「データ不足」の克服：ファッションロジスティクスにおけるサステイナビリティの鍵

2025年以降、欧州の多くの大企業は、企業サステナビリティ報告指令（CSRD）への準拠が義務付けられる。この指令は、環境、社会、ガバナンス（ESG）への影響に関する報告義務の対象となる組織の数を大幅に拡大し、欧州サステナビリティ報告基準（ESRS）に準拠することを新たに要件として導入するものである。

CSRDは、企業に対し自社の活動だけでなく、バリューチェーン全体にわたる透明性の確保を求めている。これは、ファッションブランドがロジスティクスパートナーを含むすべての取引先企業からデータを収集する必要があることを意味する。

しかし、データ可視性の強化を求める規制はCSRDだけではない。新たに採択された繊維製品に関する拡大生産者責任（EPR）規制は、繊維製品の回収、選別、リサイクル、廃棄を含むライフサイクル全体にわたる責任を生産者およびブランドに課すものである。

また、サステナブル製品のためのエコデザイン規則（ESPR）は、製品設計、リサイクル素材含有率、修理可能性に関する透明性を義務付け、サプライチェーン全体にわたる詳細な製品レベルのデータを要求する「デジタル製品パスポート（DPP）」の導入に向けた土台を築いている。

このように、データはもはや任意で持つべきものではなく、ビジネスにおける中核的な要件となっている。

同時に、規制要件や責任あるファッションを求める消費者の期待に応えるため、レンタル、リセール、修理、リファービッシュメントといったサーキュラー・ビジネスモデルを取り入れるブランドが増加している。このような状況において、堅牢なデータ収集の枠組みは、事業の効率化、製品のライフサイクルの延長管理、そしてその影響測定に不可欠である。

業界の視点から見る実践的アプローチ：Bleckmannのデータ収集戦略

BleckmannでThe Renewal Workshopのプログラムマネージャーを務めるハンス・ロッベン氏と、同社で企業の社会的責任担当マネージャーを務めるロン・タイセン氏が、同社のデータ収集戦略がサーキュラリティおよびサステイナビリティに関する目標達成をいかに支えているかを解説する。

Bleckmannのようなロジスティクス企業にとって、サステイナビリティに関するデータを収集することが重要なのはなぜか？

ハンス氏： 「ファッションおよびライフスタイル業界は、輸送に伴う排出も一因となり、温室効果ガスの主要な排出源となっている。多くのブランドのバリューチェーンは複雑で、複数の国にわたるサプライヤーが関与している。これらのデータを標準化され、透明性があり、協調的な方法で測定することが不可欠だ。」

ロン氏： 「各組織にとって今重要なのは、どこを改善すべきかについて明確なビジョンを持つことだ。Bleckmannでは、ロジスティクスにおけるサステイナビリティのリーダーとして認識されることを目指している。しかし、それを主張する前に、我々が今どこにいるのかを把握する必要がある。したがって、データは我々の未来の戦略の基盤となる。」

ハンス氏： 「我々の事業に関する正確なデータを収集することは、クライアントにとっても付加価値となる。彼らのサプライチェーンの一部として、我々はデータ提供者となるのだ。欧州でCSRDが施行されることで、ブランドは自社の情報開示のためにロジスティクス関連のデータを必要とするようになる。我々が包括的なデータを提供できれば、より魅力的なビジネスパートナーとなることができる。」

ロン氏： 「その通りだ。データは、ブランドが人権への取り組みに優れた衣料品メーカーを選ぶか、あるいは排出量削減に注力するロジスティクスパートナーを選ぶかといった、重要なビジネス上の意思決定を支える。我々は、透明性を大幅に高めるこの動きを、サステナブルな変革を推進する機会と捉えている。」

サードパーティ・ロジスティクス（3PL）事業者は、どのようなデータに注力すべきか？

ロン氏： 「まず、自社の事業が（社会的および環境的に）最も大きな影響を及ぼしている分野と、自社に最も影響を与えうる要因を特定することから始めるべきだ。これが『ダブルマテリアリティ』の概念である。この分析に基づき、データ収集活動の優先順位を決定できる。例えば、労働力に関する指標、温室効果ガス排出量、データセキュリティ、あるいはそのすべてを監視する必要があるのか、といったことだ。」

ハンス氏： 「データは可能な限り具体的であることも重要だ。ファッションブランドは、一般的なデータを使用することへのプレッシャーをますます受けるようになっている。現在では、適切な種類のデータを収集するための優れたツールが利用可能だ。その一例として、Worldlyが挙げられる。彼らは、企業がサプライチェーンにおける自社の立ち位置に関連する環境・社会データを収集するのを支援するツールを構築した。」

ロン氏： 「しかし、最大の課題の一つは、何を収集するかを決定する以前の段階で発生する。それは、データを見つけ出し、それを大規模に収集する方法を考え出すことだ。体系的な収集がなければ、有意義な洞察を得ることは難しい。多くの場合、旧来のデータストレージシステムは相互に連携していないため、複数の情報源を統合し、チェーン全体にわたる環境・社会的影響の全体像を構築するための中央集権的なデータプラットフォームが必要となる。」

サステイナビリティに関するデータ収集は、事業の環境成果をどのように改善できるか？

ロン氏： 「中央集権的なデータソリューションは、多くの事業分野で役立つ。最も重要なものの一つが、炭素排出量の追跡だ。排出量を削減するためには、まず現状を把握する必要がある。つまり、ベースラインを確立し、それを可能な限り詳細にすることだ。ロジスティクス事業者として、我々のフットプリントの大部分がアウトバウンド輸送、すなわち店舗や消費者への直接配送を行う車両から生じていることを認識している。3年前、我々は輸送パートナーから荷物レベルの排出量データの収集を開始した。それが社内での議論のきっかけとなった。以来、ルートの最適化、電気自動車や自転車便の導入といった有望な取り組みが見られるようになった。我々は炭素排出量ダッシュボードの開発に着手し、現在ではISO 14083規格に準拠している。」

ハンス氏： 「データが真に変化をもたらしているもう一つの分野は、廃棄物の削減だ。我々は、倉庫の梱包材から始め、事業全体で廃棄物ゼロのシステムを目指している。すでに廃棄物消費量に関するダッシュボードを導入しており、2023年には90%以上のリサイクル率を達成したことを誇りに思う。次の段階は、この数値をさらに引き上げ、今後数年で新たな目標を設定することだ。グリーン・クレーム指令の採択により、あらゆるカテゴリーのブランドが製品のサステイナビリティについて、より一層の透明性を確保することを余儀なくされるだろう。我々自身がより正確な事業データを提供することで、ブランドのコンプライアンス遵守を支援する上で重要な役割を果たすことになる。」

ハンス氏： 「そして、規制の枠組みは拡大し続けている。ESPRは、製品レベルでの詳細な報告（製品のカーボンフットプリント、リサイクル素材含有率、リサイクルを妨げる物質など）を要求し、その情報を保持するためのデジタル製品パスポートを導入する。DPPの下では、EUで販売される衣料品にはデジタル識別子が付けられ、トレーサビリティはもはや任意ではなくなる。これは、サプライチェーンにおける『グレーゾーン』がなくなることを意味する。」

ロン氏： 「さらに、最近採択された繊維製品に関するEPR規制は、ブランドに対し、販売、使用、廃棄、リサイクルという製品のライフサイクル全体の追跡を義務付けている。責任ある生産を行うだけではもはや不十分であり、製品の寿命末期の管理を確実にしなければならない。これを証明する唯一の方法が、中央集権的でエンドツーエンドのデータ収集だ。」

ハンス氏： 「我々はこれを単なる規制上の負担としてではなく、機会として捉えるべきだ。消費者はますますサステイナビリティに関する認証情報を基に購買を決定するようになっている。早期に行動を起こした者がその恩恵を受けるだろう。サーキュラーなプロセスを拡大するブランドにとって、その影響は目に見える形で現れる。例えば、一着の衣料品について、LCA（ライフサイクルアセスメント）を通じてライフサイクル全体の削減効果をモデル化できる。これを数万、数十万点のアイテムに適用すれば、その効果は非常に大きなものとなる。」

ハンス氏とロン氏には、貴重な知見を共有いただいた。データとサステイナビリティの台頭は、近年の最も重要なビジネストレンドの一つであり、Bleckmannでの彼らの経験が示すように、この二つは密接に関連している。

同社がサステナブルな事業を支えるためにどのようにデータを活用しているか、また、それが貴社ブランドのサステイナビリティ目標達成に向けた前進をいかに後押しできるかについて、さらに詳しく知りたい場合は、Bleckmannの専門家によるコンサルテーションに問い合わせてほしい。