身も若手時代のデザインには賛否両論あったことは忘れてはならない。今回はネガティブな評価やコメントを受けてしまったかもしれないが、歴史が繰り返されるとするならば、マクギアーの次作は批判を覆すものになるだろう。

若手クリエティブディレクターと言えば、マクギアー同様にステファノ・ガリーチ(Stefano Gallici)も昨年「アン ドゥムルメステール(ANN DEMEULEMEESTER)」のクリエイティブディレクターに就任した。今季のパリで彼が披露した第2作目は、メゾンのコードや創業者に対するガリーチの深い理解を証明した。荒々しさと繊細さの間の微妙な境界線を追求した’24年秋冬コレクションは、シフォンのレイヤード・ルックスやジョーゼットのドレス、流れるようなランジェリーといったアイテムに、ライダースジャケットや立体的なテーラリングを合わせてコントラストを強調。さらに無造作なヘアスタイルや重厚感のあるブーツとのコーディネートで、そのデリケートな生地感とは対照的なイメージを打ち出した。

Alexander McQueen FW24 Credits: Alexander McQueen.
ネットで話題沸騰

一方、今季のパリでのコレクションが、ネットで大ブレイクした二人の人物がいる。「コペルニ(COPERNI)」のセバスチャン・マイヤー(Sébastien Meyer)とアルノー・ヴァイエ(Arnaud Vaillant)だ。2023年春夏コレクションのショーでモデルのベラ・ハディッド(Bella Hadid)の身体に特殊な溶液をスプレーし、白いドレスを即興で製作するというまるで科学ショーのような演出が話題を呼んだことは記憶に新しい。その二人を今季ネットでバスらせたのは、残念ながらコレクションそのものではなく、中で登場した「スワイプ(Swipe)」の新バージョン。なんとその素材はNASAも採用しているという99%の空気とわずか1%のガラスで作られた特殊なシリコンベースの軽量素材だ。そのユニークな素材はまたたく間にソーシャルメディアで話題をさらった。

Ann Demeulemeester Credits: ©Launchmetrics/spotlight
しかし今季インスタグラムでもっとも人気を博したのは、「コペルニ」ではなく「ミュウミュウ(MIU MIU)」であろう。

「プラダ(PRADA)」の妹分として見られがちな「ミュウミュウ」だが、そのパワフルさは「プラダ」には劣らず、今季は子供らしさと大人のスタイルを融合させた風変わりなコレクションを発表。カクテルドレス、ゴージャスなファー、パール、キャップスリーブ、メリージェーン、ウールのストッキングなどのレディーライクな雰囲気に、短めのヘムライン、ジーンズ、「ドクターマーチン(DR.MARTENS)」風ブーツといったティーンエージャーの若々しさを掛け合わせるという実験的取り組みを中心としたショーは、そこでは終わらなかった。ショーではジジ・ハディッド(Gigi Hadid)、ヴィットリア・チェレッティ(Vittoria Ceretti)ら人気モデルに混じって、クリスティン・スコット・トーマス(Kristin Scott Thomas)やアンヘラ・モリーナ(Ángela Molina)などベテラン女優たちも登場。ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)のように、ガーリーなだけではない成熟した大人の女性のブランドとしての「ミュウミュウ」を印象付けた。

Coperni FW24 Credits: ©Launchmetrics/spotlight

パリFWと時を同じくして、先週インスタグラムが2時間あまりシステム障害を起こし、世界でユーザーがログインできないという事態が起こった。おそらくFWや「ミュウミュウ」のショーとは関係ないではあろうが、世界4大FWのフィナーレに開幕した10日間で108のショーという記録的なパリFWに処方されたある種の休養であったのかもしれない。

Miu Miu FW24 Credits: ©Launchmetrics/spotlight
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