型破りなドレスに、多彩なデビュー作。Metガラ2024のハイライト〜Part3

FashionUnitedがお届けする、2024年のMetガラのレポート最終回。

「シャネル」と「ディオール」はミニマリスト・クラシック路線を継続

ミシェル・ウィリアムズ（Michelle Williams）着用の「シャネル（CHANEL）」の衣装は、2024年春夏コレクションに発表した白いチュールの袖とケープを広がらせたオーガンザ・ドレスが“ヒッピー時代”のノスタルジアを感じさせた。反面、グレイシー・エイブラムス（Gracie Abrams）とカミラ・モローネ（Camila Morrone）の衣装では、生成色サテンのリボンやフェザー、ビーズを装飾した2ピースでクラシックな「シャネル」らしいルックスにまとめ上げた。

「ディオール（DIOR）」も今回のガラではクラシックなコードを選択。ロザリア（Rosalía）やウィロー・スミス（Willow Smith）にはいずれもハイファッション・テイラーリングを提供。対照的にエリザベス・デビッキ（Elizabeth Debicki）のベルベッドドレスは、ゆったりとしたフォルムとMetガラの大階段を優雅に覆う長いトレインが目を引いた。

「スワロフスキー」初のオートクチュール

Metガラはおろか、オートクチュールにも初参入の「スワロフスキー（SWAROVSKI）」からは、ゴージャスなデビュー作がお目見え。オーストリアの老舗クリスタルジュエリーブランドとして知られる「スワロフスキー」のジョバンナ・エンゲルバート（Giovanna Engelbert）クリエイティブディレクターは、4人のミューズとともにガラの階段を踏んだ。ミューズたちのガウンを覆いつくす数十万個はあるだろうかというクリスタルは、シグネチャーカラーである緑、紫、黄色、青、白色に輝いていた。

変わって「プラダ（PRADA）」は、アマンダ・サイフリッド（Amanda Seyfried）に花のアップリケをあしらった立体的なスカートが特徴的なドレスを提供。サステナビリティ推進活動家であるサイフリッドは、レッドカーペットで「環境に優しいデザインを特別に依頼した」とヴォーグ誌に明かした。実際、ドレスに使われた生地は、「プラダ」の2009年のコレクションを再利用したものだという。

サステナビリティでは「マルニ（MARNI）」もチャーリー・XCX（Charli XCX）とリタ・オラ（Rita Ora）のドレスでサーキュラーファッションを追求。XCXのドレープドレスは1950年代や1970年代のビンテージTシャツを継ぎはいでアップサイクル。ラインストーンやガラスのビーズで、シグネチャーの縫い目を際立たせている。同様に、オラのドレスは古いタペストリーの生地を割いて再利用しているほか、装飾には1940年代や1970年代のムラーノガラス製ビーズやアンティークジュエリーを使っている。

少数ながらも存在感大の若手デザイナー勢

今回は出番が少なかった若手デザイナー。そんななか、コナー・アイヴス（Connor Ives）やダニエル・デルコア（Daniel Del Core）の二人の若手デザイナーの存在感が際立った。アイヴスはアイビー・ゲティ（Ivy Getty）の衣装で、清王朝時代の中国で作られたとされる推定300年の絹織物ベースにデミクチュールドレスをデザイン。さらにケープにはビンテージのフォックスファーから取り出した毛皮を縁取りし、歴史や時を超越したデザインというガラのテーマ性を強調した。

メキシコ人女優エイザ・ゴンザレス（Eiza Gonzalez）のために“パーソナルな”服をつくりたかったと話すデルコアは、シルクのオーガンザを重ねて花開く蘭をイメージしたドレスを制作した。彼はプレスリリースで「メキシコの国花であるバニラオーキッド（甘い香りの味を結ぶ白い蘭。花は朝に開き、夜には閉じてしまうことでも知られている）を見つめながらデザインを始めた。その花びらの儚さに心を奪われ、時とともに開いていく蕾を想像した。僕が表現したかったのはその瞬間だ」とコメントいている。