EU、ファストファッション取り締まりへ
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欧州連合(EU)が文字通り加速するファストファッション業界の勢いに“待った”をかけようとしている。先般EUはファッション業界の環境負荷や不当労働にメスを入れるため、持続可能な繊維戦略を発表した。欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は昨年スピーチでファストファッション業界を「地球にとって有害」と一刀両断した。
今回発表された戦略では、繊維産業に対し、環境基準への適合強化のため製品の修繕しやすさや耐久性を向上させるべきと指摘。その実現にはより高品質な生地や縫製を取り入れ製品寿命の延長が必須となる。
欧州委員会のフランス・ティーマーマンス執行副委員長は「“資源を使い、作り、壊れたら捨てる”という地球にも私達の健康や経済にも悪影響をもたらすビジネスモデルを終わらせる時に来ている」とコメントしている。
具体的にEUは繊維業界における「原料調達」「デザイン」「修繕」「リサイクル」といったすべての消費段階に着目しており、2030年までにEU域内で販売される繊維製品における再生素材の使用や、製品に含まれる有害なマイクロプラスチックの量を最大限に低減させることを求めている。なぜなら、現在世界でリサイクルされる衣料品は1%に満たないからだ。
「ファストファッションは時代遅れ。採算が取れる衣料品の再利用や修繕サービスをもっと普及させるべき」とEUはステイトメントを通じて発表している。
欧州環境機構のデータによると、EU域内では一人あたりの衣料品消費に対して9立方メートルの水と400平方メートルの土地、391kgの原料が使われている上、約270kgのカーボンフットプリント(CO2総排出量)が発生しているという。
また欧州における衣料品および家庭用布製品(シーツ、テーブルクロスなど)の消費量は毎年一人当たり26Kgで、うち輸入品が73%を占める。さらに年間一人当たり11Kg、欧州合計では580万トンの繊維製品が捨てられている。(AFP)
EUの衣料品、ほぼすべて域外で製造
繊維産業は食品、住宅、交通に次いで原料や水消費の多い産業。さらに温室効果ガスの排出量でも5番目に排出量が多い産業である。中小企業を中心としたEU域内の繊維産業は長い再編期間を経て回復基調にあるが、域内の6割相当の衣料品は域外で製造されているのが現状だ。
求められるイノベーション
一方、EUは繊維産業が自社製品に責任を持つべく、衣料品のリサイクルを推進すると同時に焼却処理や埋め立て処理となる廃棄衣料品を減らす十分な能力を持ったサプライチェーンを整備するよう、業界内のイノベーションを呼びかけている。
また、製品に生地の情報を明示したラベルを付けたり、消費者が購入した製品を追跡できるデジタルパスポートを導入したりするなどの施策を提案するほか、企業による製品の環境性能に関する誇大広告や偽装表示を防止するため、消費者に製品の「環境に優しい」といった表示が正確であるかを確かめるよう注意を促している。
EUはこうした取り締まりを通じて、最終的には衣料品の過剰生産や過剰消費に歯止めをかけるとともに、売れ残りや返品の廃棄抑制を目指している。