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世界高級品市場の売上5割、上位10社が独占

By Don-Alvin Adegeest

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コンサルティング大手のデロイト(Deloitte)は「世界のラグジュアリー企業ランキング2020(原題『Global Powers of Luxury Goods 2020』)」を発行し、2019年度(2019年12月31日までの会計年度)の売上高上位100社を発表した。同レポートでは、上位100社の売上高は合計2,810億ドルであり、このうち約51%(1,440億ドル)はLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)やケリング(Kering)、エスティローダー(Estee Lauder)、リシュモン(Richemont)、シャネル(Chanel)、PVHなどの上位10社が独占したことが分かった。

ランキングは2019年度の売上高が2億3,800万ドル以上の高級品企業を対象に順位づけを行ったもので、100社の平均売上高は28億であった。

LVMH、ケリング、エスティローダーは3年連続で上位3位を獲得し、売上高はそれぞれ375億ドル、178億ドル、149億ドルであった。3社合計の売上高は総額700億ドルを超え、ランク入りした企業全体の売上の4分の1に相当する。

レポートによると、高級品市場は全体的に価値が向上したものの、成長率は低下したという。低い成長率の主な要因として保護政策や貿易規制を挙げ、特に中国および米国といった大きい市場でいずれも前年に比べ低い成長率につながったとの見解を示した。

デロイトグローバルのパトリシア・アリエンティ(Patrizia Arienti)EMEA ファッション & ラグジュアリーリーダーはレポートについて「調査ではパンデミックの財政的影響はまだ評価されておらず、ラグジュアリー産業における市場集中が今後も持続するかは未知数。(パンデミックの)長期におよぶ深刻な影響は、消費者行動に大きな変化をもたらし、企業がこうした変化にどう対応していくかといったファッション業界やラグジュアリー業界の将来像に対する議論を促している。ニュー・ノーマル(新常態)の中で実現可能でより適切なビジネスモデルを考えながら“高級品”を捉え直し新たな方向を模索していくという雰囲気が業界全般にある」とコメントしている。

ファッション&高級品業界にとっての新たな時代

またレポートでは高級品メーカーが新型コロナウイルス・パンデミックによって大きな打撃を受けていることを繰り返し強調。各国で数ヵ月にわたり国外への渡航が制限され、海外旅行が再開できる時期は依然として目処が立たない。ロックダウンにより世界各地でインバウンド観光も崩壊し、従来の小売業の売上が大幅に減少している。

世界的な旅行産業の崩壊によって特に影響を受けているのが空港での物販が売上の大半を占める免税店だ1 。今年8月、空港の免税品店などを運営する世界最大の旅行者向け小売のデュフリー(Dufry)は前年比−60.6%という組織的なマイナス成長を発表した2 。一方その他の小売業については全世界的に業績不振であったが、夏季にはヨーロッパ、アジア太平洋、米国で若干上昇傾向が見られた。また新型コロナのパンデミックは各国で海外旅行客を縮小させたものの、中国の消費者の間では高級ブランドの輸入品に対する人気が引き続き根強く、中国政府による中国内で臨時の免税地域の設置を通じた免税品購入促進策も計画されている。

2020年に予定されていた主要なファッションイベントやランウェイショーはおおむね開催中止または年内の開催延期を迫られたほか、その多くはオンライン形式での開催に変更された。外出制限などで消費者が自宅に留まることが多くなったことでオンライン小売販売の売上高が上半期に増加し、4月には世界全体でピークに達し前年比209%増となった。この影響を受けて多くのブランドがデジタル化を加速するとともに、「シー・ナウ、バイ・ナウ(see now, buy now、“今見て、今買う”の意味)」イベントというファッションショーの直後に商品が購入できるライブストリーミングプログラムなどのECソリューションの提供を開始している。

コロナ危機が新たな価値創造へのパラダイムを加速

高級ブランドはこれまで以上に顧客とつながる新しい方法を模索しており、これまで想像もしていなかった手法で自らを再開発、再構築しようとしている。サステナビリティはそうしたファッションや高級品を扱うブランドにとって業績回復の鍵を握る主要分野の一つである。世界的な高級ブランドは工場からのCO2排出量を削減するための環境技術の導入などの対策に多額の投資を行い、加えて気候変動への対応としてカーボンオフセット(事業活動で生じるCO2排出量を補うために環境保全活動に参加し、排出量を相殺するという取り組み)も推進している。しかし、こうしたサステナビリティの向上は何もサプライチェーンに限ったものではなく、進化する消費者や地球環境のニーズに応じた新しい価値と視点を取り入れていくことでもある。

レポートの全文はデロイトのウェブサイトで公開されている。

画像提供および記事出典: Global Powers of Luxury Goods 2020 (Deloitte)

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