華麗!第66回グラミー賞授賞式、スターたちのファッション図録
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米国で授賞式が続くなか、ザ・レコーディング・アカデミー主催第66回グラミー賞授賞式が4日(ロサンゼルス時間)、開催された。今回はこれまでの部門に加えて「最優秀ポップ・ダンス・レコーディング賞 」、「最優秀アフリカン・ミュージック・パフォーマンス賞」、そして「最優秀オルタナティブ・ジャズ・アルバム賞」の3部門が新設され、ますます多様なセレブリティが授賞者リストに名を連ねた。
また今回のグラミー賞は、主催者が授賞者を「人間のクリエイターに限定する」との方針を示し、AI(人工知能)が作成した音楽の受賞を対象外としたことでも話題になった。米国では昨年、映画俳優組合・米テレビ・ラジオ芸術家連盟(SAG-AFTRA)が映画制作会社に対するAIの不適切使用などからの保護を求めてストライキを起こしており、事態を受けてグラミー賞主催者がコンピューターによって人間の才能が奪われることのないよう、アーティストを擁護した形となった。
ストライキはハリウッドの名高いアーティストたちのスケジュールはおろか、映画やドラマの制作にも遅れをもたらし、ついにはエミー賞授賞式の延期をも引き起こした。その影響は、ファッション界をも直撃。ここ最近のイブニングガウンの需要停滞でプレタポルテに事業を依存しているメゾンに、ストライキによる各種スケジュールの後ろ倒しで授賞式が集中し、レッドカーペット用ドレス不足という悩ましい問題が襲ったのだ。しかしこうした不遇にも関わらず、セレブリティたちはグラミー賞授賞式の当日はそんな苦境をみじんも滲ませることなく、レッドカーペットに現れた。そしてその姿は、そしていつも通りの華やかなドレスに包まれていた。
フロアに溶ける、ロングドレス
その夜、主役を飾ったトレンドは、なんといってもスカートだった。定番のシンプルなルックスとは打って変わったテイラー・スウィフトの「スキャパレリ(SCHIAPARELLI)」の特注ドレスや、アレッサンドラ・アンブロジオのボディラインを強調したマーメイドドレスなど、どこまでも広がってフロアに溶けてしまいそうな長い丈を引きずって優雅に歩くセレブリティの姿が会場を華やかに演出した。「オリヴィエ ティスケンス(OLIVIER THEYSKENS)」によるキャロライン・ポラチェックのドレスは、大きく広がった裾に腿まで開いたスリット、稲妻プリントのコントラストの効いた赤のネックラインが加わって、妖艶な雰囲気を醸し出していた。
ベイビーブルー
一方、カラートレンドの「最優秀賞」は淡い色合いのベイビーブルーだろう。会場では、特にパリス・ヒルトンやR&B歌唱賞に輝いたココ・ジョーンズのドレスをはじめ、装飾をふんだんに施したぴったりとしたシルエットのドレスが目立った。クリスティーナ・アギレラの「マルマ(MALUMA)」のドレスは、アシンメトリーな裾を優雅なフロアレングスに仕上げている。
グラマーなゴシックスタイル
パステルカラーのベイビーブルーとは対照的に、ダークなゴシック系ルックも多く登場。レッドカーペットでは、シアー素材を組み合わせたものや、光沢感のあるアクセサリーとスタイリングしたドレスがお目見えした。ラナ・デル・レイの黒いドレスは、袖を大きく膨らませたAラインのシルエットが50年代を彷彿とさせた。同じくビンテージ路線を行く「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」デザインのエラ・バリンスカのドレスは、コルセットのような骨組みで立体感を出している。
クロップドスーツ
ゴシック系に次ぐトレンドは、極端に袖や裾を短めに切り上げたクロップドスーツ。なかでも取り分け際立ったのは、最優秀ロック・ソング賞を受賞したボーイジーニアスの白いタキシード。胸元のピンクのカーネーションが全体のいいまとめ役に。デザインは「トム ブラウン(THOM BROWNE)」が手がけた。
スキンカラー・ビスチェ
「ディラーラ フィンディコグルー(DILARA FINDIKOGLU)」デザインによるラッパーのドージャ・キャットのコルセットは、まるで何も着ていないかのように肌の色と同化。腕や脚に入ったタトゥーがアクセサリーのようにドレスを引き立てた。ハリー・ベイリーは全身に散りばめられたクリスタルと深いVネックが印象的な「グッチ(GUCCI)」で登場。しかし、これよりもっと驚くドレスで登場したのが、マイリー・サイラス。「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」デザインの金色のドレスの材料はなんと網目丈に繋ぎ合わせた安全ピン。肌色どころか、肌そのものを露出している。胸部のブラレットや立体的なネックライン、繊細なドレープの裾もすべて安全ピンで作ったというから驚きだ。
カジュアライゼーション
煌びやかなファッションに混じり、カジュアルな装いでグラミー賞授賞式に訪れるスターも。年間最優秀楽曲賞のビリー・アイリッシュが選んだのは、「クロムハーツ(CHROME HEARTS)」のボンバージャケット。オーバーサイズのシャツにパンツでコーディネートしている。同様に、キングズリー・ベン=アディルも「グッチ」デザインの鮮やかなオリーブグリーンのボンバージャケットで登場。
ハリウッド・クラシック
もちろん、オフショルダーのドレス姿を披露したケリー・クラークソンをはじめ、トラディショナルなアプローチで授賞式に挑んだセレブも。グレイシー・エイブラムスの「シャネル(CHANEL)」のドレスは、控えめながらも強い存在感を放ち、オリヴィア・ロドリゴは赤いクリスタルの装飾をあしらった「ヴェルサーチェ(VERSACE)」のビンテージ・ガウンで観客を魅了した。
実験的プロポーション
会場では、服の一部を一見不釣り合いとも思えるくらい大きくするなど、実験的なプロポーション(比率)で遊び心のあるデザインのドレスも見られた。エミリー・キングの淡い黄色のセットアップは、肩部分にルネサンス時代を思わせるフリンジを装飾。一方、クリッシー・テイゲンの「ソフィー クチュール(SOPHIE COUTURE)」のミニドレスはスカート部分をオーバサイズの薔薇の形に仕上げている。サマー・ウォーカー着用のふさふさとしたアワーグラスガウンは、マイ・フェア・レディー風の大きな帽子でアクセサライズ。
中性的なテーラリング
男性陣は複雑なディティールを取り入れたジェンダー流動的なアプローチのテーラリングで遊び心を追究。ジョン・バティステが着た「アトリエ ヴェルサーチェ(ATELIER VERSACE)」のグレーのスーツは、メンズスカートのトレンドに乗って、ユティリティー・ジャケットにプリーツスカートを合わせている。また、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」によるペソ・プルマのルックスは、フレアボトムパンツ、襟元に刺繍を入れウエストを絞ったジャケットなど、70年代ファッションにインスピレーションを得ている。