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オートクチュールコレクションに今、何が起きているのか?

By Kristopher Fraser

2022年9月5日

ファッション

Juana Martín FW22 Haute Couture París

かつて世界のファッションの頂点といわれたオートクチュール。夢と美を売るファッションの世界にあって、パリのクチュリエ達はクライアントのための1着を仕立てた。クリスチャン・ディオールやココ・シャネルらが伝説のデザイナーとして名を馳せることとなったのも、オートクチュールコレクションのおかげだろう。

時を経て、プレタポルテと呼ばれる既製服が登場し、オートクチュールコレクションの数が減った。「バーニーズ」「サックス・フィフス・アヴェニュー」「バーグドルフ」などのニューヨークの高級デパートが実際に着用できるようになるまで1シーズン待たなくてはならないカスタムメイドのオートクチュールよりもヨーロッパのブランドのプレタポルテを扱うようになると、その場で購入できるという手軽さから消費者の間で人気となった。

新世代のオートクチュールコレクションが誕生

そもそも、オートクチュールコレクションとは何か?オートクチュールは実は1945年に登録された法的な保護が認められた用語で、フランスオートクチュール・プレタポルテ連合会(Federation de la Haute Couture et de la Mode以下、サンディカ)に加盟するデザイナーのみがオートクチュールのブランドと名乗ることができる。ブランドがサンディカによってオートクチュールのデザイナーの資格を与えられるには、最低15人以上のスタッフが常勤するアトリエでオートクチュールを製造し、20人以上の常勤の技術スタッフを雇っていなければならない。加えて、一コレクションにつきイブニング向けの服を含めて最低50点のオリジナルデザインを発表するとともに、個人客向けに一点あたり一度以上のフィッティングを行って仕立てることなどの条件もある。

1950年には世界で約20,000人のオートクチュールの顧客がいたが、現在では4,000人に減っている。それでもなお、パリのクチュール・ウィークはファッションウィークの中で最も重要なイベントであることは変わりない。そんなオートクチュールが最近復活を遂げようとしている。しかも、大々的にだ。

「エリー サーブ(ELIE SAAB)」では、クチュールコレクションが売上の45%を占めいるという。オートクチュールの価格は1着あたり平均5万〜30万米ドル(680万円〜4100万円)。デザイナーのカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)は過去に毛皮を使ったオートクチュール・コレクション「オートフリュール(HAUTE FOURRURE)」を発表し、その商品はなんと1点あたり80万米ドル(1億9百万円)以上だったと噂される。結局、現在のところオートクチュールの市場は全体で5億万米ドル(683億円)で、プレタポルテや化粧品に比べて小さいにしても、儲かる規模である。

こうした潜在的市場に惹かれ、1968年にそれまで長く運営してきたクチュールサロンを閉鎖した「バレンシアガ(BALENCIAGA)」は、最近デムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)クリエイティブディレクターがクチュールコレクションを復活させた。創業者のクリストバル・バレンシアガ(Cristobal Balenciaga)以来誰もクチュールをデザインしたことのないメゾンでクチュールを再び蘇らせたデムナは、ファッションの歴史に深く名を刻むこととなった。それでなくても、デムナは「バレンシアガ」に新しい時代の革命を起こし、親会社ケリング(Kering)の傘下ブランドで「グッチ(GUCCI)」に次ぐ高利益のブランドに成長させたことで評価を得ている。

破壊されたスニーカーからレザーのごみ袋まで、デムナの作品は分かりにくく、賛否が分かれるとの意見も多いが、彼は消費者心理を非常によく心得ている。売り切れ続出の「バレンシアガ」で、デムナがクチュールへの回帰を図る必要があると考えるなら、そのこと自体がその市場がまだ強いというサインなのだ。

ファッションの未来予測は決して簡単ではないが、消費者の購買行動の流行が驚くほど繰り返されている現状で、オートクチュールは今、安定したポジショニングを築いている。「バレンシアガ」をはじめとするブランドにより若い世代での関心が高まり、この先もオートクチュール人気は続くものと見込まれる。

オートクチュール
パリ・クチュールウィーク