• Home
  • News
  • Business
  • LMVH、“内部から”改革 ステラ・マッカートニーの挑戦

Business インタビュー

LMVH、“内部から”改革 ステラ・マッカートニーの挑戦

By AFP

2020年3月19日

世界的なサステナブルへの取り組みで知られる英国人デザイナー、ステラ・マッカートニー(Stella McCartney)。「ビートルズ」のポール・マッカートニーと動物愛護運動家のリンダ・マッカートニーを 両親に持つ彼女は、自身のブランドがLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH Moet Hennessy Louis Vuitton、以下、LVMH)グループに入ったことを契機に、今国際的巨大ラグジュアリーファッショングループの内側から大きな改革に挑もうとしている。

マッカートニーはLVMHとの提携発表後、LVMH 会長で米アマゾンのジェフ・ベゾス社長と毎年世界長者番付で首位を競うベルナール・アルノー(Bernard Arnault)氏付きの“サステナビリティ・アドバイザー”にも就任している。

「亡くなった母はいつも“内側から浸透させなければダメよ”と言っていたわ」。パリ・ファッションウィークでのショー開催終時間前に受けたAFPの取材でマッカートニーはそう切り出した。ショーでは彼女が手がけた植物由来のヴィーガンレザーをふんだんに使ったアイテムや毛皮の原料となる動物達を模したフェイク・ファーのコスチュームを着たモデルが登場した。

またマッカトニー氏は、アルノー氏が以前スウェーデン出身の16歳の環境活動家グレタ・トゥンべリについて「批判以外に何も提供していない」と発言したことから、マッカートニー本人についても「アルノー氏のお飾り」と懸念されていることに対して真っ向から否定した。

今年3月のランウェイショーの前夜、マッカートニーはパリ協定の合意を成し遂げたクリスティアナ・フィゲレス(Christiana Figueres)前国連気候変動枠組条約事務局長を招きファッション業界の有力者達との交流会を企画した。「愚か者だと言われるかも知れないけど、自分が正しいと願っている」と開催に向けての気持ちを語った。

「変化を起こすことができると信じています。新しいビジネスの進め方を業界に示していけるはず」。マッカートニーは強い意気込みをあらわにした。

「私はあきらめない」I

「ファッションの未来像をLVMHに指し示すためには、まず私自身のビジネスが健全でなければなりません。そして私のビジネスが健全であれば、彼らは黙って私を無視することはできないと考えています」とマッカートニーは続ける。

マッカートニーによると、彼女がデザインしたサステナブルな製品をLVMHの経営陣 に見せたところ、彼らは動物を傷つけ環境負荷の高い他のブランドの製品と比較し、「同じクオリティに見える」とその質の高さに驚いていたという。

一方でマッカートニーは昨年フランスで開催された7カ国首脳会議(G7サミット)でファッション業界の環境負荷低減を目的とした「ファッションパクト(協定)」にLVMHが署名をせず、ライバルのケリング(Kering)に勝ち越されたことについてLVMHを弁護しないとしている。

「ディオール(Dior)」「ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)」「ジバンシイ(Givenchy)」などのブランドを要する LVMHに対しては、昨年まで「ステラ・マッカートニー」の半数の株を所有していたケリングに遅れをとっているとの見方が強い。そのためアルノー会長が「ステラ・マッカートニー」の株を取得したことで“サステナブルで環境保全に積極的に取り組むブランドへ投資している”という非常に前向きなメッセージを今回のショー前夜の交流会を通じて発信できるのではないかと考えている。

アルノー会長もマッカートニーのこうした取り組みを全面的に支持している。「私の役割はアルノー会長の個人的なサステナビリティ・アドバイザー。自分の仕事に強い情熱を感じており、あきらめたりはしません。どんなことが可能か見極めていきたいし、何らかの成果を出すという意思があります」と彼女は主張する。

マッカートニーは昨今、上品でファッション性の高い服を倫理的な方法で生産したり、動物の皮革や毛皮の代替素材として再生ウールや植物由来の新素材を積極的に使用したりするなどそのサステナビリティを推進する手腕が高く評価されている。

今回のパリ・ファッションウィークでは気候変動危機に関するメッセージが様々なシーンで見られた。LVMH グループの「ディオール」も“Patriarchy = CO2(家長政治=CO2)”や “Patriarchy = climate emergency(家長政治=環境危機)”と書かれたネオンサインを施した花飾りがショーの装飾として登場した。ブランドの“長”にとっては見心地の悪いメッセージであったかもしれない。(AFP)

写真: Stella McCartney AW20/21, Catwalkpictures