ラグジュアリー市場の成長、体験と新興市場が牽引

調査会社ユーロモニターインターナショナルのレポート『World Market for Luxury Goods 2025』によれば、マクロ経済および地政学的な混乱が続く中でも、世界のラグジュアリー市場は強靭さを維持しており、2025年には1.5兆ドル規模に達すると予測されている。

業界は現在、大きな変革の最中にある。単なる製品中心の販売から、体験主導のエンゲージメントへと移行しているのだ。ユーロモニターインターナショナルのラグジュアリーグッズ部門グローバルインサイトマネージャーであるフラー・ロバーツは、「ウェルネス、ライフスタイル、そして感情的な共鳴が、新たなステータスの指標として浮上している」と指摘する。

2025年、パーソナルラグジュアリーグッズの売上の81%を実店舗が占めており、対面でのエンゲージメントの重要性が依然として高いことを示している。特筆すべきは、高所得層の買い物客のうち52%がファッション製品を実店舗で購入することを好んでおり、この数値は2023年の36%から大幅に上昇した。

新興市場と体験型ラグジュアリーの成長

最も急成長している市場としては、南アフリカ（15%）、インド（10%）、アラブ首長国連邦（9%）が挙げられる。特にインドは重要なプレイヤーとして台頭しており、そのラグジュアリー市場の総額は2025年までに121億ドルに達し、予測期間中の年平均成長率（CAGR）は74%という驚異的な数値を達成すると見込まれている。

若い世代の購買層が製品よりもユニークな体験を求める傾向が強まっているため、ラグジュアリー消費全体が体験型カテゴリーへとシフトしている。ラグジュアリートラベルやホスピタリティを含む体験型ラグジュアリーは最も成長が著しいセグメントであり、2025年には8%増の1030億ドルに達した。

新たな消費者セグメント

ラグジュアリーセクターは、60歳以上の年齢層からの影響をますます受けている。この層は富裕化が進んでおり、ウェルネス旅行やエイジインクルーシブな高級スキンケアなど、生活の質を高めるラグジュアリー製品を通じて、洗練と満足感を求めている。この傾向は、消費者が新たなステータス指標として体験やライフスタイルを重視するようになったことと相まって、ブランドが実店舗を、ハイエンドなホスピタリティとコンシェルジュレベルのサービスを提供する文化的なデスティネーションとして再構築するきっかけとなっている。

ロバーツは、ラグジュアリーセクターの将来的な成長は、「長寿と意識的な贅沢という視点からプレミアムな体験を再考することで、こうした進化する消費者の機会に適応できるかどうかにかかっている」と結論付けた。