スナップチャットが挑む、ラグジュアリーメゾンと消費者の関係変革
また、同イベントでは拡張現実(AR)および人工知能(AI)がいかにラグジュアリーメゾンを支援できるかが示された。これらのテクノロジーは、新たな方法で消費者にリーチし、ブランドへの関心を強化する役割を果たす。
この命題を裏付けるのが、米テクノロジー企業のSnap Inc.(以下、スナップ)、英広告持株会社のWPP、および仏市場調査会社のIFOPが共同で実施した国際調査である。同調査では、9つの市場において18歳から45歳までのラグジュアリー消費者9,000人を対象にアンケートが行われた。それによれば、78%が依然としてラグジュアリーに憧れを抱いている一方で、65%は「かつてほどの特別感(エクスクルーシビティ)が失われた」と感じているという。では、その魅力を損なうことなく、ラグジュアリーをより身近なものにするにはどうすればよいのだろうか。
スナップでグローバル・ヘッド・オブ・ラグジュアリーを務めるジョフリー・ペレスは、FashionUnitedに対し次のように語った。「ラグジュアリーファッションは常に、感情を呼び起こし、夢を与える独自の力を持っていた。今日変化しているのは、新しい世代がファッションメゾンを発見し、その世界観を自分たちのものとして取り入れ、ブランドとの関係性を構築する方法である」
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購入に先立つ「求心力」の醸成
同調査によれば、今日のラグジュアリーは「まず体験され、その後に購入される」という。消費者は実際に製品を所有するずっと前に、コンテンツや会話、カルチャーの文脈を通じてファッションメゾンを発見する。回答者の79%にとって、大規模かつ単発のキャンペーンよりも、小規模で定期的なブランドとの接点(インタラクション)の方が、購買意欲を高める上で効果的であることが分かっている。
さらに、ラグジュアリー購買層の39%は、製品を購入するまでに少なくとも4回のタッチポイントを経ている。スナップチャットはこうした動向に対応するため、ユーザーが場所やアクティビティを発見できるインタラクティブな機能「Snap Map(スナップマップ)」などを提供している。このマップ上では、ラグジュアリーメゾンが視覚的なアニメーションアイコンを用いて自社のブランドをアピールすることが可能だ。
スキャン、プレイ、そしてバーチャル試着
ペレスのこうした洞察は、パーソナルな体験に焦点を当てた会場の3階で実際に試すことができた。そこでは、さまざまなファッションおよびビューティブランドが独自のデジタル体験を提示していた。参加ブランドとしては、イタリアのラグジュアリーメゾンであるミュウミュウ、プラダ、グッチ、パリのメゾンであるバレンシアガ、そしてフランスのディオールおよびシャネル(シャネルはアクセサリーを展示)が挙げられる。その他、仏コスメティックブランドのランコムや、米ビューティレーベルのカイリー・コスメティックスも名を連ねた。
招待客は自身のスマートフォンで各ブランドのQRコードをスキャンする。そうすることで、それぞれのデジタル体験へと直接没入することができた。
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ディオールのブースでは、来場者がアイコンバッグ「Book Tote(ブックトート)」をテーマにしたゲームを楽しむことができた。これは米国の作家ブレット・イーストン・エリスによる小説『アメリカン・サイコ』へのオマージュを取り入れたものである。一方、バレンシアガはスマートフォンの画面を通じて、ハンドバッグ「City Bag(シティバッグ)」にまるで命を吹き込むかのような演出を見せた。
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これらの体験は、同調査で明らかになったもう一つの結果と結びついている。調査によれば、ブランドのヘリテージ(伝統)は重要であるものの、それは現在も生きたものでなければならないという。実際、回答者の80%は、アイコニックな製品の背景にある知識を得ると、その製品に対する所有欲がさらに高まると答えている。これには、製品の歴史やクラフツマンシップ、製造プロセスに関する情報などが含まれる。
自宅から快適に楽しむラグジュアリー体験
ARを活用すれば、消費者は実店舗に足を運ぶ前から製品に親しむことができる。ペレスは「このテクノロジーの素晴らしい点は、どこでも利用できることだ」と説明する。「自宅のソファの上からでも、あるいは周囲何マイルにもわたってラグジュアリーブティックが存在しない山奥からでも、ラグジュアリー製品やアイコニックなコレクションにアクセスできるのだ」
ラグジュアリーファッションジャーナリストのロール・ギルボーは、具体例を挙げてこれを説明した。現在この会場にいる全員がパリに集まっているが、参加していない人々もARを通じてこうしたラグジュアリー体験の空気感を感じ取ることができると彼女は指摘する。つまり、この世界観に没入するために、必ずしもファッションの主要都市に住んでいる必要はないのである。
例えば、顧客がアイウェアをバーチャルで試着したり、デジタル上でコレクションを閲覧したりすることが挙げられる。もはや、そのために実店舗を訪れる必要はないのだ。
ペレスによれば、これは単なるリーチ数の拡大以上の意味を持つという。「多くの場合、それは1対1(ワン・トゥ・ワン)の体験となる。スニーカーや時計、アイウェアをバーチャルで試着するとき、非常に特別な感覚を覚えるのだ」とペレスは語る。
消費者も調査の中で同様の期待を示している。約71%が、ARやバーチャル試着機能によって単なる関心が即座に強い購買意欲へと変わる可能性があると回答した。さらに、74%はバーチャルで試着した製品について、友人や家族の意見を聞くためにシェアする可能性が高いとしている。
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また、ペレスは売上に対するポジティブな影響についても言及した。同氏によれば、ARが特定の製品に対する欲求を高め、コンバージョン率を押し上げることは複数の調査で示されているという。このように、同テクノロジーはウェブサイトと実店舗の間のギャップを埋める役割を果たす。ARは消費者を店舗へと誘導するきっかけとなり、店頭で特定のスタイルやカラーが在庫切れとなっている場合のソリューションとしても機能する。
もっとも、今回のディスカッションにおいて、個々のラグジュアリーメゾンにおける具体的な成果は開示されなかった。スナップは、今年初めに開始されたキャンペーン「Gucci La Famiglia(グッチ ラ ファミリア)」をはじめとするAR体験がもたらしたリーチ数、コンバージョン率、および売上高に関する具体的な数値を公表していない。
スナップがARおよびAIに見出すファッションの未来
ペレスによれば、次のステップはARおよびAIの融合にあるという。スナップは2026年6月、スタンドアロン型のARグラス「Specs(スペックス)」を発表した。これは現実の空間にデジタル画像や情報を重ね合わせて表示するデバイスである。同グラスは、AIアシスタント機能やインタラクティブなデジタル体験などを提供する。
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さらに、AI活用の一例として前述のキャンペーン「Gucci La Famiglia(グッチ ラ ファミリア)」が挙げられる。スナップチャット上でAIを搭載したレンズを使用することで、ユーザーは自身を同キャンペーンのキャラクターへと変身させることができた。ペレスによれば、AIはクリエイティブのプロセスを加速させ、こうした体験を消費者にとってよりアクセスしやすいものにするという。
FashionUnitedはスナップチャットの招待によりパリのイベントを取材した。