まるでハリウッド映画〜ファレル初の「ルイ・ヴィトン」メンズ・ショー

待ち望まれたファレル・ウィリアムス（Pharrell Williams）によるデビュー作「ルイ・ヴィトン（LOUIS VUITTON）」2024年春夏メンズコレクションのショーがこのほど、開催された。

ファレルは今年、「ルイ・ヴィトン」のメンズ・クリエイティブ・ディレクターに就任したばかり。20日、ヨットでパリ・オルセー河岸に降り立ったゲスト達は、LVMHが所有し「ルイ・ヴィトン」本社が入る百貨店「ラ・サマリテーヌ（La Samaritaine）」を眺めるポンヌフ橋の上に現れた一面金色に輝く会場に迎え入れられた。

セーヌ川にかかる公共の橋を貸し切り、観客席の椅子からプレスキットにいたるまでゴールド一色に染めった「out of this world（この世界から）」と銘打ったファッションショーを開催するという一大イベントは、「ルイ・ヴィトン」以外に実現できるメゾンがあるだろうか。100点を超える最新デザインが披露されたショーのフロント・ロウには、リアーナやビヨンセ、ナオミ・キャンベル、キム・カーダシアン、ゼンデイヤのほか、アーティストの村上隆、JJ リン、ソン・ジュンギなど豪華な顔ぶれが並ぶ。

会場をはじめ、ショーのさまざまな部分で用いられたゴールドの色合いは、太陽を表現しているという。「ルイ・ヴィトン」はプレスリリースで、ファレルにとって太陽は「生命の普遍的な源であり、文化や信条を超えて人々を勇気づけ、癒し、団結させる輝きを放つ光の象徴である」と説明している。

“ダミエ”とカモフラージュ柄が融合した「ダモフラージュ」も登場

新作コレクションのルックスは、「ルイ・ヴィトン」の従来のスタイルを踏襲しつつ、アーティストのET Artistが作成した「Atari Damier 8-bit」パターンを使って「ダミエ」のモチーフをモザイクに見立ててデジタルな雰囲気にアレンジするなど、ファレルのラップのタッチも感じられた。写真に映った人物の顔を隠すという目的で使われるモザイクがカモフラージュ柄（迷彩柄）と出会った「ダモフラージュ」が、カラフルな風景画やプリント、ジャカード織になって、コートやジャケット、パジャマ、シャツになって登場。加えて、「ルイ・ヴィトン」フラワー模様のレイザーカットの入ったコートやバッグもお目見えした。

隠して、見せる—–。このパラドックスこそが、フランスの巨大ラグジュアリー・メゾンにおけるクリエイティブの頂点に立ったアーティスト出身のファレルがデビュー作で追求した主題だった。一方、当初は「多方面で名を馳せるセレブリティでも、厳密には“クチュリエ”ではない」との批判もあった彼の初コレクションでは、商品化が難しいものや、ここでは書ききれないほど特異なデザインも多数あった。

しかしながら、ショーに対する話題は、ファレルのLVMHでの存続を物語っている。

なお、ショーの終わりには観客にこれまたゴールドのブランケットが配布されたほか、同じくポンヌフで開かれたアフターパーティーでは、アーティストのJay-Zとファレルによるライブパフォーマンスも披露された。