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衣料品包装の環境負荷低減の新たな切り札「コンポスト」

By Kristopher Fraser

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Image: tipa-corp.com

現在販売されている衣料品の大半は消費者の手元に届くまでに何度も梱包・開梱を経ており、その都度不要な大量のプラスチック製包装材が廃棄されている。残念なことにこうした廃棄プラスチック製包装材はほぼすべて埋め立てまたは焼却処分され、それによって排出される温室効果ガスがファッション業界全体の温室効果ガス排出量の増加を招いている。加えて衣料品そのものも埋立廃棄処分が問題視され、環境への悪影響がますます懸念されている。今日、ファッション業界は未だ石油、ガスに続く環境汚染を加速する業界と言われている。

サステナブル・ファッションの最新技術「コンポスト化(堆肥化)可能包装材」

ファッション業界が環境に悪影響を与える廃棄物問題への対策を継続的に模索するなか、今「コンポスト化(堆肥化)」が新たなソリューションとして期待されている。まだ業界でほとんど馴染みがないコンセプトで、業界で話題の生分解性素材と似ているものの、すべての生分解性素材がコンポスト化可能というわけではない。生分解性素材は分解され自然に還るまでに長い工程を要するのに対し、コンポスト化可能素材は特定の条件が整えば分解される。

イスラエルのTIPA(ティパ)社をはじめとする包装材メーカーは、プラスチックに変わる100%コンポスト化可能な素材を使用したより環境負荷の低い包装材料の開発に注力している。TIPA社ではプラスチック製包装材の代替品となる、廃棄後に土壌の養分となる堆肥として利用できる包装材製品を扱うほか、堆肥化可能なレザーの開発を進める企業もある。

2001年には「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」がキノコの菌糸から作ったマッシュルームレザーで制作したコレクションを発表した。また同様にマッシュルームレザーの製造を手がけるMycoWorks(マイコワークス)も堆肥化可能素材分野で業績を伸ばしている。これまでファッション業界の環境対策と言えば繊維が議論の中心であったが、近年は包装材料にも目が向けられている。

TIPA社のマイケル・ワス(Michael Wass)バイス・プレジデントは、昨年リサイクル可能な包装材のうち実際にリサイクルされたのは4%にしかすぎず、新たなソリューションが必要であると説明する。「リサイクルはリサイクルが適した製品には重要な手段となるが、軟包装材(プラスックなどの素材から作られるパウチや袋といった柔らかい包装材料)はリサイクルが極めて難しい」とワス氏は言う。「コンポストは製品を使い終わった後でもリサイクルの課題を克服しながら有用なものに変えられるという内在的価値がある。リサイクルと言っても、回収されたもののなかには、売り物にならないものもあるからだ」

TIPA社の堆肥化可能な包装材は、原料に品証済みの堆肥化可能ポリマーを使用。すでに「スコッチ & ソーダ(SCOTCH & SODA)」「ガブリエラ ハースト(GABRIELA HEARST)」などの大手ブランドが採用している。

プラスチック製のビニール袋などの従来の軟包装材は使い終わった後分解されず環境負荷が高く、ごみの中でも最も多い廃棄物である。埋め立てても風で飛ばされたりしてしまい、回収が難しい。こうしたサプライチェーンにおける問題に対する新たなソリューションが、堆肥化可能包装材だ。

堆肥化可能包装材は使い終わった後コンポスト容器や専用のコンポスト施設で処理することにより、有機物へと短時間で分解することができる。商業規模で製造するには課題もあるが、TIPA社はこれをできるだけサステナブルな形で推進する。

例えば、TIPA社では原料調達や製造を製品が消費される現地で行うことにより、輸送による二酸化炭素排出量の削減に努めている。つまり、同社の包装材料は取引先が存在する国内で原料調達・製造されたものなのである。サプライチェーンの混乱が続く昨今、現地調達できる包装材は小売にとっても利点がある。消費者の53%が企業によるプラスチックの使用量を減らすべきとの意見もあり、今後堆肥化可能素材がますます注目されていくことは間違いない。

TIPA
コンポスティング
堆肥化