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イタリアの職人技術、窮地に

By Don-Alvin Adegeest

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イタリアには、小さなオートクチュールおよび特殊品のアトリエや高度な技術を持つ縫製工場など、世界中に製品を輸出する

ファッションの専門的生産施設が多く存在する。「グッチ(Gucci)」「ヴァレンティノ(Valentino)」を筆頭にグローバルなブランドの集まるイタリアのファッション&アクセサリー産業の市場規模は930億米ドルとされており、何百万という雇用を提供し同国の国内総生産(GDP)の1.5%を占める。

イタリアGDPの1.5%を占めるファッション産業

イタリアの職人達の多くは新型コロナの感染が拡大してから業績が低迷し、存続の危機に瀕している。発注キャンセル、代金不払い、売上の急落はもはや日常化し、伊・投資銀行のメディアバンカ(Mediobanca)によると、現在イタリアにある83,000のファッション・衣料品製造企業のうち、その多くが人員削減や事業閉鎖に追い込まれているという。

英国のフィナンシャル・タイムズ紙は、欧州の絹織物製造の80%を担うイタリアのコモ市で絹織物製造業に従事する労働者15,000人が一時解雇や契約打ち切りに合っていると伝えている。

イタリア・ファッション協会(National Chamber of Italian Fashion)のカルロ・カパサ(Carlo Capasa)会長は同紙の取材に対し、「コモ市の絹織物製造業者は大手ファッションブランドと取引があるものの、過去二十年間の間中国などの海外メーカーとの競争に苦しめられてきた。多くの業者が廃業寸前という時に、ローマ市ではパンデミックによって打撃を受けた企業への支援策として助成金ではなく貸付金しか提供しておらず、業者達は憤りを感じている。ファッションブランドはどこも直近の決算で30〜40% も売上が減少しており、下請けとなる絹織物製造業者に大きなしわ寄せが出ていることは明らかだ」と訴えた。

さらにカパサ会長は「織物製造業者を守るただ一つの方法は政府が介入し、世界に勝るイタリアのファッション産業やそのサプライチェーンを国の真の戦略的産業として認知することだ」と提言している。

世界に流通する高級品の40%はイタリア製

世界に流通する高級品のうち、イタリア製の製品は40%を占める。今年6月ロイター通信に掲載された記事では、大手高級品ブランドに製品を供給するイタリアの職人6人が「5月と6月の受注量がそれぞれ昨年に比べ20%および50%減った」と明かしている。

記事ではまた、フィレンツェを拠点とする経済ロビー団体「コンフィダストリア(Confindustria)」のファッション担当責任者デビッド・ルジ(David Rulli)氏が取材に答え、「向こう二カ月のうちに状況が回復しなければ、9月以降はさらに事態が悪化し、高級品を製造する小規模な工場を中心に多くが倒産してしまう」とコメントしている。

イタリア政府は5月、新型コロナ危機で影響を受けた企業を支援する550億ユーロの緊急経済支対策を承認した。イタリア政府は今年の国内景気は8%縮小すると予測しているが、ファッション関連企業の多くはさらに深刻なダメージを受けるのではないかと見られている。

上質な製品の細部に現れる職人技術の美。それは、機械や設備には真似できない、職人の手と伝統的な手法によってのみ生みだされる匠の技なのである。職人達が仕事を失うということは、ファッション業界および世界全体の大きな損失につながるだろう。

画像: Como silk via Bellagio Como

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