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世界の多様な製品に使用される色見本を提供するパントン(Panton)社。同社は2000年より「パントン・カラー・オブ・ザ・イヤー(Pantone Colour of the Year、以下「カラー・オブ・ザ・イヤー」)」を発表し、トレンド予想に加えファッション、エンターテイメント、旅行業界など社会経済・ライフスタイル・政治的影響の分析を通じ毎年その年の色を選定する取り組みを行なっている。
パントン社によると「カラー・オブ・ザ・イヤー」の選定には新たに登場したテクノロジーや素材、生地、SNS、そして時には世界的なスポーツイベントの影響までもが反映されると言う。
パントン社の一部門で「カラー・オブ・ザ・イヤー」の発表を行う「パントン・カラー・インスティテュート(Pantone Color Institute)」のローリー・プレスマン(Laurie Pressman)バイスプレジデントは2017年の取材で「“カラー・オブ・ザ・イヤー”はデザイン業界においてトレンド以上に多くのことを意味するようになってきている。それは今日世界で必要とされているものの象徴である」とコメントしている。
プレスマン氏はまた、「世界の人々がもっと色に魅了され、色の持つメッセージや意味を伝える力に気づき始める中、デザイナーやブランドはインスピレーションや影響を与えるため色を使うことができる権限を持っていることを実感すべき。“カラー・オブ・ザ・イヤー”はトレンドやデザインの世界に戦略的な方向性を与えるほんのひと時の出来事であり、デザイナーおよびブランドに着想や影響を与えるという“パントン・カラー・インスティテュート”の一年を通した取り組みを反映したものである」と加えている。
パントン社は2000年より毎年「ローズクオーツ」「トランキルブルー」「アーシーワインレッド」「ラディアント・オーキッド」などを“今年の色”として披露してきた。こうした色はグローバルに共感を得られるムードやアティテュードの表現形式として選定され、ファッション・家具・産業デザインをはじめ包装材料やグラフィックデザインなどの製品開発や購買決定に影響を与えている。
なお、通常「カラー・オブ・ザ・イヤー」には一色が選定されるが、2016年と2021年には二色が選定されている。
2000年〜2021年に選ばれた「カラー・オブ・ザ・イヤー」
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2000 – セルリアン(Cerulean)
2000年に発表された第一回目の「カラー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれたのは“ミレニアムの色”と称された青系の色「セルリアン」。穏やかな雲一つない日の空の色が内面の平和や精神的な満足感を想起させるとして選定された。
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2001 – フクシャローズ(Fuchsia Rose)
明るく、気持ちの良いフェミニンなピンク系の色。情熱的で力強く、刺激的。それでいて暖かさと愛らしさを備える。
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2002 – トゥルー・レッド(True Red)
「愛」や「力」「情熱」を思わせ、濃厚で意味深さを持つ鮮明な赤。
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2003 – アクアスカイ(Aqua Sky)
淡い青緑の色味。平穏さを感じさせ、柔らかく落ち着いた寒色系のカラー。
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2004 – タイガーリリー(Tigerlily)
2004年には大胆なカラーが復活し、「タイガーリリー」が「カラー・オブ・ザ・イヤー」に。身近な花にヒントを得た、赤と黄色の色味を合わせ持つ暖かみのあるオレンジは力や情熱、復活を想起させる。
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2005 - ブルーターコイズ(Blue Turquoise)
「カラー・オブ・ザ・イヤー」ではブルー系がよく登場するが、2005年に選ばれたのは静かで心が安らぐ海の青の色「ブルーターコイズ」。本来のターコイズよりも優しく、グリーンを控えたクールな青。
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2006 – サンドダラー(Sand Dollar)
2006年には経済への懸念から、「カラー・オブ・ザ・イヤー」の常連である明るい色とは対照的な中間色の「サンドダラー」が登場。気分を和らげ、落ち着かせながら、自然で有機的な流れに応える色として、砂漠や柔らかな砂浜をイメージする暖色系のカラーが選ばれた。
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2007 – チリペッパー(Chili Pepper)
エネルギーとインスピレーションの衝撃を与える濃いスパイシーな赤。その大胆で目を引く色合いは、ファッションや個性を表現する社交的で自信に満ちデザインを知り尽くしたアティテュードを暗示する。
「チリペッパー」の選定について「パントン・カラー・インスティチュート」のレアトリス・アイズマン(Leatrice Eisema)エグゼクティブディレクターは「危険や祝い事、愛、情熱などを表す赤は忘れ去られることのない色。“チリペッパー”は目も舌も喜ぶようなエギゾティックなテイストの象徴。冒険心を表す色として赤以上の色はない。また“チリペッパー”には自信や個性に訴えるものがある」と説明している。
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2008 – ブルーアイリス(Blue Iris)
青の持つ安定感や静寂さにパープルの神秘さ・スピリチュアルさを掛け合わせた色。ミステリアスで刺激的なタッチを加えながら複雑な世界で安心を求める思いを満たす。
2008年のカラーに選ばれた理由についてアイズマン氏は、「2008年のファッションやコスメ、家庭用品などの色使いの方向性を代表する色。時代の象徴である“ブルーアイリス”は、非常に信頼できる青と力強く内省的なパープルの色味によって引き出された色。ほんの少しの魔法で心がつなぎとめられるような、瞑想的な情緒を表している。深みのあるプラムや赤茶系のカラー、黄緑、葡萄色、グレーなどと組み合わせ芸術的な色使いを追求してほしい」としている。
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2009 – ミモザ(Mimosa)
経済的な不確実性や政治的変化の年に選ばれたのは暖かく魅力的な黄色系カラーの「ミモザ」。「オプティミズムを最も良く表現する色として、黄色以上に希望や安心感を表現できる色はない」(パントン社)との理由から選定された。またほかのどの色とも合わせやすく男女ともにアピール力があり、加えてファッションやインテリアにも取り入られるといった汎用性の高さも選定の決め手となった。
アイスマン氏によると「黄色は暖かく、私達を育む太陽の持つクオリティー、すなわち私達人間が安心を求め自然に惹きつけられていく太陽の魅力を強調する色。“ミモザ”は想像性やイノベーションを生み出す色であり、enlightenment (悟りの心)に訴えかける」と解説している。
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2010 – ターコイズ(Turquoise)
2005年の「ブルーターコイズ」同様、青の穏やかさと緑の爽快さを合わせた心を誘う輝かしい色。気持ちの和らぐ色合いの「ターコイズ」は海外では魔除けとして使われることもあり、「思いやり」や「癒し」の意味を持つとともに水と空を象徴し、信仰と真実の色とされている。
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2011 – ハニーサックル(Honeysuckle)
四季の色と表現される赤みを帯びたピンク系のカラー。人々を元気づけ、気分が高揚する色であることから2011年の色に選ばれた。自信や勇気、精神性を伝え、活力を授ける色合い。
「体にアドレナリンが走るような、心を虜にする刺激的な色」とアイズマン氏は表現している。
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2012 - タンジェリン・タンゴ(Tangerine Tango)
煌々とした夕焼けを思わせる、元気な赤みの強いオレンジ系のカラー。エネルギーを生み出し、前へ進むための活力をチャージする色。
アイズマン氏によると「洗練されていながら、ドラマチックで誘惑的な“タンジェリン・タンゴ”は非常に奥行きのあるオレンジ。生き生きとしてアドレナリンが駆け巡るような赤に黄色の親しみやすさや暖かみが加わり、一際目を引き熱やエネルギーを発散する磁石のような色合いを作り出している」と言う。
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2013 – エメラルド(Emerald)
ボールドなオレンジの後には、均衡と調和をもたらし心身の健やかさを高める、生き生きとして輝きに満ちたみずみずしいグリーン系の「エメラルド」が“年の色”に。華やかで希少な宝石の色は、複雑さや豪華さを醸し出す傍ら、「成長」や「繁栄」「癒し」「結束」を象徴する。(パントン社)
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2014 - ラディアント・オーキッド(Radiant Orchid)
フクシァ、パープル、ピンクが折り混ざり、うっとりするような旋律を描く「ラディアント・オーキッド」は自信を与え、偉大な喜びや愛、健やかさをもたらす色。肌の上で光を放ち、身に纏うことで男女問わず健康的な輝きをつくり出すローズ系の色味は「眩いばかりの視線を集める存在」(パントン社)で、ファッションアイテムでも人気のカラーとなった。
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2015 – マルサラ(Marsala)
自然の豊かな味わいや大地を感じさせるワインレッド系カラー。「心と体、魂を豊かにする、贅沢でカリスマ的な」(パントン社)色合いと称される。普遍的な魅力を持ち、「ファッション」「美容」「インテリア」のどれにも使える可能性を秘めていることから選定。
アイズマン氏は“マルサラ”について「アルコールの強いマルサラワインのように味わい深い色合いが食事を楽しんだ後のような心が満たされた豊かさを表現するとともに、どっしりとした赤茶色のベースが洗練された自然な素朴さを思い起こさせる」と語っている。
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2016 -ローズクォーツ、セレニティ(Rose Quartz and Serenity)
この年、パントン社は初めて「カラー・オブ・ザ・イヤー」に二色を選定。選ばれたのは暖かなローズ系の「ローズクォーツ」とクールなトランキルブルー系の「セレニティ」。二色のコンビネーションは心地よい秩序と平和の感覚をもたらす一方、ジェンダー・イクオリティ(男女格差の解消)やジェンダー・フルイディティ(性的流動性)を求める社会的な動きの高まりを受け、ジェンダーの境界線がない色合いとして選出された。
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2017 – グリーナリー(Greenery)
2016年アメリカ大統領選挙の翌年、世界的なムードを反映し新たな始まりを象徴する「すっきりとして新たな生命を吹き込む」(パントン社)緑系の「グリーナリー」が選出。フレッシュで柑橘物のようなみずみずしさを思わせる黄緑色の色合いはまるで草木が蘇り、回復し新たな芽を芽吹かせる早春の時期を思わせる。
「“グリーナリー”は2017をパッと花開かせ、複雑な社会・政治的背景の中で私達が渇望する希望を与えてくれる。復活や再生、結束に向けた私達の高まる欲求を満たす“グリーナリー”は私達の“自然や互いとのつながりを取り戻し、より大きな目的と再び結び付きたい”という願いを表現している」とアイズマン氏はコメントしている。
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2018 - ウルトラ・バイオレット(Ultra Violet)
「オリジナリティに富み、アイデア豊富で先を見通す考え方」を表現したという青紫系のカラー。デビット・ボウイ(David Bowie)、プリンス(Prince)、ジミー・ヘンドリックス(Jimi Hendrix)などの音楽アーティストをイメージさせる謎めいた色合いは、「カウンターカルチャーや型にとらわれない独創性、優れた芸術性の象徴」であるとパントン社は説明している。
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2019 – リビングコーラル(Living Coral)
エネルギーを与えるゴールドの色味に心浮き立つソフトなエッジを効かせた、元気が出る生命感にあふれたコーラルカラー。鮮やかなのに落ち着いた「リビングコーラル」についてパントン社は「デジタル・テクノロジーやソーシャルメディアの襲来への対抗」や「生まれ持った楽観主義や喜びの追求への欲望」を体現したものとしている。
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2020 - クラシック・ブルー(Classic Blue)
「普遍性と信頼」を持つブルー系カラー。新たな10年の始めとなる年に、「静寂」や「信頼」「つながり」をもたらし安心感を与える色として選ばれた。青系の色は2000年を皮切りに、2003年、 2005年、2016年にも登場したが、「クラシック・ブルー」はよりダークでエレガントで、パントン社は「誰もが気に入る、宵の空やブルーベリー、ペプシコーラの缶などを連想させる色で、人々の魂に平和や穏やかさを呼び込みながら慰めを与える色」(パントン社)と説明している。
選定の理由についてアイズマン氏は「深い余韻を残す“Pantone 19-4052クラシック・ブルー”は揺るぎない基礎を与える。限りなく深い青は広大で果てしない夕暮れの空を思わせ、私達に「当たり前」の裏にあるものを気づかせ考え方を広げるように促している。より深く考え、より多くの視点を持ち、コミュニケーションの流れを開放するよう問いただしている」と表現している。
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2021- イルミネイティング(Illuminating)、アルティメット・グレイ(Ultimate Gray)
2021年の色は「イルミネイティング」と「アルティメット・グレイ」の二色に決定。「カラー・オブ・ザ・イヤー」で二色が選ばれるのは2016年以来二回目。元気な黄色系の「イルミネイティング」と寒色系グレイの「アルティメット・グレイ」は、組み合わせることで「深い思いやりの気持ちと太陽の光に包まれた日々への前向きな約束をつなぎ合わせ、意欲的な色のコンビネーションを作りだす」と言う。(パントン社)
また二色は「結束」と「安定」を象徴し、「人々にエネルギーや見通しを与え、今も続く不確実な状態を克服するための希望を授ける」方法を提案する色だとしている。
アイズマン氏は「二つの独立した色を選んだのは、何事にも屈せず気分を鼓舞する力強い希望に満ちたメッセージを表現するためにがいかに異なる要素が協調できるかということを示すため。一つの色、一人の誰かということではなく、複数の色や人が混ざり合うという考え方を伝えることを強調した」と語っている。
また「不朽の“アルティメット・グレイ”と刺激的で鮮やかな黄色系の“イルミネイティング”の出会いは不屈の精神に支えられたポジティブなメッセージを体現している。実践的で石のように強固であると同時に暖かく楽観的な色のコンビネーションは、私達にレジリエンスと希望をくれる。私達は励ましや気持ちを上向きにすることが必要であり、それは人間の精神に欠かすことのできないものである」と加えている。
画像提供: courtesy of Pantone