「抗議」と「イデアリズム」:2020年春夏の5大トレンドを読み解く
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この先十年は不確実で複雑性の時代であるが、そこには無限の可能性も広がる。2021年の春夏シーズンを決めるのはそうした社会の緊張感であるとトレンド分析家のクリスティン・ボーランド(Christine Boland)氏はいう。同氏はファッション業界向けセミナーの企画運営を手がける「アップルタイザー(Appletizer)」が今週オランダ・アムステルダムで 開催したセミナーで登壇し、2021年春夏のトレンド詳細を解説した。
「これからの十年は方向性が二分する。世界は“権力誇示、排他的、格差、白黒思考”か“共感主義、創造性、夢”に向かっていくかの二択になっていく」とボーランド氏。彼女によれば、こうした曖昧さはデザインやライフスタイル、ブランド各社のランウェイショーに反映され、社会的批判やイデアリズムが重要なテーマとして扱われるようになるという。そこで今回、本誌が選んだ2021春夏シーズンを象徴する5大トレンドをぜひ紹介したい。
権力誇示
「バレンシアガ(Balenciaga)」が欧州議会をイメージして作ったセットで2020年春夏コレクションのショーを開催するなど、世界における権力関係はランウェイでも大きなテーマとして取り上げられている。各ブランドの2021年春夏の新作では肩部分を大きくしたジャケットや角ばったフォルムといった男性権力へのメッセージを意識したデザインに加え、実用性の高いユティリティーウェア、“ヨーロピアン・ブルー”と呼ばれる欧州旗の青の色彩や中立的な色調などが目立った。
抗議と反抗
政治に対する否定なメッセージがファッションでも顕在化し、デモや反対運動といった文化のエレメントが流行に。派手目の攻撃的な色やレインボーカラー、強調した文字やテープなど、これまでのファッションの常識を覆すようなインフルエンスと素材を挑発的にミックスするのが特徴。ボーランド氏の分析によると環境活動家のグレタ・トゥンベリ(Greta Thunberg)や英国の環境保護団体「エクステンション・ リベリオン(Extinction Rebellion)」がインスピレーションになっているという。
リユースの美
過剰消費や有り余る廃棄物、切迫した環境危機などの喫緊の課題への対応として廃棄物を利用した新しい上質な素材の開発が進んでいる。特に今後の新製品開発では再生プラスチックがキーな素材に。加えて、漁網の構造を用いた服やバッグ、溶けたプラスチックのような鮮明なカラーの大理石風の模様など、プラスチックの持つ色合いや形などヒントとした新しいテクスチャーやパターンも登場している。
自然との調和
「次の10年間の模範は母なる自然」。そう語るボーランド氏は2021年春夏シーズンの中心的コンセプトとして「自然との新たなつながり」を予測。典型的なものとしては郊外での暮らし、特に自給自足など自然との直接的なつながりへの憧れ(例えば米国のオーガニック農場をテーマにしたドキュメンタリー『The Biggest Little Farm (邦題:ビック・リトル・ファーム〜理想の暮らしの作り方)』の世界観)があるが、ファッションやデザインでは木や葺を使った天然素材、ティッキングストライプやレースなどを使用し表現されている。
溢れんばかりの花
自然愛とともに熱い注目を集めるのが“花”だ。「花はいつの時代にも定番デザイン。でも今シーズンは特にエキゾチックなフラワーパターンをはじめ、まるでアニマルプリントのような彫刻的な花柄や対照的なシンプルな草原の花のプリントがトレンドに。さらに歩く花畑をイメージさせる全身にフローラルプリントをあしらった服など、より新しい花の使い方が取り入れられている。
本翻訳記事の原文はFashionUnited.nlに掲載されています。 記事上部の画像: 「バーバリー」2020年春夏(同社提供)