【トレンド・プレビュー】自然とのつながり求める、‘24年春夏メンズウエア
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「消費者は自然との象徴的な関係をより強く意識するようになっている」。環境がファッションの変化にもたらす影響についての本誌記者の問いに、ファッショントレンド調査会社ファッションスヌープ(Fashion Snoops Inc.)のマイケル・フィッシャー(Michael Fisher)バイスプレジデント兼メンズウエア・クリエイティブディレクターはそう答えた。 ラグジュアリーブランドがエコ・コンシャスな消費者のニーズに対応するためさまざまな取り組みを展開する中、ファッションにおいて自然とのつながりがますます重視されつつある。
気候変動問題への危機意識も相まり、責任ある服づくりを追求するブランドは増え続けている。本記事では、こうしたファッションにおける自然とのつながりへの回帰の動きを深堀りするとともに、次回ファッションウィーク・シーズンに先駆けたメンズウエアのトレンドを紹介していく。
自然からのインスピレーション
昨シーズンに続き、自然をインスピレーションとして取り入れるコレクションが多く見られる見通し。ブラジルの展示会「Inspiramais」のウォルター・ロドリゲス(Walter Rodrigues)リサーチ&デザインコーティネーターによると、注目はテクニカルな素材だという。同氏は、「Inspiramais」でテクニカル素材に詰め物をして膨らみのある特殊な形を作り、自然の造形を思わせるシルエットを表現した。
(アウトドア兼用)
パンデミックもまた、人々の自然回帰への意識を芽生えさせた。ブランド各社は今後こうした状況をさらに前進させ、サステナブル・ファッションに注力していくと見られている。ドイツのファッション研究所「Deutsches Mode-Institut」は、環境問題解決に向けたファッション業界に対する圧力がこのトレンドの背景にあると説明。スポーツやアウトドアブランドを中心に、デザイナーとのコラボレーションにより機能性を兼ね揃えたアウトドアにも使えるnature-readyなスタイルが来年のトレンドとして浮上するという。
天然由来&ビーガン
環境への懸念は、ファッションの消費や製造方法に対する人々の考え方にも影響を与えており、カラーパレットも例外ではない。トレンド評論家のデビッド・シャー(David Shah)はフランスで開催されたストレッチ素材の見本市「MarediModa」での講演で、2024年春夏のトレンドカラーとしてサステナブルな製造方法や天然素材から作られた淡い中間色を中心とした落ち着いたオーガニックな色を紹介。単一繊維の平織物を中心に、ざらっとした質感のものや、バイオ技術によって製造されたものなどが多くなるという。さらにプラントベースや人工繊維を使用したアイテムも増えると予想。(フィッシャー氏)
スピリチュアル
ファッショントレンド・コメンテーターがこぞって注視する来春のトレンドといえば、2023年秋冬に流行したスピリチュアルなルックスの進化系だろう。かつてランウェイを席巻した反逆的なファッションから離脱した自然を顧みるスタイルは、消費者の間で支持されるスロー・ファションとも合致している。上述のフィッシャー氏によると、このトレンドは、「個人や集団の心身の健康の進化」を表現しているという。
こうした考え方はファッションビジネスだけでなく、デザインそのものにも体現されている。デニムトレンド予測を手がける「Denim Dudes(デニム・デューズ)」は、来春のファッションでは未加工素材や実用性の高いワークウエア、自然に近い服地を使用したスタイルが多数登場するとしている。