JD.comが考える、小売業の将来展望
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アムステルダム– 小売業の将来予測にあたっては、中国の動向把握は欠かせない。消費者の間でネットショッピングが浸透し、Eコマース各社が続々と既存の枠を超えた新しい取り組みを展開する中国の大手小売JD.com.(京東商城、以下、JD.com)に聞いた、3つの将来展望を紹介する。
ネット通販のボーダーレス化
「小売業は将来的にボーダーレスになる。消費者はどこにいても自分の欲しいものがすべて買えるようになり、買い物の構図が(消費者が店を訪れて買うのではなく)店が消費者のもとを訪問するというように変化するだろう–」 JD.comのリン・チェンカイ企業戦略&投資担当バイス・プレジデントは15日、世界小売業会議でこう発言した。
これまで「インターネット」と「実店舗」との間の境界線で区別されてきた“消費の機会”が、ソーシャルメディア、顧客対応、AIなどを統合的に駆使することによりどこでも様々な形でシームレスに提供されるようになるのだ。
「モノの価値が下がる」
リンはまた、「将来的に商品<モノ>の価値は下がっていくが、サービスに対する評価は上がる」とコメント。
消費者との関係構築において商品購入はゴールではなくスタート地点。AI スピーカーを例にとれば、スピーカーはそれ自体も商品であるが、同時にスピーカーを介して利用可能なコンテンツ、音楽、天気予報などのサービスを購入するきっかけともなるのだ。
こうした新しい流れを受け、製造業と小売業はますます連携を強めていくことが予想される。
「昨今、小売は消費者に関する情報を多く把握している。消費者行動や市場のダイナミクスなどといった情報をメーカーに提供することで、小売が積極的に製品開発に関与するようになってきている。」とリンは加えた。
垂直統合型バリューチェーンの終焉
小売業界が複雑化する中、従来の「倉庫から出荷まで」といった一連のバリューチェーンに固執せず、自社にとって必要な機能が何か見極めることも重要だ。JD.com は近年、社外の専門家の協力を得て物流部門の切り離しを実行した。同社が「エコシステム」と呼ぶこの体制を構築することにより、社外の技術ノウハウを活用し新たな小売業界のスタンダードを作ることができると同社は考えている。
リンは、「バリューチェーンを隅々まで捉え直し、我々が作るエコシステムの中でどんな機能を保有すべきか、どこに戦略的価値を見出すべきかを考えなければならない」とコメントしている。
写真: JD.com media resources