LVMHがヴァージル・アブローの「オフ-ホワイト」の過半数の株式を取得へ
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デザイナーのヴァージル・アブローが創設したブランド「オフ-ホワイト(Off-White LLC)」が、LVMHの傘下に入る。LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)は火曜、「オフ-ホワイト」の60%の株式を取得することを発表した。なお、「オフ-ホワイト」のライセンスを保有するミラノのニューガーズグループ(New Guards Group)は事業パートナーを継続する。
また、アブロー自身も、引き続きクリエイティブディレクターに留まり、すでにLVMHと契約中である「ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)」メンズウェアのアーティスティックディレクターの任務と兼務していく。
取引条件の詳細は公開されていないが、両社は今後高級ストリートファッション分野で新規ブランドの立ち上げを検討していくという。また「オフ-ストリート」は今後、雑貨や美容、香水などのカテゴリにも進出するとの予想もあり、成長ポテンシャルが大きいと見られる。
アブローは『ニューヨーク・タイムズ』のインタビューに答え、LVMHで今よりもさらに大きな役割を担うことで、同グループのブランド群に多様性を取り入れるとの考えを主張した。「議決権をもらえるようになる」とアブローは発言している。
また、「ルイ・ヴィトン」のマイケル・バーク(Michael Burke)代表取締役会長はアブローの新たな役職について、「既存のモデルを真似しようというのではない」と『ニューヨーク・タイムズ』に回答。「言ってみれば、(LVMHのCEO)ベルナール・アルノーが“ディオール(Dior)”を買収しラグジュアリーブランドの連合体を作ろうとした時のようだ」と説明している。
インクルーシビティ実現に向け前進
ダイバーシティ推進を掲げるLVMHだが、その取締役や執行役は全員白人で構成されている。2018年にアブローを「ルイ・ヴィトン」のメンズウェアにアーティスティックディレクターに指名した際には、歴史上初めてフランスの高級ブランドのトップデザイナーに黒人デザイナーが登場し、話題となった。しかし英『フィナンシャル・タイムズ』が欧州の1万5千社に勤める従業員10万人以上を対象に行った最もインクルーシブな欧州企業ランキング2020年版では、「ルイ・ヴィトン」は16位であったのに対し、LVMHは上位850位にも入らなかった。
LVMHでは買収ラッシュ
LVMHは先週も元「セリーヌ(CELINE)」のデザイナー、フィービー・ファイロ(Phoebe Philo)が新しく立ち上げるブランドの株式20%取得の計画に加え、LVMH系の投資会社Lキャタルトン(L CATTERTON)も「エトロ(ETRO)」の株式を過半数取得すると発表し、買収案件が続いている。L キャタルトンは4月にもドイツの「ビルケンシュトック(Birkenstock)を買収しており、さらにこの6月にはLVMHが7億5千万ユーロを出資し数年の歳月をかけて行われたパリの高級百貨店「サマリテーヌ(Samaritaine)」の大改修工事が終了し、鳴り物入りでリニューアルオープンを迎えた。LVMHは歴史的に傘下のブランドでクリエイティブのトップを務めたデザイナー(元「ルイ・ヴィトン」のマーク・ジェイコブス、元「ディオール」のジョン・ガリアーノ、元「ロエベ」のJW アンダーソンなど)が立ち上げたブランドの株式を取得している。
「オフ-ホワイト」、評価基準は“妥当性”
一方、これまで他のデザイナーによるデザインのコピーに悩まされてきた「オフ-ホワイト」。アブローはオンラインメディア『032c』でこの問題に触れ、「ポストモダンのファッション業界の慣習では、元祖であることはまったく重要でない」と意見を述べている。彼は上述の『ニューヨーク・タイムズ』のインタビューでも「世の中にとって妥当性があるかどうかが僕の評価基準」と話し、同様の主張を繰り返した。
画像: Off-White