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2020年ファッション業界の課題トップ10

By Jaime Martinez

2020年1月21日

"不安""苦悩"。 ファッション業界やそのリーダー達の2020年を予想する言葉はこの二言に尽きるのではないか。2019年には米国を中心に様々なセクターで楽観的な兆しが見え始めていたが、事態はまた元のコマに戻りつつある。

こうした状況が大手コンサルティング会社マッキンゼー(McKinsey )と仏ファッションメディア『ビジネス・オブ・ファッション(Business of Fashion, 以下BoF)』が業界のエグゼクティブやオピニオンリーダー約290人を対象とした調査の結果をもとに作成した最新業界レポート『ザ・ステイト・オブ・ファッション2020(The State of Fashion 2020、以下、レポート)』で明らかになった今年の業界の基本的な見通しである。レポートによると、ファッション関連の主要企業は業績の不安や停滞を予期しており、事態を見越した役員達はすでに対策に入っているという。そう結論づけるのはまだ時期尚早ではないかとの見方も多いにあるが、マッキンゼーによると業界全体で3〜4%の落ち込みが予想されるとのこと。こうした背景には経済全体の不透明感や貿易戦争、アジア太平洋地域の新興国における売上の減少に加え、欧州で浸透し始めている景気に対する悲壮感があるという。

大企業の影響力が増強

事態は憂慮すべき状況であるが、もちろんすべてネガティブな要素しかないというわけではない。欧州・ラテンアメリカ・中東・アフリカ地域の新興市場では2020年も引き続き安定的な成長が見込まれる。またイノベーションやサステナビリティといった今日の消費者のニーズに対応する余力のある大企業や多国籍企業がシェアを拡大する「市場集中」がさらに進んでいくとされる。

「中規模企業と力のある大企業との競争はますます厳しくなる。」 マッキンゼーのファッション&ラグジュアリー部門ディレクターでレポート著者の一人、アヒム・ベルグ(Achim Berg)氏はこう語った。同氏は「ブランドがデジタル化や消費者需要、サステナビリティなどといった取り組みを行うには事業の集中と戦略推進のための設備投資が必要になる。これを実現できる企業が2020年は有望になる」との見解を述べている。

また共著者のイムラン・アーメド(Imran Amed)BoF創設者兼編集長は今年について“厳しい一年になるだろう”と指摘。企業はバリューチェーンをはじめとし、様々な部分で大きな変革が求められるとともに、不透明な状況下でリスクを軽減し企業を運営し続けていかなければならないためだ。

こうした懸念や競争の現状を踏まえ、レポートでは2020年にファッション企業が取り組むべき主要な課題やトピックス10項目をまとめている。無敵と言われた大企業でさえも次々と打破するこの苦難の時代に生き残りをかけて切磋琢磨する企業に対する提言として本誌で紹介したい。

1. 厳戒態勢を取る

一つ目の提言は「厳戒態勢を取ること」。ファッション企業は先進国と新興市場との間に起こりうる摩擦について注視することが求められる。景気後退リスクが上昇する中、過去にも多くの企業がマクロ経済や地政学的情勢不安、貿易摩擦を受け、業績回復やリスク対応策の検討に追い込まれた。当時の状況を思い出し、そのような事態に向け状況を見極めることが重要だ。

2. “中国の先”の市場へ

中国は今年もファッション業界の飛躍的成長に貢献するであろうことに変わりない。しかし巨大な中国市場はグローバルブランドの予想をはるかに超え、一層複雑化が進んでいる。すでに多くの企業が中国に依存、または参入を図ろうとしているが、リスク分散として他の成長市場への進出も検討すべきである。

3. 新世代の消費者の取り込み

従来のプラットフォームやソーシャルメディアでは顧客の取り込みや維持が難しい現状で、ファッション企業は今後戦略の見直しや販促費の費用対効果の最大化に向けた新しい施策の検討を余儀なくされる。新規企画の検討にあたっては、顧客に対し最大の訴求効果のあるコンテンツの模索がキーとなる。コンテンツを提供するプラットフォームや訴求対象を考慮した上で、ダイレクトリンクを活用し出来るだけ商品の購入につなげられるようすることがポイントだ。

4. 地域密着の店舗展開

即時性を求める今日の消費者のニーズに応えるべく、多くの企業がその販売流通活動を小規模な実店舗ベースで完結させる流れになってきている。こうした動きは製品をより消費者にとって身近にするだけでなく、成功すれば店舗での顧客体験と主要販路以外の郊外・地域でのプロモーションとの相乗効果が期待できる。

5. サステナビリティの追求強化

ファッション業界は最も環境汚染を促している産業の一つで、エネルギーや原料の消費量も高い。それ故に、従来から微細な改善が図られているものの、2020年は広告宣伝活動を抑え、現代の消費者の期待を上回る重大なアクションを取ることが求められる。そうすることで新しい持続可能なビジネスモデル確立のために必要な業界の大きな転換に向けた決定打につながる。

6. 新素材の開発

年々多くの企業が従来の素材に変わる新しいサステナブル素材や高機能素材の開発に乗り出している。こうした動きは2020年も継続し、企業各社から画期的な新素材開発のニュースが発表されるのではとの予測も出ている。

7. インクルーシブ文化の促進

かねてから消費者はファッション企業に対しダイバーシティ(多様性)やインクルージョン(社会的包摂)に積極的に取り組むことを期待しているが、この二つは2020年においてもファッション企業の社内組織や広告キャンペーン、コレクションなどで重要なテーマになっていくと思われる。こうした取り組みにより、企業の情報公開にも新たな需要が見込まれる。

8. 国際競争の進展

欧米のグローバルブランドを中心に、アジアは新規市場としてこれまで企業のバランスシートの“肥し”となってきた。しかし昨年来、その動きは鈍化しているばかりか、今年に入りさらに困難極まりつつある。アジア地域の企業は従来の製造業者としてのポジショニングから自社製品を直接最終顧客に販売する企業へと移行し始めようとしている。2020年にはグローバルブランドのサプライヤーを中心に、これまで無名だったアジア企業の多くが自社販売に参入すると見られ、ECサイトやグローバル市場で自社製品を低価格で販売していくと予想される。

9. 展示会の改革

時代の移り変わりを受け、廃止やリニューアルされてきた展示会。2020年も引き続き国際展示会は変化していくことが予想される。差別化や存続をかけ、消費者向け(BtoC)の施策や法人向け(BtoB)戦略に関連した新サービスなどの展開が期待される。

10. デジタル戦略の見直し

大型買収や実店舗ビジネスへの転身、評価額10億ドル超の“ユニコーン企業”の登場など、昨年デジタル企業が多大なる影響力を示したことは紛れもない。投資家は一部を除きすべてのデジタル企業に対しネガティブな印象を増しているという。したがって2020年には投資家の資金力や利益目標の移り変わりに起因し、新規企業の立ち上げは減少が見込まれる一方、デジタル企業の撤退も増える可能性がある。

本記事の原文はFashionUnited.ESに掲載されています。

写真クレジット: Unsplash.