「ボッテガ・ヴェネタ」が全SNSアカウントを閉鎖
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ケリング(Kering)傘下の「ボッテガ・ヴェネタ(Bottega Veneta)」が先般密かにFacebook、Instagram、Twitterアカウントを閉鎖し、ソーシャルメディア・マーケティングからの脱却を進めている。
昨今のマーケティング戦略の潮流の中、「ボッテガ・ヴェネタ」はラグジュアリーファッションブランドとして初めてデジタルコミュニケーションの制限に踏み切った。同ブランドは昨年12月、10月にロンドンの劇場でごく一部の参加者のみを招待し行ったプライベートサロンスタイルの2021年春夏コレクションのショーの模様をInstagramで一般公開した。ショーの内容はアーティストのローズマリー・トロッケル(Rosemarie Trockel)がデザインした本などが登場する音と画像を駆使したプレゼンテーションだったが、そのパブリックへの発表手法にはSNSが選択されたのだ。
興味深いことに、同ブランドのダニエル・リー(Daniel Lee)クリエイティブディレクターもInstagramのアカウントを持ったことはないと言う。取材でも「Instagramのない時代に育ってよかった。楽しいことがたくさんあった。将来どういう展開になっていくのか興味がある。自分としてはおそらくプライバシーの問題に回帰すると思う。本当にそうなってほしい」(2019年の英国版ヴォーグ誌での記事)と答え、SNSには重点を置いていないことを強調している。
公式SNSアカウントの閉鎖は、「ottegaveneta.by.daniellee」「bottegaveneta_international」「bottega.men and by_daniel_lee」などの非公式なファン・アカウントの勝利を告げ、「ボッテガ・ヴェネタ」の動向への関心の高まりを映しているとも言える。
「Facebook+Instagram+Twitter」の公式が終わる
ファッションブランドや企業が利用するデジタルコミュニケーションやプラットフォームはここ一年で大きく変化している。独自に管理できるアカウントは単一の視点を発信できるという利点があるが、企業やブランドは「Instagram」「Facebook」「Twitter」という正規のソーシャルメディアには飽き足らず、Z世代に人気の「TikTok」やバーバリーの最新コレクション発表で使われたストリーミング配信サービス「Twitch」など新しいプラットフォームの利用し始めている。
「アバター」「ゲーム」「ポケモンGO」にも展開
「バレンシアガ(Balenciaga)」や「ヴァレンティノ(Valentino)」をはじめ、ここ最近ファッションブランドのデジタル戦略がゲームにまで発展している。2019年には「グッチ (Gucci)」が同社の進める新たなデジタル・タッチポイントおよびZ世代に特化したリーチを獲得するための「実験」の一環としてアバター(ゲームやネットの中で存在するキャラクター)制作会社「ジェネシス(Genies)」に大型の投資をした。さらに今週同ブランドは「ザ・ノース・フェイス(The North Face)」と共同でスマートフォンゲームアプリ「ポケモンGO(Pokémon GO)」とコラボレーションした「The North Face x Gucci」コレクションを発表。コレクションのTシャツや帽子、バックパックがゲームのアバター(登場人物)が身につける着せ替えアイテムとして、世界100カ所のポケストップ(ゲームのキャラクターやアイテムを入手することができるポイント)で期間限定で入手可能となる。
こうしたオンライン上で繰り広げられる交流の拡散こそが「ボッテガ・ヴェネタ」がSNSを同ブランドのエクスクルシビティ(独占性)や“秘すれば花”という信条に悪影響を及ぼすと危惧する所以ではないだろうか。「Instagram」や「Tiktok」、はたまたその他のいかなるソーシャルプラットフォームも、現在の「ボッテガ・ヴェネタ」の戦略にはあっていないようだ。ひとまず「ボッテガ・ヴェネタ」はSNSに背を向けた。まさにゲームオーバーである。
画像:Bottega Veneta ウェブサイトより