「グッチ」、大阪の パロディブランドとの商標権訴訟に敗訴
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ぱっと見、「GUCCI」と「CUGGL」は文字面ではブランドイメージや著作物として大きく違う。前者はイタリアのラグジュアリーブランドで世界的に知られる「グッチ(GUCCI)」のブランド、後者は有名ブランドをパロディーしたファッション・アイテムを販売する小規模なスタートアップ企業が商標権登録したものである。両者は似ても似つかないが、ピンク色のペンキで文字の下半分を巧妙に塗りつぶした「CUGGL」ロゴのプリントTシャツはもう少しで「GUCCI」のものに間違えそうになる。
「CUGGL」は大阪に本社を置き、起業家・黒川暢朗(くろかわ・のぶあき)氏が代表を務める会社が作成したもの。同社は有名ブランドのパロディーのTシャツを販売しており、2020年10月に「CUGGL」のほか、同じような方法で下半分を隠すと「シャネル(CHANEL)」に見える「GUANFI」(いずれも大文字)の商標権を取得している。
マークス国際弁理士事務所(本社・大阪府大阪市)によると、「グッチ」は「CUGGL」ロゴに反対し特許庁に訴えを起こしたが、同庁は消費者が「CUGGL」ロゴを本物の「グッチ」と混同する可能性は低いとして訴えを退いたという。
また、英『フィナンシャル・タイムズ』は、特許庁はパロディーされている大手のブランドが考えるほど消費者が騙される危険性は低いと判断する傾向があるのではないかと報じている。
ファッションにパロディーは必要か?
一方、ブランドのパロディーや、パロディーを通じてコンシューマリズムや高級ブランドを訴求することには一定の価値もある。実際に、シンプルな白のTシャツは高級ブランドにとって売上に貢献する重要な商品で、コットンのTシャツの胸元や背中にロゴが入っているというだけのものなのに、驚くような価格がつく。
しかしロゴマークを厳しく保護し、それを侵害されることによる潜在的売上損失をひどく恐れる高級ブランド企業には、パロディーの持つユーモアのセンスは理解されない。
「グッチ」をはじめとし、多くの高級ブランドが表現の自由や世界的な消費者の影響の恩恵に預かっている。かつて物流会社「DHL」をパロディーし、大人気となった「ヴェトモン(VETEMENTS)」のTシャツがいい例だ。そんな事例がありつつも、彼らは自分達のロゴが逆の立場で使われることについては好意的に受け止めないようである。