「サステナブル」な選択肢としてのデジタルファッション
loading...
デジタルファッションと聞くと、何を思い浮かべるだろうか? AR(拡張現実)フィルタやアバター向けの服、ゲームのスキン(着せ替えアイテム)。これらはすべて、デジタルファッションであり、よりサステナブルで倫理的なファッション業界への切り札として注目されている。そのメリットは、生地の廃棄量削減といった生産面のみに止まらない。デジタルファッションはサステナブルな手法を用いることで、その制作から消費者の手に届くまで、従来型のファッションよりも優れたビジネスモデルを構築することができるのだ。
サーキュラーファッションのシステムとは何か?
「サーキュラー(循環型)ファッションのシステムとは、本質的にはゴミを出さないということ。そして、その実現のために、すでにこの世に存在する資源を使い、新たな素材を使ったり作ったりする必要のないシステム」。デジタルファッションのプラットフォームを運営するLablacoが主催するVR(仮想現実)ファッションのイベント「Circular Fashion Summit by Lablaco」における「Impact Design」および「Innovation」セッションを管轄するAlexia Planas Lee は、サーキュラーファッションについてそう説明する。
Leeはまた、サーキュラーファッションの実践について次のように解説している。「衣料品のライフサイクルでは、「原料調達」「加工」「消費」3つの工程においてサーキュラーファッションに向けた対策ができる。デジタルファッションは、「原料調達」部分でのサステナビリティの改善に貢献できる。デジタルファッションを手がける企業の中には優れた素材の描写技術を持っているところがあり、現物のサンプルの発送が不要になる。ブランドやデザイナーごとに取り寄せられる素材のサンプルは、最終的に廃棄物となる」。
さらにLeeは衣料品の追跡可能性についてもこう指摘する。「IoTなどの技術により、衣料品はエンド・ツー・エンドでの追跡が可能となった。これにより、消費者も衣類が生まれてからどこへ向かうのかという道のりを知ることができ、ブランドにとってはその工程をたどることができる。例えばLablacoとH&Mがドイツ国内で立ち上げたIoTによる服のレンタルシステムがある。このシステムでは、消費者の手に渡ってからも商品の追跡ができる仕組み。レンタル自体がデジタル化されているだけでなく、服の循環を回すことにも役立っている」とLeeは加える。
一方、メタバースを運営するDigital VillageのCEO兼共同創設者、Evelyn Moraによると、サステナビリティの実現においてデジタルファッションは大きなポテンシャルを秘めているという。「我々はデジタルファッションを壮大な地球規模で捉え、いかにデジタルファッションが現実社会の衣料品業界を変えられるかを考えなければならない。8千億米ドル規模の衣料品業界をデジタルファッションが置き換えることは想像できない。しかし、デジタルファッションがファッション消費や我々と服との関係性、ファッションを通じた我々の自己表現のあり方に影響を及ぼすことはあるだろう」。
さらにMoraは、「事実として、これまでのデジタルファッショの影響は大きくなく、サステナビリティファッションにおける効果もまだ小さい。しかし今後大きくなっていくかという意味では、もちろん期待できる。壮大な長期にわたる計画にはなるが、もう取り掛かり始めている」と話している。