2022年のイエール賞で際立つ、服飾素材の再解釈
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「第37回イエールフェスティバル(Hyeres Festival以下、イエール賞)」が国際繊維・服飾見本市「プルミエール・ヴィジョン(Première Vision)」と同時開催され、受賞作品を通じて新しいイノベーティブな服飾素材の使用が際立った。
次世代のファッショニスタたちは、将来サステナブルな服を作るために古着(使わなくなった余剰生地やアップサイクリングを含めて)を分別して再利用し続ける必要はない。こうした再利用の方法は、社会的にも環境面においても古くなりつつあるためだ。今回の「イエール賞」のファッションおよびファッションアクセサリー部門でグランプリやファイナリストに選ばれたデザイナーたちにとって、従来の意味でのサステナビリティはもはや選択肢にないのである。
たとえばファイナリストに選ばれたロラ・ソニー(Lora Sonney)にとって、使われなくなった商品に新たな価値をつけて再利用するというアップサイクリングは洋服のライフサイクルにおいての最後に用いられるべき手段だ。そんな彼女は廃棄される庭用の水やりホースから新たな生地を作り出した。ホースを切断し、加熱したあとひらたく伸ばして生地にし、バッグや帽子、ミニスカート、レインコートとして再生した。
一方、ボンデージやSMルックにインスピレーションを得たコレクションでファッション部門のグランプリおよび市民賞に選ばれたフィンランドのジェニー・ヒットネン(Jenny Hytönen)は、レザーに金属製の釘をつけたり、メッシュの生地にガラスのビーズを縫い込んだりと、生地や服の概念を再解釈。彼女について審査委員長を務めたグレン・マルタン(Glenn Martens)氏は、「ジェニー・ヒットネンは創造性やノウハウ、プレタポルテ、そして彼女自身の個性を組み合わせたコレクションをデザインした。彼女の作品にはすべてが揃っている」とコメントしている。
第37回イエール賞の受賞者は以下の通り。
<ファッション部門>
グランプリ(Grand Prix du Jury Première Vision)および市民賞(Audience Award 2022):
ジェニー・ヒットネン(Jenny Hytönen)
Le19Mメティエダール賞 (Prix le 19M des Métiers d'Art)およびメルセデス・ベンツ サステイナビリティ賞(Mercedes-Benz Sustainability Award): ヴァレンティン・レスナー(Valentin Lessner)
アトリエ デ マチエール賞(Prix l'Atelier des Matieres): シニ・サーヴァラ(Sini Saavala)
<ファッションアクセサリー部門>
グランプリ(Grand Prix du Jury Accessories):
ジョシュア・キャノンヌ(Joshua Cannone)
エルメス賞(Prix Hermès for Accessories)および市民賞(Audience Award): ローラ・モッシノ(Lola Mossimo)、インドラ・ユダリック(Indra Eudaric)
<写真部門>
グランプリ(Grand Prix Du Jury for Photography)および市民賞(Audience Award):
ララ・チョイ(Rala Choi)
審査員特別賞(Mention Speciale Du Jury Photographie): アデリーヌ・カレ(Adeline Care)
アメリカン・ビンテージ・フォトグラフィー賞(Prix de la Photographie American Vintage): カイロン・ズオン(Chiron Duong)