LVMHとケリング、18歳未満のモデル起用問題で対立
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ケリング(KERING)は先般、「2020〜2021年秋冬コレクション以降、“成人向け商品”については 18歳以上のモデルのみを起用する」との決定を発表した。
ケリング会長兼CEOのフランソワ・アンリ・ピノー(Francois-Henri Pinault)は、「我々のブランドから発信されるイメージが若い世代に与える影響を強く認識している」とコメント。
今回の同社による決定について、「当社には業界全体に対し為し得る限りのベストプラクティスを示す責務がある。当社が事例を作ったことで、他社にも対応を進めてもらいたい」と述べている。
しかしながら、ケリング最大のライバルであるLVMHモエヘネシー・ルイヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON、以下LVMH)はこれに対抗。ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)、ディオール(DIOR)、ジバンシイ(GIVENCHY)などのブランドを傘下に持つLVMHは、米国フォーチュン誌(Fortune)のメール取材に、「重要なのはモデルの年齢ではなく適切な雇用条件の確保。1社がモデルに年齢制限を課したところで若者のモデルがいなくなる訳ではない。当社は引き続き、18歳未満のモデルに対する適切な労働環境の提供に努めていく」と回答している。
LVMHとケリングは以前、起用モデルの年齢を16歳以上に限定したり、モデルの身体サイズについて(健康状態を考慮し)女性は米国サイズ4、男性は米国サイズ6以上とするなどの規定を盛り込んだ憲章を発表している。
フォーチュン誌によると、LVMHのショーなどで起用される16歳〜18歳のモデルは全体の15〜20%だという。LVMHは今後もモデルの年齢に関わらず労働条件や居住環境の改善に努めるとともに、18歳未満のモデルを起用する場合の付き添いの義務化などを進めていくとしている
フランスでは2015年、国内においてBMIが18を下回る極度のやせ状態にあるモデルの起用を禁止する法律が施行された。また同国のモデル業界はここ数年、セクシャル・ハラスメントや未払い賃金、劣悪な労働環境などの問題について大きな社会的批判を浴びている。これを受け、徐々にモデル事務所による雇用条件の見直しが図られるとともに、ファッション業界においてもショーや宣伝などで非健康的なモデルの起用を自粛するなどの動きが広まっている。今回のケリングによるモデルの年齢規制への取り組みの効果はどうか。今年の秋冬のパリおよびミラノのファッションウィークでの同社の展開に注目したい。
写真: courtesy of La Presse PR