深刻化する、気候変動による小売業への影響
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変わりやすい天気は足下が不安定になるが、深刻な気候変動もまた経済に影響し、小売業も例外でははい。
イギリスでは強い雨が降ると、都市部の大通りなど場所では客足が減り、代わりに屋内型のデパートやショッピングセンターでは客が増える。しかしイギリス以外でも世界中に起こる猛暑や豪雨、気温の下落、世界中で怒っている天候パターンの乱れはどうだろうか。
先月ドイツやベルギー、オランダを襲った豪雨災害では、被災地域で7月としては観測史上最高の降雨量を記録した。近年、気候変動分野の学術誌『ネイチャー・クライメット・チェンジ(Nature Climate Change)』誌上で発表された研究によると、今後数十年にわたり壊滅的な豪雨や洪水、強烈な熱波などの記録的な異常気象がますます頻発し、その被害も大きくなっていくという。そうしたことが起これば、特に地域の店舗や実店舗を持つブランドへの影響は免れない。
こうした気候変動問題は、世界的に事業を展開し、大規模なサプライチェーンを持つ大手小売店がその一端を担っているのではないかという声もある。小売専門オンラインメディア『Retail Wire』は、多くの小売業者が何らかの危機感を持ち、温室効果ガスの排出量削減や、サプライヤーを含めた自社事業の環境負荷の低減に取り組みはじめていると報じている。しかしこうした取り組みはもはや遅すぎるのかもしれない。
つい最近、太平洋地域全体を巻き込んだ熱波の影響で、アマゾン(Amazon)は、当該地域の倉庫で勤務する従業員に対し暑さ対策として保冷機能のついた襟巻きを提供した。従業員のなかには暑さのために早退するものも出た。
英百貨店、ジョン・ルイス(John Lewis)のアンディ・ストリート(Andy Street)マネージングディレクターは2014年のインタビューで、「我々は長年にわたり、天気は景気よりも売上に大きく影響すると知っている」と答えた。その年、同社のファッション製品の売上は通期で前年比13.1%減、9月中旬の2週間だけでも前年に比べ6.9%落ち込んだほか 、同じく英国の百貨店マークス・アンド・スペンサー(Marks & Spencer)の年間売上も前年比5.3%減であった。また同年には、アパレルブランド「スーパードライ(SUPERDRY)」も売上減少により通期の利益予想を修正している 。
気象情報を活用したマーケティングプラットフォームを提供するウェザー・アド社(Weather Ads)は、日々の天気の移り変わりは小売店にとって手慣れたものかもしれない一方、同時に消費者ニーズや供給量、そして究極的には利益にも影響すると主張する。例えば、季節の気温が1度上下するだけで、売上が1%変動する。英国における小売業界の市場が3千億ポンドであることを考えると、その偏差は30億ポンドになる計算だ。
冬の始まりが遅れると、アウターウェアの需要が低迷し、小売店には打撃となる。一般的にコートの販売時期は8月〜9月にスタートするといわれている。冬シーズンの出だしが振るわなければ、小売店には売れ残ったコートがクリスマスまで積み残ることになる。そして遅れは春のシーズンの開始にも影響し、利益率や売上の損失につながる。
自然災害は小売業にも大きな混乱を招く
気候変動の影響は、今日が「湿気が多いか/乾燥しているか」「暑いか/寒いか」という話だけではない。季節に合わない異常な天候や、気象の予測不能性は、小売業に大きな混乱を招きかねないのである。
画像: Pexels