ファッション小売の最新事情
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経済活動の再開に伴い、世界中のブランドや小売は激変した実店舗の販売業態に素早く適応するため迅速な決断を迫られている。顧客体験向上のための施策は安全・衛生面の懸念や客が行列を作ることによる問題などのため見直しとなり、メイクアップコーナーや試着室もVR(仮想現実)に変わっている。さらに在庫レベルの管理や製造委託先との強固な関係の再構築なども強く求められている。
本記事ではトレンド予測を発信する「トレンドストップ(Trendstop)」が解説するファッション小売業界全体の最新の動きを特集する。
実店舗vs デジタル
コロナ以前からデジタル戦略に長けてきた企業には営業再開といってもフルに再開とは限らない。ザラ(ZARA)の今年2月〜4月のオンライン事業の売上は前年同期比50%増となり、さらに4月時点の売上は対前年95%増であった。デジタル化の波に手応えを感じたザラはあえて世界の約1200店舗の営業再開を行わず、変わりにeコマースに注力することを決定した。一方エイチアンドエム(H&M)は地方の小規模店舗約170拠点を閉店し規模の大きい旗艦店に集中するとしているほか、米ウォルマート(Walmart)もECプラットフォーム「ショッピファイ(Shopify)」との提携を発表し、eコマースの新機軸として大いに期待されている。
顧客中心のデジタライゼーション
小売業界では欧米を中心に引き続きカーブサイドピックアップ(駐車場や路上での商品受け取り)や店舗受け取りが人気となっている。グーグル(Google)の検索数でも「free delivery(送料無料)」が前年比300%と急増したほか、「kerbside pickup(カーブサイドピックアップ)」と「open near me(自宅の近くで開いてる)」もそれぞれ前年に比べ70%および42%増えたという。顧客中心のデジタライゼーションは今後も進展していくと見られるが、そうした技術の統合は長期的な話。現在のところ、小売各社の競争は試着機能をいかに上手くオンラインに移行できるかが中心となっている。
ARとVRの統合
今月上旬、動画・写真共有アプリ「スナップチャット(Snapchat)」を運営するスナップ社(Snap Inc.)はAR(拡張現実)技術を使い商品のバーチャル試着から購入までを一括して行うサービス「ショッパブルAR(Shoppable AR)」のシューズへの展開を発表。グッチ(Gucci)がこれをファッションブランドで初めて導入することとなった。ユーザーはスマートフォンの画面で商品を選択した後、スマートフォンのカメラを自身の足に向けると選択した靴の試着画像を見ることが出来る。気に入れば画面の「購入ボタン」を押すことでそのまま購入することも可能となっている。
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