ナイキが経営体制を刷新　業務効率化と意思決定の迅速化を図る

米スポーツ用品大手のナイキ（Nike, Inc.）は、業務の合理化、意思決定の迅速化、および消費者やアスリートとのつながりの強化を目的とした、一連の大規模な経営陣の変更を発表した。

社長兼CEOのエリオット・ヒルは従業員向けのメッセージの中で、この再編は「階層を取り除く」ことを目的としており、ナイキをより俊敏でテクノロジーを活用した組織として機能させるためのものであると述べた。

変更の中心となるのは、12月8日付で新設されるEVP（エグゼクティブ・バイス・プレジデント）兼COO（最高執行責任者）という役職である。ナイキに20年近く在籍し、現在チーフ・サプライチェーン・オフィサーを務めるヴェンカテッシュ・アラギリサミー（通称：ヴェンキー）が同職に就任する。サプライチェーン、計画、オペレーション、製造、およびサステイナビリティの統括に加え、アラギリサミーは今後テクノロジー部門も監督し、製品開発、計画、生産、流通に至るまで、同社のデジタル機能をエンドツーエンドで連携させる。この動きは、テクノロジーをナイキの中核的なスポーツ戦略により深く統合するものであり、EVP兼CTO（最高技術責任者）の役割は廃止される。これに伴い、ミュゲ・ドガン博士は同社を退社する。

さらに、もう一つの大きな変更として、ナイキの4つのグローバル地域を統括するリーダーたちがシニア・リーダーシップ・チームに加わり、ヒルの直属となる。対象となるのは、アンジェラ・ドン（中華圏）、カール・グレバート（EMEA：欧州・中東・アフリカ）、トム・ペディ（北米）、およびキャシー・スパークス（APLA：アジア太平洋・ラテンアメリカ）である。この決定は、リーダーシップを世界中の消費者により近づけ、市場全体での施策実行を加速させることを意図している。この変更に伴い、現在クレイグ・ウィリアムズが務めるEVP兼チーフ・コマーシャル・オフィサーの職は廃止され、同氏は退社する。

グローバルセールスおよび「Nike Direct（ナイキ・ダイレクト）」は今後、EVP兼CFO（最高財務責任者）であるマット・フレンドの管轄となる。ヒルによれば、フレンドは深い商業的かつ戦略的な経験を有しているという。これらの機能を財務部門と統合することは、店舗、デジタルチャネル、および卸売パートナーからの市場インサイトを、企業戦略や投資判断に直接反映させることを目的としている。

ヒルは、今回の再編が広範な「Win Now」イニシアチブの一環として、成長、競争力のある攻勢、およびナイキの市場実行力の強化に焦点を当てたものであると強調した。「これらの変更は、組織の階層を削減し、ナイキだけが可能な方法で影響を与え続けるためのより良い体制を整えるものだ」と彼は述べた。さらに、新体制のリーダーシップチームは、全社的なスピード、コラボレーション、および緊急性を推進するために、より適切に連携していると付け加えた。