テキスタイル色料がマイクロプラスチック汚染を加速　最新研究が環境リスクを指摘

ファッション業界が長年懸念してきた、ポリエステルをはじめとする合成繊維衣類が海洋マイクロプラスチック汚染の主要因であるという事実が、科学的研究の蓄積によって数値化されつつある。そうした中、南京情報科学技術大学のChen R.氏、Zhao X.氏らが学術誌『Marine Pollution Bulletin』で発表した新たな論文は、生地の色自体がそのプロセスを加速させる可能性を示唆した。

この研究では、沿岸海水中での太陽光照射をシミュレートした結果、PET（ポリエチレンテレフタレート）製のテキスタイルは、特に紫や緑といった暗い色が、黄色や青などの明るい色合いに比べて分解が速く、より多くのマイクロファイバーを放出することが明らかになった。自然光1年分に相当する12日間の実験では、わずか0.1グラムのPET生地から最大4万7000本の繊維が放出されたという。

その理由は物理学的な原理にある。暗い染料ほど多くの紫外線を吸収し、ポリマー鎖を弱める活性酸素種を生成することで、断片化を加速させるのだ。このメカニズムにより、黒、紫、深緑といったテキスタイルは特に汚染への寄与が大きくなる。この発見は、メーカーによる色付き合成繊維のサステイナビリティ評価方法を根本から変える可能性がある。

国連関連の推計によれば、世界では毎年2000万から5300万トンのプラスチック廃棄物が海洋に流入している。テキスタイル由来のマイクロファイバーの大半は、世界の繊維生産量の約60%を占めるポリエステルから発生する。家庭での洗濯1回で約70万本のマイクロファイバーが放出される可能性があり、その多くはろ過システムをすり抜けて河川や海洋に到達する。

デザインとコンプライアンス

ファッションおよびホームウェアブランドにとって、これはデザインとコンプライアンスに関する新たな課題を提起するものである。フランスが2025年に導入するフィルター設置義務や、EUで策定が進む『サステイナブルな製品のためのエコデザイン規則』など、マイクロファイバーに関する規制が強化される中、染料の化学的特性や太陽光下での生地の物理的挙動は、やがてカーボンフットプリントと同等に重要視されるようになるだろう。

論文の著者らは、「色は単なる美的な選択ではなく、化学的な選択でもある」と指摘する。今回の研究結果は、テキスタイル生産者および染料メーカーが、紫外線への反応性が低い染料を優先し、光酸化に耐える合成糸を再設計する必要がある可能性を示唆している。

コンプライアンス遵守にとどまらず、企業評価の観点からも対応が急務である。サステイナビリティが投資を左右する指標となる中、インディテックスからケリングに至るまで、主要なファッション企業グループはすでに自社のマイクロファイバー排出量の把握に着手している。ラグジュアリーブランドおよびパフォーマンスブランドの双方にとって、原着繊維からバイオベースのコーティングに至るまで、素材のイノベーションは、今後10年間の差別化要因となり得るだろう。

この研究は、ファッションにおける環境リスクの定義が変化していることを浮き彫りにする。もはや、素材の調達元だけでなく、衣類が着用、洗濯、廃棄された後にその素材がどうなるかという、製品ライフサイクル全体を通じた影響が問われているのである。

記事出典: Chen R., Zhao X., Wu X., Wang X., Wang J. & Liang W. (2024). Sunlight-Driven Photochemical Transformation of Colored PET Textiles to Microfibers in Coastal Seawater, Nanjing University of Information Science and Technology.