ランウェイtoリテイル:気分はお人形 “バービーコア”
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1959年にマテル社から発売されたバービー人形は、ミッキーマウスやコカコーラに並ぶアメリカのアイコン的存在だ。ワーナーブラザーズは新型コロナ危機前に、映画『バービー』(監督:グレタ・ガーウィグ、主演:マーゴット・ロビー、 ライアン・ゴズリング)の制作を発表した。これを受け、欧米のSNSユーザーを中心にバービーブーム「Barbiecore(バービーコア。英語で熱狂的になることを“-core”と表現することに由来) 」が巻き起こり、ハッシュタグをつけたTikTok投稿の閲覧数は30万回を超えている。
過去4年間のうちに、ランウェイでも常連になったバービーファッション。ポジティブなエネルギーに溢れるそのスタイルは、パンデミックや昨今の社会的変化による人々の不安をまさに和らいでくれる。2022年の夏にピークを迎えた「バービーコア」が、間近に迫った映画の公開日を前に、ランウェイや店頭をふたたび賑わせている。
「マイケル コース(MICHAEL KORS)」 2020年春夏
アメリカン・スポーツウエアをテーマに発表された「マイケル コース」2020年春夏コレクション。ブラトップ、Look 76で登場したキュロット、一つボタンブレザーの3ピースは、白い厚底サンダルとカゴバックがギンガムチェック生地を引き立てる。
「モスキーノ(MOSCHINO)」 2021年春夏——デザイナー:ジェレミー・スコット (Jeremy Scott)
あやつり人形にキャットウォークをさせるという奇想天外なアイデアが話題となったショーでは、スウェットパンツを脱ぎ捨て、ふたたびおしゃれをして外出するアフター・コロナの女性像を想像してジェレミーがデザインしたという新作40点が発表された。オートクチュールを思わせる上品なLook 19、21、39は、あたかも本当にバービーが着ていそうだ。
「ブランドン マックスウェル(BRANDON MAXWELL)」 2022年春夏
「バービーコア」は「アンチ・プリント」で知られるデザイナーのブランドン・マックスウェルにも影響を与えている。水色と白のギンガムチェック地のナウインドブレーカー、ボディスーツ、ドローストリングパンツでコーディネートされたLook34をはじめ、2022年春夏のデザインでは明るめのカラーやキラキラ素材、キュートなプリント&パターンがふんだんに使われた。
「MSGM」2022春夏——デザイナー:マッシモ・ジョルジェッティ(Massimo Giorgetti)
柑橘系のアシッドカラーや生き生きとしたプリントなど、かねてから図らずもバービースタイルな雰囲気を醸し出しているマッシモ・ジョルジェッティのデザイン。2022年の春も例外ではなく、ネオングリーンと白のギンガムチェック柄ボディスーツにホットピンクと白の大きめチェックのラップスカートを合わせたスタイルがLook1にお目見え。バッグもチェック柄で仕上げ、足元はネオングリーンのスライダーサンダルで明るくまとめている。
「ヴァレンティノ(VALENTINO)」2022年秋冬——デザイナー: ピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)
この秋のプレタポルテ・コレクションでは、ピエールパオロ・ピッチョーリは極端と思えるほど色にこだわった。最初の40点は頭からつま先までホットピンクカラー一色で、ほとんどが完全に「バービーコア」仕様になっていた。写真のLook38でも、刺繍入りサテン地のジャケット&ドレス、長手袋、タイツ、厚底ブーツ、ミニバッグが全部ピンクに染められた。
「エリー サーブ(ELIE SAAB)」2023年春夏
レバノン出身のデザイナー手がける、鮮やかな白のアイレットドレス、ピーチと白のグラデーションが美しいスーツ、全身をネオングリーンでまとめたルックスなど元気なスタイルいっぱいの2023年春夏コレクション。写真はLook15のジョーゼットのシャツ&ブラ、キュロット。スカーフやバッグ、サンダルも緑一色でまとめられている。
「ポール&ジョー(PAUL & JOE)」 2023年春夏 ——デザイナー:ソフィー・メシャリー(Sophie Mechaly)
ソフィー・メシャリーは小説「秘密の花園」や作家ルイス・キャロルの空想の世界に着想を得て2023年春夏コレクションを制作。青と白のギンガムチェックのオーバーオールと花柄の長袖ブラウスを中心としたLook5は、モデルの頭にもブラウスと同じ花柄のスカーフを「ほっかむり」のようにあしらっている。つま先部分が丸みを帯びたピンクパテントレザーのTストラップシューズでスタイルを完成。
「ヴェルサーチェ(VERSACE)」2023年プレフォール
ドナテラ・ヴェルサーチ(Donatella Versace)は歌手のデュア・リパ(Dua Lipa)とコラボし、カンヌ国際映画祭の会場で2023年プレフォールコレクションをSee Now Buy Now型(最新作をショーでの発表後すぐに店頭等で購入できる即売型のショー)で開催した。映画『バービー』への出演も決まっているデュア・リパの役どころに大いに注目が集まるなか、本コレクションでも「バービーコア」の影響が顕著に見られている。Look5に登場したピンクのオーバーサイズのブレザー&ショートパンツ、スパンコール付きブラのアンサンブルは、メタリックなピンクのウエスタンブーツとショルダーバッグに加えてゴールドのチェーンや二連ネックレス、イヤリングでヘビーにアクセサライズ。
さらにLook17ではカラフルなプリントのワンショルダー・トップスとメタリックブルーに輝くメッシュのバタフライモチーフのミニスカートが登場。アクセサリーはパイロット・サングラス、メッシュのバッグ、チェーンベルト、ブレスレット、レースアップサンダルなど。
「シャネル(CHANEL)」 2024年リゾート
ロサンゼルスで披露されたヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)手がける「シャネル」の2024年リゾートコレクションのフロント・ロウには、なんと映画『バービー』の主役を務めるマーゴット・ロビーの姿が。コレクションはオリジナルのバービー人形とケンの遊び場とされるLAのベニス・ビーチの遊歩道をインスピレーションにしているとの話も。なかでも、ダントツ「バービーコア」なのが、Look20のパステルピンクとイエローのストライプが可愛らしいクロップ丈のニットジェケット&トップ、ショートパンツ。アクセサリーにはピンクのファーを使ったブレスレットやイヤリング、斜めがめのミニバッグ、チャームネックレスのほか、パールカラーの黒いリボンのついたポインテットトウ・シューズが登場。
店頭も現れる「バービーコア」
欧米では「ギャップ(GAP)」をはじめとした複数の小売でバービーやマテル社とのコラボレーションが展開されているほか、大手百貨店の「ブルーミングデールズ(Bloomingdale’s)」でも映画『バービー』とコラボした商品を販売中。ピンクや青系のカラーのドレスやセパレートが店頭を彩る。