デジタル消費、ポストコロナも定着
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新型コロナのパンデミックはデジタル時代の幕開け以降最大のディスラプター(破壊者)となった。消費者の購買行動をこれほどまでに唐突に急変させた世界的な事件はかつてほとんどない。経済が動き出すとともに各国では国境が再び開き、普通の日常が戻りつつあるが、昨年3月以来世界中で進展したデジタル中心の消費トレンドはポストコロナでも定着しそうだ。
米国では2020年に11,000軒以上のファッション関連の店舗が閉店し、業界全体で実店舗離れが進んでいる。小売全体においても、2026年までに米国でさらに8万店舗が完全に閉店するとした予想をスイスの投資銀行UBSが発表している。
実店舗営業を行う小売企業がデジタル中心の戦略を打ち出す一方で、米国と英国で行われた調査によると消費者の大半が主な買い物を実店舗で行いたいと希望していることがわかった。今後ファッション小売企業にとっては、デジタル・実店舗・直販・卸・ソーシャルメディアなど、あらゆるチャネルをいかに取り込んでいくかが課題となる。
コンサルティング会社のカーニー(Kearney)が1990年代後半生まれの「Z世代」を対象に行った調査では、73%の回答者が実店舗で新しい商品を発見していると回答している。また試着と購入に関しても、実店舗の方が好ましいとした回答者はそれぞれ65%と81%であった。
シームレスで厳選されたエクスペリエンスの重要性
さらに同調査では、オンライン・実店舗のいずれにおいてもネガティブな経験が購買中止につながると考える消費者が「Z世代」の間で比較的多く見られることが判明した。彼らは他世代とは異なる買い物のジャーニーを求めており、限定品の販売など精巧に厳選されたエクスペリエンスを重要視する傾向があるという。
ロックダウンで一夜にして変わった消費行動
Eコマースの高まりも相まって、コロナ危機による店舗の休業要請が出された際には一瞬にしてすべてがクリック一つで片付けられるようビジネスが一変した。しかし、便利で早く届くオンラインショッピングは引き続き人気となることが予想されるものの、買い物を含めたコンピューターの外の現実社会での活動に対するニーズは今後も残り続けると思われる。
マッキンゼーが考える、小売の未来像
今後小売業界で勝敗を分けるのは、いかにデジタル・オムニチャネル・実店舗内のテクノロジーを活用し顧客との接点をもつ新たな手法を開拓していけるかどうかである。オンラインショッピングへと消費者の購買行動がシフトしたことにより、実店舗に足を運ぶ客の総数や客の来店頻度も低くなることは免れない。それ故に、一回一回の来店経験が極めて貴重になる。
このような状況で、オンとオフライン、デジタルと実店舗(physical shops)の間でシームレスなつながりを構築する「フィジタル(phygital)」なエクスペリエンスがより注目される。こうしたエクスペリエンスを通じて、単なるものの売り買いを超えたフリクションフリーな経験を顧客に提供することが今小売企業に求められているのかもしれない。
画像提供:Pexels