サンローラン、ベルリンで‘24年春夏メンズコレクションを披露
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12日に発表された、アンソニー・ヴァカレロ(Anthony Vaccarello)による「サンローラン(SAINT LAURENT)」の2024年春夏メンズコレクションは、べルリンのナイトクラブでのショーを期待していた業界関係者にとっては少し物足りなかったかもしれない。なぜなら今回会場に選ばれたのは、有名な「新ナショナルギャラリー」(Neue Nationalgalerie)だったからだ。
コレクションのタイトルは、「Each man kills the thing he loves(人はそれぞれ己の愛するものを破壊する)」。ヴァカレロがジェンダーの境界線に挑んだ新作披露の舞台となった美術館は、建築界の巨匠ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ(Mies van der Rohe)が生前最後に手がけた名建築として知られる場所だ。ガラス張りの建物の上に鉄の屋根を配したそのフォルムは、どことなく上着のテーラリングの精巧さを感じさせ、ベルリンの街に沈む美しい夕日とともに観客を楽しませてくれた。
コレクションは、色々な意味でヴァカレロ自身を反映していた。イブ・サンローラン(Yves Saint Laurent)が1966年に発表した「女らしさと男らしさ」の概念を覆した伝説のディナージャケットのスタイルを継承しつつも、前作のメンズ&ウイメンズウエアの路線を明らかに踏襲している。
“デジャブ”なルックス&セクシーなフランケンシュタイン
ここ数シーズン、「サンローラン」のメンズとウイメンズウエアは互いに刺激しあっているような雰囲気がある。ベルリンのショーは、一見すると昨シーズンのウイメンズコレクションに関連しているかのようなルックスでスタートし、観客の間で“デジャブ”のような感覚を起こさせた。
肩まわりが大きく強調されたジャケットとスリムなハイウエスト・パンツに、アンクルブーツを合わせたルックスは、さながらセクシーなフランケンシュタインといったところだろうか。ショーの後半では幅広のパンツのほか、フォーマルなシャツに変わってコットンやシルクのシースルー・ブラウスやショート丈のタンクトップも登場した。
生地としては、水玉や豹柄プリントを施したセンシュアルな透け感のある生地に加え、サテンやオートクチュールにゆかりの深いモスリンも使われていた。しなやかに動く生地はピンストライプや漆黒のジャケットに明るさを添えるとともに、通常のメンズウエアでは省略されがちな蝶ネクタイが、ホルターネックやオフショルダーのトップスの襟元を飾り、鎖骨の美しさを引き立てる。