TikTokでロングヒット、「バレエコア2023/24

TikTokのマイクロトレンドは、電光石火のごとく生まれては消えていくものだ。しかしどういうわけか「バレエコア」は、2023年の後半からTikTok上で再燃。#balletcoreのついた投稿は閲覧数が1億4210万超えを記録した。2022年に初めてTikTokに登場した「バレエコア」は、バレエにインスピレーションを得たファッションで、レオタードやレッグウォーマー、ラップカーディガン、ウォームアップパンツといった練習用ウェアから、コルセット、チュチュ、ロング・チュール・スカートなどプロのバレリーナの豪華絢爛な衣装をベースとしたものなどさまざまなスタイルがある。さらに、トウシューズやキャラクターシューズも根強い人気がある。

なぜこのマクロトレンドが、これほどまでに長く支持され続けているのだろうか？その理由の一つは、20代以降からバレエ教室に通い始めた若者の多さだ。hypebae.comに掲載された記事によると、TikTokにおける「大人バレエ（adult ballet）」の検索件数は3470万件以上に上り、「#バレエ始めよう（#startingballet）」とついた投稿の閲覧数は200万に達したという。TikTokインフルエンサーのアニー・ゴラ（Annie Gora）も「ずっとダンス教室に通ってみたかったの……やっと、わたしのなかのインナーチャイルドを癒すことができた。バレエをしていると、自分が魅力的で強い女性だって感じられるの」とコメントしている。

実際、プロのバレリーナは能力・忍耐力・女性らしさの象徴といっても過言ではない。ファッション界では、1940年代後半の「クリスチャン ディオール（CHRISTIAN DIOR）」から、現代の「モリー ゴダード（MOLLY GODDARD）」「ロダルテ（RODARTE）」「ミュウミュウ（MIU MIU）」「ジャックムス（JACQUEMUS）」「アクト N.1（ACT NO.1）」にいたるまで、幾度にわたりコレクションにダンサーやその衣装が登場している。そして、「バレエコア」のスタイルに挑戦してみたいという消費者にも、デザイナーズから小売店で変える手軽なものまで、多彩なオプションが存在する。

2024春夏ランウェイコレクション

2024年春夏ランウェイを見る限り、「バレエコア」のトレンドは来年も続きそうだ。

「マリー・アダム・リーナールト（Marie Adam Leenaerdt）」 パリでは、ベルギーのデザイナー、マリー・アダム＝リーナールト（Marie Adam-Leenaerdt）が「ホリデイ・コレクション」を披露。夏のバケーション向けアイテムを集めたものらしいが、なかにはダンススタジオから抜け出してきたようなルックスも含まれていた。

Look 6：白のハイカット・レオタード&ラップスカートと、茶色のバレエシューズ。

Look 22：黒のスパゲティストラップ・レオタード&ドレスパンツと、シルバーのフープ・イヤリング。

Look 26：黒のノースリーブ・レオタード&ロング丈のラップスカート。メタリックゴールドのバレーシューズ。

「アディアム（ADEAM）」

デザイナー：前田華子

2024年春夏新作では、スポーツとしてのバレエに着目し、アスリージャーにパンクのタッチを加味したコレクションが登場。前田華子は2015年にニューヨーク・シティ・バレエ団 （New York City Ballet）の衣装をデザインしており、今回のショーでもラストにタイラー・ペックが踊りを披露した。

Look 4：白のクロップド・カーティガン&ティアードレースのスカート。パールとシルバーのジュエリー。「ドクターマーチン（Doctor Marten）」のグラディエーター・サンダル。

Look 10：腕部分にパールを巻きつけた、黒のクロップド・カーティガン。黒いチュールのスカート&サイハイ・ストッキング。「ドクターマーチン（Doctor Marten）」のグラディエーター・サンダル。

Look 12：緑のリブニット・ラップカーディガン。こちらも腕にパールの飾りつき。カーディガンと同系色のレギンスは、足元にニット生地をトウシューズのリボン風に巻き付けている。

「アランポール（Alainpaul）」

パリのシャトレ座劇場（Théâtre du Châtelet）で披露されたデビュー作は、伝説のダンサーと呼ばれたルドルフ・ヌレエフ（Rudolf Nureyev）の稽古中の写真や、同劇場での最新作『春の祭典』を公演中のピナ・バウシュ・カンパニー（Pina Bausch Company）にインスパイアされたという。

Look 14：ヌードカラーのスパゲティストラップ・レオタード。黒いサテンのミニスカート、シフォンパンツ、バレエシューズと合わせて。

Look 16：ヌードカラーのシフォンで仕立てた、ダブルレイヤーのスリップドレス。裾部分はアシンメトリーにアレンジ。ヌードカラーのレザー製アンクルブーツとコーディネート。ブラントトウのつま先がトウシューズを彷彿とさせる。

Look 17：茶色のスパゲティストラップ・レオタード。上から白のスリップドレスを重ね、ウエスト部分で折り返している。白とヌードカラーのトレンカ、白のバレエシューズ。

「クリスチャン・シリアノ（CHRISTIAN SIRIANO）」

NYファッションウィークに参加したクリスチャン・シリアノも、子どものころに習っていたというバレエをインスピレーションに、ダンサー・モチーフ溢れるジェンダー流動的なコレクションを発表した。

Look 9：黒のクロップド・タキシード・ジャケットと合わせた、ロングチュチュのレイアード・スタイル。黒のパテントレザー製バックレス・ローファー。

Look 21：黒いサテンのブラ&シュラッグと、ピンクのチュール製ニーハイ丈チュチュ。繊細なダイアモンドのネックレス、ピンクのサテン・スリングバックでアクサライズ。

Look 23：黒のスパゲティストラップ・レオタード&シアーシャツ。胴回りにボディウォーマーを重ねている。ジュエリーで飾り付けをしたアンクル・ストラップ・サンダルで足元を上品に演出。

2023年秋のリテールに見る「バレエコア」

ロサンゼルスを拠点とする「リフォメーション（REFORMATION）」はニューヨーク・シティ・バレエ団とコラボレーションし、バレエに着想を得たアイテム19点からなるコレクションを10月に発売。「チュールやレース、シフォンといった華やかな素材を使用し、私たちのシグネチャーであるビンテージなシルエットとバレエの楽しさを融合した」（同社ウェブサイトより）コレクションに仕上げたという。

「Aria」カシミア2ピース

「Rana」ニット・ボディースーツ&「Edda」シルクシャツ

「Barbara and Mikayla」バレエシューズ