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オートクチュールのショー、より創造性に

By Don-Alvin Adegeest

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ファッション

Image: Victor & Rolf haute couture SS23 via Spotlight Launchmetrics

オートクチュールのファッションショーといえば、ついこの間までブティックを会場に裕福なクライアントを招待して新作を披露するものだった。しかし、そんな控え目で上品な非公開の限定イベントは昔の話。プレタポルテ同様に、オートクチュールのメゾンも精巧なセットにハリウッドのセレブリティーなど、ファッション関係者の関心を惹こうと争い合っている。その狙いはどこにあるのか。もちろん販売促進は当然だが、おそらくソーシャルメディアのフィードに紛れてしまったデザイナーやメゾンの継続的な話題づくりという目論見もありそうだ。

こうした新たなトレンドが生まれつつ中、今シーズンのオートクチュールの勝者は、ダンテにインスピレーションを得たコレクションを発表した「スキャパレリ(SCHIAPARELLI)」。ゲストのラッパー、ドージャ・キャット(Doja Cat)が、完成までに5時間かかったという全身を3万個のルビー・クリスタルと赤のボディーペイントで覆った「Doja’s Inferno(ドージャのインフェルノ)」と題したルックスで訪れ、華やかになった(またはやりすぎた)にフロントロウに注目が集まった。さらに隣りには、ショーでも登場した、いまとなってはタブーとさえ思われる作りもののライオンの頭が付いたセクシーなドレスを着たカーダシアン一族のカイリー・ジェンナー(Kylie Jenner)が座り、賛否を呼んだ。そのセンセーショナルな見た目は、デザイナーのダニエル・ローズベリーの新作よりも話題をさらった。

Image: Schiaparelli haute couture SS23 via Spotlight Launchmetrics

一方、大規模で複雑なセット・デザインが話題となったのが「ディオール(DIOR)」と「シャネル(CHANEL)」。「スキャパレリ」同様に動物をテーマにした「シャネル」は、ココ・シャネル(Coco Chanel)のパリのアパルトマンにある動物のオブジェに着想を得て、芸術作家のグザヴィエ・ヴェイヤン(Xavier Veilhan)氏が制作した動物を模った巨大な木製の彫刻をステージの装飾に使った。

Image: Chanel haute couture SS23 via Spotlight Launchmetrics

2017年のヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展にも出展しているヴェイヤンは、ヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)アーティスティックディレクターから「ガブリエル(ココ)・シャネルのアパルトマンと彼女の部屋の動物の飾りをヒントに、なにか作ってもらえないだろうか」と依頼されたとしている。(Artnet) かつて、ココ・シャネルのアパルトマンは、「シャネル」のパリのブティックとアトリエの螺旋階段を登った上にあった。

Image: Dior haute couture SS23 via Dior Press

また「ディオール(DIOR)」のジャズ全盛期の1920年代をテーマにしたショーでは、アーティストのミカリーン・トーマス(Mickalene Thomas)氏によるアフリカ系アメリカ人歌手のジョセフィン・ベイカーの巨大な肖像画のバックパネルが舞台を飾った。パネルにはほかにもドニエル・ルナ(Donyale Luna)、アーサー・キット(Eartha Kitt)、ナオミ・シムズ(Naomi Sims)などが描かれ、偉業を残した黒人女性を称える内容であった。「(パネルに描かれた)女性たちは全員社会で活躍し、ステージや声、演技を通して自身の生き様や、自分たちと同じような境遇の人たちの物語を精力的に人々に訴えた」。ロイター通信の取材に答えたトーマス氏はそう話した。

Image: Armani Privé haute couture SS23 via Spotlight Launchmetrics

深い印象を残す服には、着る喜びや上質な仕立てが光るが、その美しい装いを作り上げるためには、骨の折れるような職人たちの技が求められる。今シーズン、ハイダー・アッカーマン(Haider Ackermann)をゲストデザイナーに迎えた「ジャンポール・ゴルチエ(JEAN PAUL GAULTIER)」は、鳥の羽根をあしらったチュールのリップルを装飾したイブニングジャケット、ビスチェを縫い付けたエレガントなパンツスーツなど、彼の秀逸なテイラーリングが光った。その優れた技術は、一部の評論家から今クチュールシーズン一と称される。一方、「ディオール」は服を作る生地に着目。新作のベルベットよりも薄くて軽いバスローブは、生地にキルティングや裂け加工を施した。

Image: Jean-Paul Gaultier haute couture SS23 via Spotlight Launchmetrics
Image: Jean-Paul Gaultier haute couture SS23 via Spotlight Launchmetrics

「ジャンバティスタ ヴァリ(GIAMBATTISTA VALLI)」と「ヴィクター&ロルフ(VIKTOR&ROLF)」からは、チュールやダッチェスシルク、シンデレラのようなサテン使ったお姫様ドレスがお目見え。泡のようにふんわりとしたフォルムが特徴の「ジャンバティスタ ヴァリ」のドレスは、常連客がつくほど人気に。アバンギャルドなデザインで知られるオランダ人デザイナー・デュオの「ヴィクター&ロルフ」は、二人の得意分野である“逆さまアート”をドレスに取り入れ、上下逆になったドレスを発表。重力に逆らい、従来の服を芸術作品へと作り変えた。

Image: Victor & Rolf haute couture SS23 via Spotlight Launchmetrics

もちろんオートクチュールなので、服として着られるものだ。

2023年春夏
ARMANI PRIVE
Chanel
Dior
GIAMBATTISTAVALLI
Jean Paul Gaultier
Schiaparelli
SS23
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クチュール
シャネル
ジャンバティスタ ヴァリ
ジャンポール・ゴルチエ
スキャパレリ
ディオール
ハイダー・アッカーマン
ヴィクター&ロルフ