「エルメス」、NFT版バーキン巡る訴訟で勝訴
loading...
メイソン・ロスチャイルド(Mason Rothschild)氏が販売するNFT版バーキン「MetaBirkin(メタバーキン)」を巡って「エルメス」が同氏を提訴していた訴訟について、ニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所は、「MetaBirkin」がほとんど法規制の対象になっていないメタバースにおいても「エルメス」の商標権侵害に当たるとした判決を示した。
さらに陪審員9名は、「エルメス」が請求していた、ロスチャイルド氏による「MetaBirkin」の販売による利益およびインターネットのドメイン名「Metabirkins.com」の不正占拠の被害額2万3千万ドルを含む総額13万3千米ドルの損害賠償を認めた。
新たなデジタル著作権の時代の幕開け
Bloomberg Lawはデジタル著作権の先駆的事例となる今回の判決について、メタバース上の資産であっても知的財産法の視点が適用されることが示されたと説明している。「ロスチャイルド氏の敗訴は、ブランドなどのトレードマークを創作活動に使いたいと考えているNFTアーティストに萎縮効果(行動抑圧)を与えかねない」とBloomberg Lawは指摘する。芸術とビジネス、著作権はますますその境界線が不明瞭になってきている。
ロスチャイルド氏は NFT版の「Baby Birkin(ベイビー・バーキン)」を5.5 etherで売却したあと、同じくNFTアートの「MetaBirkin」100点を販売した。さらに消費者からの反響を受け、新たなシリーズとしてファッション業界の「ファーフリー(脱毛皮)」の動きに合わせて代替素材バージョンも作成。明るい色味のフェイクファーのバッグを発表した。
昨年12月、「エルメス」はロスチャイルド氏に「MetaBirkins」の販売停止を求める文書を送付したが、これに対し同氏は自身の作品は米憲法修正第1条で保障された権利である表現の自由に守られていると反論。加えて、「エルメス」は知名度の高いファッションブランドとしてその影響力を若いアーティストの支援に使うべきだと主張した。なお、同時期、「MetaBirkins」を販売していたNFTのマーケットプレイス、Open Seaはプラットフォームから同商品を削除している。
「エルメス」の弁護団は、ロスチャイルド氏を「デジタル投機家」だといい、MetaBirkinを使って「エルメス」の現実世界での権利を仮想世界の権利に差し替えて一攫千金を狙っていると非難していた。
9日、ロスチャイルド氏はInstagramで次のようにコメントを発表している。「自分の期待した結果にはならなかったが、この論争は終わりにはほど遠い。web3もそうだけど、物事を先取りしてやるのが自分の誇りで、それが時々こんなふうに成長のための痛みを伴う。ほどんどの人はこの問題をわかっていないけれど、一生理解できないというわけじゃない。みんなに理解してもらうよう努力することが僕や他のメタバースのクリエイターの務めだ。僕たちは議論を止めたわけじゃない。ノックダウンされただけ。死んではいない」。