“着る絵本”を創るブランド「シンヤコヅカ」:ピッティ・ウオモ直前、日本ブランド予習
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今月中旬に開催されるファッション見本市「ピッティ・ウオモ 」では世界中からの業界人がイタリア・フィレンツェに集まる。数ある世界中の出展ブランドの中から、昨年LVMHプライズを受賞したSohsiotsuki、Headmayerと共に、特別にランウェイショーを披露するブランドがある。それが日本ブランド「Shinyakozuka」だ。今期のピッティ・ウオモは、新世代の日本人デザイナーに注目する絶好の機会となるだろう。
Shinyakozukaはそのブランドコンセプトの曖昧さが個性となっている。多くの人が特定の香りや音楽に触れると、脳裏にあの頃の思い出が蘇る経験をしたことがあるだろう。一方で記憶を嗅覚でもなく、聴覚でもなく、視覚―ファッションで再現するのがShinyakozukaの試みだ。
絵本「星の王子様」やファンタジー映画を想起させる、少年の夢物語のようなデザインを特徴とする同ブランドは、「‘picturesque scenery’ 絵に描いたような情景」 をブランドコンセプトとしている。そうした不確かなイメージや感情を、シルエットや素材感、余白のあるプロポーションへと置き換え、衣服として立ち上げてきた。
景色の一部としてのファッション
デザイナーの小塚信哉は、2013年にロンドンの名門美大、セントラル・セント・マーチンズを主席組で卒業し、2015年に現在のブランド「Shinyakozuka」を始めた。同ブランドはロンドン在住時の風景や衣服、またはデザイナー自身の絵から着想を得たコレクションを発表している。
小塚のコレクションは、世の中へのアンチテーゼを体現するアバンギャルド性や、特定の文化のオマージュや再定義といったファッションシーンによくあるテーマとは一線を画す。ファッション・カルチャーメディアQuiでのインタビューで、小塚は「“服でこれを伝えたい!”ということがなくて。まず最初は、“この景色にこういう服があったら素敵じゃない?”っていう入り方」で服作りを始めていると語った。あくまで“思い出す景色の中の一つの要素”として衣服を扱い、衣服の細部よりもコレクションが表す雰囲気や全体像を意識し、鑑賞者に解釈の幅を残すことを目指している。
とはいえ、Shinyakozukaのコレクションは、デザイナー自身の想像や経験の反映としての機能も果たしている。ブランド設立10周年を迎えた際の2024年秋冬コレクションは、小塚が学生時代に作った自作絵本をテーマに作成された。色を知らない主人公が、色彩を知り魅了されていくストーリーに沿って、白黒の服からカラフルな服を段階的に発表した。 また、2025年の秋冬コレクションでは、「Good morning, I wish I could fly, never mind」というテーマと共に、空を飛ぶことを夢見るペンギンをランウェイ全体で表現した。
そんな同ブランドの知名度を上げるきっかけとなったのは、2021年の春夏コレクションから現在まで続くDickiesとのコラボレーションアイテムだった。Dickiesの定番、耐久性のあるT/Cツイル生地のワークジャケットやワークパンツが、Shinyakozukaオリジナルデザインのオーバーサイズで誕生した。
ピッティウオモとの親和性
ピッティ・ウオモ は、昨年6月には、5大陸、100カ国以上からバイヤー、計1万5千人の業界人が来場するイタリアで最も大きいファッション見本市の一つである。
小塚のブランドは、同イベントを構成する4つのキュレーションのうちの一つである「Future Maschile」というテーマのキュレーションに選ばれた。「Future Maschile」は、先進的なメンズウェアの制作を模索するデザイナーの作品が展示され、独自の構造美をもつものが多い。一方で、シンプルでミニマルなデザインや色使いの多い他ブランドと対照的な小塚の幻想的なデザインは、会場の中でも目を引くものとなるだろう。
主要アイテム
ファッションショーでのファンタジーな雰囲気とは裏腹に、ブランドの商品単体を見るとワークウェアのような機能性重視の商品を揃えている。
「Baggy」という名の多様なシルエットのデザインをもつワイドパンツのコレクションが、同ブランドのシグネチャーコレクションだ。伸縮性のある動きやすいバギーパンツは約3万円台から5万円台の価格帯となっている。また、人気のDickiesとのコラボレーションアイテムのジャケットやパンツは約3万円台、今回ピッティウオモに出展する土屋鞄とのコラボレーションアイテムは8万円台から13万円台となっている。
アウターやトップスの一部のアイテムはブランド独自のユニークなサイズ表記を行っている。サイズ「Her」は彼女が着てそうなやや小さめのサイズ感、サイズ「My」はメンズの標準的なサイズ、サイズ「His」は彼女が彼氏の服を着たような大きめのサイズ感を表している。
アイテムは公式オンラインショップ、またはEbayやGrailedといったサイトで国内外から注文することが可能。国内の店舗では、表参道にあるフラグシップストアだけでなくセレクトショップのStudiousでも購入できる。さらに、ジャンルを超えた国内外のメンズブランドを紹介している阪急メンズ東京Garage D. EditではShinyakozuka専用のブースが設けられている。ショップデザインから、ブランドのファンタジーな世界観を味わいながらショッピングを楽しめる。