感覚的と実用性:2024-25年秋冬キッズウェアのトレンド
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2024〜25年秋冬シーズンに向け、キッズウェアは「視覚」「音」「匂い」「触感」「味」「印象」を通じて感受されるセンサリーな領域に突入している。ニューロダイバーシティ(Neurodiversity、神経多様性)への理解が進み多くの子供服デザイナーが体型や性別、人種、障がいの有無に関係なくあらゆる子どもたちが楽しめるインクルーシブなアダプティブデザイン(適応型設計)の未来を模索しはじめるなか、いまやキッズウェアの製品開発において子どもの肌に触れる生地の刺激や色が子どもに与える心理的影響の考慮は必須要件。それと同時に、社会的にも子どもの心と体の健康に対するアプローチが再び多面的に注目されるなか、キッズファッションもそのデザインコンセプトや意図が重視されている。デザインを通じてすべての子どもたちに最適な経験を提供するという共通目的が体現された、2024〜25年秋冬シーズンのキッズウェアの注目スタイルを紹介していく。
ニューロダイバーシティーへの配慮した「コクーン」
蝶になる日を夢見る幼虫が過ごす繭という意味を持つ「コクーン」デザイン。子どものためのファッションや家は、あらゆる面で肌に触れる素材の触り心地やカラーパレットの印象といった幅広い視点での配慮が必要となる。そうした意味で、「コクーン」デザインの中心にあるのは、禅にも似たその安らぎだ。「コクーン」はマインドフルネスやセルフケア、自己感情の健康的な表現方法をサポートし、人気が上昇している。思わず抱きしめたくなるようなフリースやダウンのパッドなどソフトな素材取り入れたルースなフィットの服は、安心感や落ち着きをもたらし、デリケートな子どもたちにも究極の着心地を提供する。最近のトレンドでもある多機能アパレルとしても汎用性が高く、中間色のカラーパレットで展開すれば季節を問わず重ね着しやすいうえ、ジェンダーインクルーシブにもなる。洋服のほか、肌触りのよい素材で足元を包み込むフットウェアは、アダプタブルなシルエットで楽に着用できる。さらに最近話題のフィジェットトイやストレス解消グッズのように、触って心地よいアクセサリーとして、癒しの効果も期待できる。
過酷な自然条件から身を守る、「Erupt」
「噴出」という意味の英語に由来する「Erupt(エラプト)」は、年々増していくUVカットや防水機能といったさまざまな自然条件から身を守る機能服への需要に対応するアプローチ。予測不能な気候の変化や危険な地形などを考慮し、高性能にもかかわらずアダプティブなデザインを全面に押し出している。意外性のある色づかいや模様、グラフィックが、未知なる土地の迷彩柄を作り出す。ディティールやパターンにも意図があり、地球やファンタジーの世界を彷彿とさせる。ファスナー式の袖やフード、脱着可能なレイヤー、片手で引けるドローストリングなど、季節に合わせて調節可能で子どもにも着やすい設計もポイント。ソフト・フリースやムートン裏地は着心地と温かさを兼ねそろえ、アクティブなアウトドアウェアのシルエットの上には、燃えたぎる火のような赤や黄色と、小峡谷を思わせるダークな黒や灰色とのコントラストが表現されている。アクセサリーやフットウェアも高機能で実用的なうえ、鮮やかな色のコンビネーションが優美な自然を思い起こさせる。