お店へ行こう:ポスト・コロナのアパレル店舗デザイン・トレンドTOP9
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パンデミックが終焉を迎えた後、人々は買い物に訪れる店舗に何を求めるのだろうか?パンデミック前にはサステナビリティやコミュニティづくりは消費者の重要なニーズであった。今年9月に開催されたドイツのファッション小売業界団体BTEの総会「ファッション・エモーション4.0(Fashion Emotion 4.0)」で、今後重要になると思われる9つの小売トレンドが紹介された。
サプライズ
人々は子供の頃からサプライズを楽しんできた。そんな予期せぬ驚きは、店舗でも顧客を楽しませることは間違いない。たとえばブランドイメージには一見そぐわなそうな空間は、顧客に対してサプライズを演出できるだけでなく、その店舗限定商品を販売することも可能だ。
これを取り入れたのが、「エルメス(HERMES)」のポップアップ・ストア。コインランドリーに似せてデザインされた店内では、客が所有する「エルメス」のスカーフを持ち込むと染め直ししてくれるサービスや、ビンテージ・スカーフの販売などが行われた。
ローカル&リージョナル
「ナイキ(NIKE)」では、ローカルオペレーションにより直接的に店舗近辺のコミュニティにアプローチするというコンセプトの店舗づくりを導入。同社は個人が楽しめるさまざまな工夫を凝らした店舗をオープン。店舗は地元で開催されるイベント用の会場としても公開している。
一方「アディダス(ADIDAS)」も地方都市を意識した店舗デザインを推進しており、世界各地で店舗近郊のコミュニティに特化した店舗を運営するほか、中国の成都では数百年前に建てられたという建物に店舗を開設し、地域の歴史を感じさせる店内づくりに注力している。
サステナビリティ
さらに「ナイキ」では店舗デザインのテーマとして環境も重視。セルビア共和国ベオグラードでは、回収された使用済みシューズ2万足を使用しバスケットコートを建設した。
商品の修繕
多くのブランドがリサイクルやリユースに加えて、商品の修繕サービスを提供し始めている。特にアウトドアグッズのブランドでこのサービスを取り入れる傾向があり、「パタゴニア(PATAGONIA)」や「グローブ・トロッター(GLOBETROTTER)」でも導入されている。
新サービス
新しい店舗コンセプトを発表した化粧品小売の「ダグラス(DOUGLAS)」をはじめ、新たなサービスを通じて商品ラインアップを拡大するブランドも現れている。同社のドイツ・ハンブルグの旗艦店「ダグラス・プロ(Douglas Pro)」では商品を使ったスパトリートメントのサービスをスタートした。バッグブランドの「フライターグ(FREITAG)」は自転車や同ブランドのサイクリングバッグの無料レンタルサービスをアムステルダムの店舗で展開している。
レストラン&カフェ
一部のブランドでは、店舗をレストランやカフェなどくつろぎのスペースとして客向けに公開しているケースもある。ライフスタイルブランドの「リアルト・リビング(RIALTO LIVING)」はスペインのマヨルカ島・パルマでカフェ併設型の店舗を運営。また、「ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)」のミラノ旗艦店はレストランが統合されている。
デジタル化
重要なテーマであるデジタル化も話題が尽きることはない。「バーバリー(BURBERRY)」の中国・深センの旗艦店では、10カ所の部屋に区切りられた店内を来店客がソーシャルメディアWechat専用アプリを使って巡るとポイントを貯められる仕組みになっている。
パーソナリティー
ブランドのDNAに基づき、パーソナルでユニークな店舗デザインに仕上げるブランドもある。ドイツ・デュッセルドルフ発のストリートウエアブランド「LFDY」の各店舗では、創業者ロレンツ・アメンド(Lorenz Amend)のパーソナリティが所々に漂う。さらに店舗は所在地に沿って全て異なるよう個々にデザインされている。
コラボレーション
デザイナーのコレクションではコラボレーションが一般的になりつつあるが、「アディダス」と「グッチ(GUCCI)」はこの手法を洋服以外にも取り入れた。アレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)クリエイティブディレクターが手がけた70年代にインスパイアされた「アディダス」とのコラボレーション・コレクションの展開にあたり、「グッチ」はコレクションのコンセプトを店舗デザインにも反映し、ハンブルグのデパート「アルスターハウス(Alsterhaus)」内に同コレクション専用のポップアップ・ストアを開設した。
ファッションブランドの実店舗には多岐にわたる可能性があるが、店舗コンセプトがブランドに合致していることと、真銘性を確保していることが店舗をデザインする上での鍵となる。