「ステラ マッカートニー」、キノコ菌由来の生地を使った服を披露
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英国のファッションブランド「ステラ マッカトニー(Stella McCartney)」が同社初となる植物性原料とするサステナブルなビーガン・レザー「Mylo(マイロ)」を使った服を披露した。「Mylo」は米カリフォルニア州に本拠を置くボルト・スレッズ(Bolt Threads)社が、土の中で永久に再生可能なキノコの根の菌糸体をもとに開発した。
今回披露されたのは黒のビスチェ&ユーティリティパンツ。いずれも ナイロンのスキューバダイビング用ウェアを再生した素材の上に「Mylo」を重ねた服地を使い、ロンドンのアトリエの職人が手仕事で仕立て上げた。
スポーティーなスタイルは「ステラ マッカトニー」の2021年春夏および秋冬コレクションの特徴であるフェミニンで男性的なアティテュードを表現したもの。「Mylo」を使ったのは今回が初で、アイテムは販売用ではないが、将来的にはコレクションでも同素材を取り入れていく予定だという。
デザイナーのステラ・マッカートニーは「ステラのコミュニティでは、“サステナビリティのためにラグジュアリーの追求を妥協する”ということはあってはならず、“Mylo”は両者の両立を実現してくれた」とのコメントを発表している。「希少でエクスクルーシブな新アイテムは、ファッション産業を生き物や地球の死を起こす産業から、美しく贅沢な素材をつくり出す優しい産業へと変革させるというボルト・スレッズとの共通のコミットメントを具現化したものだ」と同氏は加えている。
「ステラ マッカトニー」がボルト・スレッズ社とのコラボにより、サステナブルなビーガン・レザーを使ったアイテムを制作
ボルト・スレッズ社のダン・ウィドマイヤー(Dan Widmaier)CEO兼創設者は「ステラ マッカトニー」が新しく披露したアイテムについて「新しい高品質な生物由来素材の開発は大きな技術的挑戦であり、人々と地球にとって大きな機会。ステラと彼女のチームが当社との長期的なパートナーシップを結び、“Mylo”を世界に届けることを支援してくれたことを、大変感謝するとともに恐縮に思う 」と述べた。
また「今回発表された2つのアイテムで”Mylo”が使用されたことは、生物由来素材の美と性能の両方の面で大変大きな一歩であったと同時に、“Mylo”の実用化の開始を告げるものとなった。“Mylo”の大規模製造を通して地球に大きな良い変化をもたらすという道のりに向けた具体的な進歩である」との発言を発表している。
ビーガン・レザー「Mylo」の大規模生産をにらむボルト・スレッド社
「Mylo」は完全にクルエルティ・フリー(動物実験など動物を傷つける行為のない製造工程)で作られており、製造工程においても環境負荷を低減するような製品設計となっている。柔らかく丈夫で、今日自然界に存在する再生可能な原料を主成分に作られた生物由来のサステナブル素材に与えられる公的な認証を取得している。原料となっている菌糸体は再生力を持ち、自然の中で有機物を栄養分に増殖する。
天然レザーの製造過程で消費される水は1キロあたり1万7千リットルと言われている。また畜産業により排出される温室効果ガスの排出量は地球全体の排出量の約18%を占めるとされており、貴重な生態系への影響が懸念されている。
ボルト・スレッズ社によると「Mylo」は合成皮革と違い石油を使っていないため、化石燃料の保存につながるだけでなく、埋め立てられたり海洋に流出したりするプラスチックごみの量を削減できるという。
「ステラ マッカートニー」はボルト・スレッズ社と2017年に初めてパートナーシップを締結し、「Mylo」の誕生から製品化に携わってきた。「Mylo」製品化第一号となったのは、「ステラ マッカトニー」のシグネチャーである「ファラフェル・バッグ」の試作品で、2018年にロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート (V&A) 博物館で開催された「Fashioned from Nature (自然から生まれたファッション)」展に出展された。
画像: courtesy of Stella McCartney