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「クロエ」の新クリエイティブ・ディレクター、ガブリエラ・ハーストの素顔

By Nora Veerman

2020年12月29日

ここ5年、デザイナーのガブリエラ・ハースト(Gabriela Hearst)が勢いに乗っている。2015年に立ち上げた自身の冠ブランドはたちまち人気を獲得し、これに商機を見出した「LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH Moet Hennessy Louis Vuitton)」は2019年に同ブランドに数百万ドルを出資した。そして昨秋、ハーストは「アメリカン・ウィメンズウェア・デザイナー・オブ・ザ・イヤー(American Womenswear Designer of the Year Award)」を受賞するとともに、パリファッションウィークでデビューを果たした。

今週、ハーストが先週退任したナターシャ・ラムゼイ=レヴィ(Natacha Ramsay-Levi)元「クロエ(Chloé)」クリエイティブ・デザイナーの後任として「クロエ」の新クリエイティブ・ディレクターに就任したことが発表された。そんな彼女のデザインの持ち味はどんなものか。そして彼女は「クロエ」にどんなインスピレーションをもたらすのか。

写真左:ガブリエラ・ハースト(画像提供: Jamie McCarthy / Getty Images via AFP)/写真右: ECサイト「マイテレサ(MyTheresa) 」とのコラボコレクション「ガブリエラ・ハースト・フォー・マイテレサ(Gabriela Hearst for MyTheresa)2019」での一枚 。(画像提供: MyTheresa)

「ルーラル(田園)・ラグジュアリー」から、革新的でモダンなデザインまで

ファッションモデルとして活躍していたハーストは 、やがてデザイナーとしての道を志す。2004年に700ドルで自身のブランド「キャンデラ(Candela)」を立ち上げると、彼女の母親の写真を元に馬に乗る女性をモチーフにしたスクリーンプリントのTシャツをデザインした。その数年後にはラグジュアリーかつカントリー・ルックのプレタポルテのフル・コレクションを発表。ブランドのウェブサイトでは自社ブランドの商品はもちろんのこと、生まれ故郷である南米出身のデザイナー達の商品も扱った。

「キャンデラ」立ち上げの10年後、ハーストは「生産の面であまりにも多くの妥協をせざるを得なかった」ことを理由にブランドを退社。その後2015年にファッションビジネスに再び参入し、自身の名前を冠したレーベル「ガブリエラ ハースト(Gabriela Hearst)」を設立した。「ガブリエラ ハースト」はより豪華さや現代的なイメージを増すとともに、アロエベラで加工した麻や上質なメリノウールなど伝統的な技術と革新的な生地の使用に特にフォーカスしている。『ヴォーグ(Vogue)』編集者のニコール・フェルプス(Nicole Phelps)は「ガブリエラ ハースト」の2017年リゾートコレクションについての記事でハーストを「エルメス(Hermès)のアメリカでの競合相手」と評している。

ミニマリストを主軸とするハーストのスタイルは鮮やかな色のチェックやストライプを使い、時に「ビジネスライク」、時に「柔らかで流れるような」イメージを呈する。アンジェラ・デイビス(Angela Davis)、オリアーナ・ファラチ(Oriana Fallaci,)、カマラ・ハリス(Kamala Harris)、タミー・ダックワース(Tammy Duckworth)のような力強い女性にインスパイアされ、ジル・バイデン(Jill Biden)、オプラ・ウィンフリー(Oprah Winfrey)、ヨルダンのヌール王妃(Queen Noor of Jordan)などをクライアントに持つ。2019年からはメンズラインもスタートし、しなやかな印象のスーツや手編みのセーターなどを展開する。

写真クレジット: Gabriela Hearst SS21, Catwalkpictures

自身の牧場からメリノウールを調達

2017年2月に行われた「ガブリエラ ハースト」初のランウェイショーでは、サステナビリティ(持続可能性)への明確なメッセージを訴求。ハースト自身の自宅の椅子などリサイクルしたものを装飾に使ったほか、ショーでのプラスチックの使用も禁止した。度々既存の素材を使い新作を発表しているハーストは以前のインタビューで、そうしたサステナビリティに対する強い思いは子供時代を過ごしたウルグアイの牧場で自然とのつながりを身近に感じながら育った経験に基づいたものであると説明している。

ハーストは2011年に他界した父から引き継いだ牧場で羊を飼育しながら、独自に柔らかく抗菌性があり、体温調節機能のあるメリノウールの生産を行っている。ウールは冬のコレクションでよく使われているが、ハーストは夏向けの極薄セーターをデザインするなど夏にも使える素材であることをアピールしており、2017年にはそのユニークなウール使いが評価され「インターナショナル・ウールマーク・プライズ(International Woolmark Prize、国際ウールマーク賞)」を受賞した。

「クロエ」では田園風景への憧れやアマゾンをテーマとしたデザインを手がけてきたハースト。彼女が新クリエイティブ・デザイナーに就任することで、「クロエ」のロマンチックで時にほぼガーリーなブランドイメージに活気や真面目さが少し加わるとともに、生地の可能性への徹底的なこだわりが見られることが期待される。そして彼女の持つ「ラグジュアリーとサステナビリティ」に関するビジョンも前面に押し出されることだろう。主要なファッションブランドの多くが積極的なサステナビリティ目標を掲げる中で、それは「クロエ」にとってプラスに働くことだろう。

写真クレジット: Chloé SS20 and SS21, Catwalkpictures

ホームページ画像: Gabriela Hearst SS20, via Catwalk pictures