「パタゴニア」創業者がNPOに株式を譲渡、気候変動危機との闘い支援
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億万長者として知られる米の大手アウトドアブランド「パタゴニア(PATAGONIA)」の創業者イヴォン・シュイナード(Yvon Chouinard)氏が気候変動危機と闘うため、自社株式を譲渡するというファッション業界の新たな環境対策の事例を示した。
「パタゴニア」の年間利益は1億ドルと推定されている。シュイナード氏はこの利益を株式公開や事業への再投資ではなく、公益信託に譲り渡したのだ。
同氏は顧客に宛てた手紙の中で、「地球が私達の唯一の株主」とコメントしている。さらに、「環境危機への取り組みにベストを尽くしてきたが十分ではなかった。私たちはパタゴニアの価値観を維持しつつ、この危機と闘うためにより多くの資金を投入する方法を見つける必要があった」と説明している。
具体的には、「パタゴニア」は同社の無議決権株式の100%(全株式の約98%)を自然環境や生物多様性保全に取り組む非営利団体「ホールドファースト・コレクティブ(Holdfast Collective)」に譲渡した。
一方、全社株式の2%に値する議決権付株式の100%については、創業者一族率いる「パタゴニア・パーパス・トラスト(Patagonia Purpose Trust)」が所有する。
今後は「パタゴニア」が毎年生み出す利益のうち、事業に再投資を行った後の剰余利益を配当金として株主に分配し、環境問題対策の支援を行っていく。
「パタゴニア」創業者、NPOに株式譲渡へ
「私たちが責任ある事業という試みを始めてから約50年になり、それはまだ始まったばかりだ」とシュイナード氏は言う。
また、「50年後も地球や事業が繁栄していることを望むのならば、私たち全員が今ある資源でできることを行う必要がある。自分たちの役割として見つけたのが今回の手段だ」と続けている。
1973年創業の「パタゴニア」は、ここ数年ファッション業界における環境問題への取り組みで話題となっている。
そうした取り組みの一つとして展開する、経営者に年間売上の1%を環境団体に寄付することを呼びかけるスキーム「1パーセント・フォー・ザ・プラネット(1 percent for the Planet)」では、米カリフォルニア州に本拠を置くヴェンチュラ社(The Ventura)などが毎年1%を同スキームに寄付し、環境保全や回復を支援する。株式譲渡により体制が変わっても同スキームは継続されるという。
環境への悪影響が懸念されるファッション業界で企業に口先だけでなく実質的な努力が求められるなか、今回の「パタゴニア」のユニークな決断は新たな指針となった。
シュイナード氏は「パタゴニア」は今後も営利企業として事業を続け、同氏の家族は引き続き取締役会に残るとしている。
現在の「パタゴニア」の評価額は約30億米ドル(4300億円)と推定されている。